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第一話 式神

そろそろ他の人が主人公の話を書こうと思っているのですが、中々筆が進みません。

「卓也、組織から伝言の式神が来たよ」


 声の主の名前はかおり。

 『組織』によって人工的に創りだされた術者だ。


 午後、日差しが柔らかく屋根の上でまどろんでいたら鳥が結界内に入ってきた。

 結界に入ってきたということは、卓也がそれを許したということ。

 かおりはさして警戒せずその鳥を腕に止まらせた。


「ありがとう」


 かおりの声に応えたのは宮神卓也。

 『組織』の術者にして、かおりの保護者。

 そして『組織』内では幹部クラスである『宮』の『名』を十代で父親から継承した人間だ。


 自室にいた卓也は、かおりの腕に留まっている鳥を自分の腕に留まらせた。

「じゃあ、私は行くね」

「ああ。俺は『コレ』しだいだけど出かけるかもしれない。かおりはどうする?」

 卓也は式神の鳥を指差しながら言った。

「家にいる。今日は気持ちがいいから」

 そう言ってかおりは立ち去った。

 卓也はそれを見送るとゆっくりとドアを閉め、念のための簡単な簡易結界を部屋に張った。

「・・・・・・」

 数秒式神の鳥を見つめると、鳥は翼を広げ卓也に言葉では無く羽に込められた念を卓也の頭に直接送り込んだ。

 念は脳裏に情報として刻まれた。

「…クッ…」

 情報が刻まれる一瞬、苦痛を感じたのか微かに呻いた。

「・・・・・・」

 卓也は暗い顔をして鳥を見た。

「…最後…通告…か…」

 ポツリとつぶやいた。

 卓也は鳥の頭に手をかざすと、その手のひらが一瞬光った。

「返事をお前の主に届けてくれ」

 卓也は窓の戸を開けると、簡易結界を外し式神を空へと放った。

 そして、それが見えなくなるまで空を眺めていた。


「かおり」

 庭を歩いていたかおりを卓也は呼び止めた。

「何?卓也。出かけるの?」

 卓也の元に駆け寄るとかおりが聞いた。

「いや…今日は出かけない。明日お前と一緒に出かける」

「仕事?」

 たまに急ぎの仕事で依頼が入ったその日の内や、翌日に慌ただしく行くこともあった。

「いや…」

「卓也?どうしたの?」

 かおりを呼んだときから卓也の顔色が余りよくない。

 いつもなら歯切れの良い返事をする卓也が、珍しく言いよどんでいる。

「検診だお前の…『科学者』達が業を煮やしたみたいだ」

 一拍おき、卓也は言うべきことを言った。

「…そう。分かった」

 かおりはその言葉を聞くと、僅かながら気配が硬くなった。

「すまない。もう少し伸ばせると思っていたんだが…これ以上は…」

「気にしないで。ここに来て半年、一回もあそこに行かなかったの不思議に思ってたぐらいだもの。そっか、卓也が止めておいてくれてたんだね」

 卓也の自分を責める言葉にかおりは、いつもの調子を取り戻した。

「ああ」

「大丈夫だよ。多分そんなに時間はかからよ。何日かあそこに泊まって、前にやっていた検査するだけ」

「送り迎えはする」

「ありがとう。大丈夫、なれてるから」


 なんでもない。

 それを強調しなければならない。

 卓也のためではない。

 自分のために。

 自己暗示。

 大丈夫だという暗示。

 たとえ嫌な事があっても、笑顔でここに戻ってくるために必要なこと。

 卓也の笑顔を見るために。


「ああ。…ああ、そうだな」

「うん」

 卓也はかおりの自己暗示に気がついたのか、気がついていないのかは分からないがいつも通りの笑顔に戻った。

「じゃあ、明日に備えて今日は食べに行こう!」

「調子がいいな。かおり…」

「何食べよっかな~」

 そんなとぼけた事を言いながら、笑っているかおりを見る卓也の心は幸せに満ちていた。


 何時(いつ)までも、このままで…そう望むほどに。


短くてすいません…。

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