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【169話】新種のモンスター?


 どうやら襲いかかってくる様子はないものの、その瞳の奥には敵意のようなものが滲んでいた。しかし目玉以外は微動だにせず、ただただ二人を見つめているだけだった。


「なんだいこれは、新種のモンスターかい?」


 ハハハと冷や汗を流しながら立ち上がったウィルは、人の形をした置物のようなものに顔を寄せた。

 目玉だけでウィルの姿を追う何かは、それでも動くことなくジッとしたままだった。


「なんだか知らないが驚かせないでくれよ。ただでさえ情報がないダンジョンなんだからさぁ」


 岩の額をペシペシと叩いたウィルは、害がないのならもういいよと手を振った。二人が横を通過しても反応すらない岩人は、最後まで振り向くことも、喋ることもなかった。


「一体なんだったんだ。ダンジョンの見張りに作られた新手の魔道具か?」

「僕が知るはずないだろう。どちらにしても、姿を見られてしまった以上、警戒を解かないようにしなよ」


「お前だけには言われたくない」とモリシンが無表情に言った直後、カーブになっていた細道の先に開けた空間が見えてきた。


 どうやらドーム状の空間が広がっているのか、細道を流れ込んでくる空気に背中を押されながら、通路の影から中を覗き込んだ。

 何もないガランとした、ただ広いだけの空間はどこか異様で、光の一つもなかった。モンスターの姿もなく、あからさまな異常さを醸し出していた。


「まぁさか、……主の間、じゃないよね?」

「そればかりは俺にもわからん。一歩踏み入れた瞬間にドンッの可能性もないとは言えねぇ」

「どうするんだい、きた道を戻るかい?」

「戻るもなにも一本道だろうが。進むほか方法なんぞないんだよ」


 ドンドンと胸を叩いたモリシンは、意を決して一歩を踏み出した。遅れぬように同じタイミングで二人が広間に入ったところで、これまで反応のなかった周囲の壁が輝き始めた。

 舌打ちしたモリシンは、どうやらそのまさかだと覚悟し、背中に収めていた剣を握った。


「やっぱり主の間だったね。どうするんだい、僕らの手に負えないレベルだったら」

「そんときゃそんときだ。……準備しな」


 主の間特有の重苦しい雰囲気が漂い、流れ込んでいた空気の流れがピタッと止まった。

 これまで見えていた細道が音を立てて崩れ、完全に独立した閉鎖空間へと変貌を遂げていく。


「面倒なことになったねぇ。それもこれも、全部ムサヒューの責任だよ」

「テメェの勝手な行動のせいだろ。ったく、面倒ったらありゃしねぇ」


 フロア全体に(もや)がかかり始め、少しずつ視界が悪くなった。気にせず壁を背負って構えた二人は、いつ敵が襲いかかってきてもいいように構えを崩さなかった。


 道を閉ざされてから、一分が経過した。

 しかし動きはなく、明らかに何かがおかしかった。


「……これはどういうことだい?」

「知らん、が、気を抜くな。何かあると思って間違いねぇ」


 退路が存在しない以上、主とて慌てて姿を現す必要はない。

 しかし主が遅れて現れる必要性も、またない。


 何より冒険者の隙をつくのが本質で、相手に時間を与える意味など皆無で、空白の時間は無駄でしかなく、理解不能な状況に二人が慌てるのは当然だった。


 ついに二分が経過した頃、靄の先でゆらりと何かが揺れた。凝視(スナイプ)で揺らぎの正体を探したウィルは、そこで見た影に眉をひそめた。


「なんだいアレは。……まさか、人かい?」


 靄の先に立っていたのは、人の形をしたものだった。

 しかし動きは鈍く、今にも襲いかかってくるという様子ではなかった。


 ならばと構えたモリシンは、大剣で地面を斬りつけ、岩盤を破壊し放った。人の形をしたものは避けることもせず、壊れた岩盤が直撃し、反対の壁まで吹き飛んで地面を転がった。


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