第51話:これからもリーダーとして
ラプスにやってきてから二日、クラウスたちはゆっくりと休息を取っていた。流石に連続しての依頼だったこともあり、しっかりと身体を休めることを優先したのだ。
今日は天気も良いのでマルリダへと戻るには丁度いい。クラウスたちはラプスの町を出ようと門前まで歩いていると、「おーい」と声をかけられる。振り向けば、シュンシュとランだった。
「クラウスたちは戻るのか?」
「あぁ、マルリダを拠点にしているからな」
「そっか。今回はほんと、助かったよ」
「気にしないでくれ。お互い様だ」
「いやー、リングレットも反省してもわないとね」
シュンシュは「今回の件でリングレットたちは冒険者の資格をはく奪はされなかったけど、謹慎処分くらったんだよ」と話す。
オーガの件はやはりギルド側も無視できなかったらしい。シュンシュとランの報告を聞いて厳重注意をした上で暫くの間、謹慎処分ということになったのだと。
はく奪されなかったことに関してはギルド長が「今回限り」と「BランクからCランクへの降格」を条件に免れたとのこと。
「あれ、次はないからこれに懲りてしっかり反省はしてもらわないとね」
「そうだな、反省してもらえるといいが……」
「いや、そこまでされて反省してなかったら馬鹿だぜ、クラウスの兄さん」
しっかり今回限りとランク降格を突きつけられているのだから、これで懲りなければ馬鹿と言われても文句は言えないとアロイは言う。
「また下積みからやり直すいい機会だろう。今回の件があるから次のランクまでのハードルは上がっているしな」
「おっさんの言う通りだわ。しっかり下積みしろってんだ」
「ギルド長は少し優しすぎはしないか」
シグルドが「はく奪されてもおかしくはないだろう」と言えば、「一応、あいつらにも実績はあるからね」とシュンシュは答える。
リングレットたちにも実績はちゃんとあった。自分勝手な部分が目立ちすぎているけれど彼らは依頼をこなしてはいたのだ。
それと彼らをBランクに上げるのはまだ早かったとギルド長自身の判断を見余ったこともあって、このような処分になったのだという。
「ギルド長も自分にも責任があるからって自分の給金暫く下げたんだぜ? ほんっと、リングレットには反省してもらわねぇと」
「そうです。しっかり反省してもらいたいものです」
シュンシュの言葉にランがうんうんと頷きながら言う。
他の冒険者たちもこれに懲りてくれたらいいと言っているようだ。散々、迷惑をかけてきたのだからしっかりと下積みをやり直してもらいたいものだと。
「こっちが助けてもらってばかりだから、何かあったらいつでも言ってくれ。ラプスからならマルリダは近いからすぐに駆けつけるよ!」
「ありがとう。何かあれば頼らせてもらう」
「遠慮しないで大丈夫ですから」
シュンシュとランは「元気で!」とクラウスたちを見送る。彼らに手を振り返してクラウスたちはラプスの町を出た。
「いやー、ほんっとクラウスの兄さん働き過ぎだわ」
「そうだろうか?」
「アンジェって女だけでなく、ヒルデの嬢ちゃんまで守りに走れるってすげぇからね?」
あそこまでできる奴なんて早々いないってとアロイは突っ込む。フィリベルトにも「無理はするなよ」と言われてしまった。
クラウス自身は無理をしているつもりはないのだが、傍からみればそう見えてしまうのかもしれない。
「無理はしていないが」
「あれは私も悪かったんですけど、その、クラウスさんありがとうございます」
「あれは仕方なかったことだから気にしないでくれ。ヒルデが無事ならばそれでいい」
「私が無事でもクラウスさんが無事じゃなかったら嫌ですからね!」
ブリュンヒルトからそう言われてクラウスは困ったように眉を下げる。怪我をしてでも守るかと問われると自分ならばしてしまうだろうと思ったからだ。
それはその表情だけで誰でもわかってしまうもので、ブリュンヒルトはむっと頬を膨らましていた。
「私も気を付けますけど、クラウスさんも気を付けてくださいね!」
「あぁ、気を付けよう」
「クラウスの兄さんはやると思うけどな」
「こら、アロイ。私も思ったことを言うんじゃない」
アロイに突っ込むフィリベルトだが、二人の言葉を否定することはできないのでクラウスは何も言えない。
ルールエも「やりそう」と少しばかり心配していた。
「クラウスお兄ちゃん、ヒルデに怒られちゃうからほどほどにね?」
「気を付けろ、リーダー」
「なんだろうか、この一体感は」
仲間の一体感にクラウスは小さく笑う。ルールエに「それだけ信頼されているってことだよ」と言われて、なるほどと頷いた。
仲間からの信頼の厚さにあまり無茶はできないなと、気を付けようと身を引き締めた。
第一部 完




