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第9話 散策、馬に乗れないと不便ですよ?  ふぅ。

あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。



 フランシスコ子爵の好意で拠点として与えられた家は、家と屋敷の中間・・やや屋敷寄りと言える位立派なものだった。

 少なくとも現代の日本でこのレベルの広さの家を買うとしたら、「ド田舎なら5000万位で行けるかな?」と言った所だろうか。都心部なら億である。


 取りあえず中に入って部屋割りを決める、と言っても荷物も何も無いし、適当に寝室を割り振っただけだけど。

 

 家事担当の使用人を3人付けてくれたため、特に家の中の片づけ等もする必要は無く、レイエスさんはまだ用事が有るらしく、レイエスさんから声をかけるまで自由にしていいと言われているけど・・・


 時間は昼前、中途半端に時間が有るな・・どうしようか・・・


「少し町中に出てみるか?食事ついでに周辺の地形や道路なども確認しておいた方がよい」

「さすがは子胥殿です、地の利を生かすには、まずはそれを知らねばならないですからね」


 子胥さんとレイの意見は周辺の確認か、確かにこっちの世界の常識とかももっと知りたいし、良いかも。


 ちなみにこの屋敷は子爵邸からは少し離れていて街に近い。少し遠いけど商店街のある所まで歩いて行けないことも無いという立地だ。


「じゃあ、とりあえず街まで出てみよう」


 という事になって、二人がまず向かったのは(うまや)だった。


 あ、そっか、まあ普通あの距離なら歩きでは無いよね、また子胥さんに乗せてもらうしかないか・・・車が有ればなぁ・・

 聞いてみたらレイも普通に乗馬は出来るらしい、「戦車の方が乗り慣れていますが」とか言われたので、一瞬戦車!?って思ってしまったけど、ああ、戦車(タンク)じゃなくて戦車(チャリオット)の方ね、と理解する。


 いやまあ物騒なことに変わりは無いんだけどな!


「それではコウ殿は馬に乗れないという事ですか」


「うん、まあ・・」


 レイに聞かれてそう答える。


 正直女性陣(少なくとも見た目は)が、みんな乗れる中で自分だけ乗れないというのも情けない話だが、本当の事なので正直にそう告げる、こういう所で見栄を張ると多分死ぬ、いや比喩とかでなくこの世界だとマジで。


 レイはしばらく考えた後、こう提案した。


「ではこうしましょう。しばらくの間コウ殿に私たちで騎馬を教えるというのはどうですか? 騎馬のまま戦えとは言いません、それでもこの世界で生きて行く為には、移動のために馬に乗れないというのはいささか不便でしょう」


 それは願っても無い事だった、自動車があればともかく、いつまでも子胥さんの前に乗せてもらう訳にもいかない。言うなれば免許センターの合宿みたいなものをしてもらって、少なくとも普通に走らせることが出来る様になるだけでも有難い!


「初めてなんで・・、お手柔らかにお願いします」

 

「初めてなんですか?まあ力を抜いて、優しく教えて差し上げますから」

 イケメンボイスでそう言ってレイが微笑む。

「私の教え方は荒っぽいぞ、多少尻が痛くなるかもしれんが覚悟せい」

 バリトンボイスでそう言って子胥さんがニヤリと笑う。


 何故か中庭で、むこうを向いて洗濯物を干していたメイドさんが、「きゃ~~」と言いながら両手で頬を抑え、こっちをチラ見しながらフェードアウトしていくのが気になるんだが。


 何だろう、凄く嫌な予感がする、頬を一筋冷や汗が滴る。


 去り際の「デュフフ」とでも言いそうな歪んだ笑顔が頭から離れない。


 どうしてこうなった。

 屋敷に着いて挨拶した時は、メガネの似合う真面目そうな感じのいいメイドさんだったのに。

 

 世界が変わっても人類の普遍的な(カルマ)は消えないという事なのか・・・

 彼女はその罪を背負って生きる女性なのかもしれない・・・



 まあ、何が言いたいかと言うと。


 あの娘、腐女子(ふじょし)じゃね?

 子胥さんの「アンデットに特効」ってあの子にも効くのかな?・・腐ってるみたいだし。


 ・・・・・とにかくこの事は、また今度ハッキリさせよう。


___________________



 結局、午前中は子胥さんの前に乗せてもらい商店街へ、「自分も武器とか持った方が良いのかな?」そう言って訪れた鍛冶屋だったんだけど・・・


「重い・・・・」


 当然と言えば当然、なんとなくイメージから「剣」を選んで持ってみたけど重いのなんの。


 持つだけでもギリギリなのに振り回すなんてとんでもないレベル。


 別に大剣(グレートソード)とかそんなんじゃ無く、普通の長剣(ロングソード)どころか短剣(ショートソード)ですら片手で持つことを考えると重い。


 子胥さんとレイは「身体強化」のスキルが有るせいか、問題無いらしい。子胥さんには「屍打ちの鞭」も有るしね‥と思ったらレイも「神聖属性の武器を呼び出すスキルを持ってる」だと?・・・・・チッ、チート持ち共が。


「遠距離系の攻撃スキルでも持っているなら、レイエスさんと一緒に後衛に回ってもらえるんですが」


  ええ、有りますよ一応爆発系攻撃スキルに相当するスキルが、糞役に立たないテロスキルだけどな。



 役立たず認定一歩手前、そこで子胥さんが一言フォローを入れてくれる。


「まあコウ殿は先陣を切って戦うというタイプではあるまい。旅の間見た限り算術も達者で人との交渉も上手い。「呉」にコウ殿が居たのならば兵糧の都督を任せたであろう」


 子胥さんの言葉にレイも「ほう、それほどですか」と、感心している。


 そうなんですよ、自分の仕事は戦争とか無関係だったんで、事務仕事させてくれると助かります。でもそれを言うなら子胥さんやレイだって政治家とか軍師なのに、何でそんなに戦えるんでしょうか。軍師とか後ろに控えて白い扇を持って「今です」とか言ってるもんじゃないのかよと。


「それでも無理に武器を持とうとするなら槍だが」


 子胥さんの言うには、同じ技量の人間が、剣と槍で戦った場合、ほとんど槍が勝つらしい。


 徴兵された素人兵や門番が槍を持っているのは、テンプレだからじゃ無いんですね。


それからいくつかの武器を手に取ってみたが、結論。

 戦うのは諦めよう、多分それが正解だ、裏方仕事や事務仕事に徹する方が良い。何の為に転生したの?いや全くだね。



 結局護身用にと、普段の細々した事にも使えそうなナイフを一振り購入し、鍛冶屋を出る。ちょっとした軽食を取りつつ、通りやお店の場所や距離なども確認していくと、町に入ってからは馬を降りての移動だった事もあり、結構時間がかかった。


 もう少しで夕食かな?と言う時間帯になってきたので、屋敷に帰る事にする。


 その帰り道。


 ちょっと薄暗い農道に差し掛かった時だった、昼間は美しい木漏れ日を形作っていた木々の合間から、数人の男たちが躍り出てゆく手をふさぐ。馬に乗っている人間も二人居る。


「よぉ、兄ちゃん。女二人を独り占めってのはちょっと贅沢すぎやしねえか?」

「俺たちにもちったぁ良い思いさせてくれや」


 何だこのテンプレ通りの盗賊は。

 セリフが昭和のチンピラみたいだし。


 いや盗賊に独創性を求めるのも違うか、「モヒカン頭に3輪バギー」みたいなのに出てこられても困るし。


「二人乗りでは逃げ切れんな、コウ殿、馬を頼む」


 子胥さんたちが馬を降りて前に出る、って言うかアンデットじゃなくて普通の人間が相手だけど大丈夫なんだろうか。


「レイ、一人は殺さず生かして捕らえよ」

「承知しました」


 あ、これ、大丈夫そうだわ、頼もしすぎる。


「女二人は出来るだけ傷つけんなよ、価値が下がるからなぁ」


 ヒャッハァーって感じで盗賊たち襲い掛かってくる、それを迎え撃つレイと子胥さん。


 自分は巻き込まれないように、2頭の馬の手綱をもって後ろに下がり戦闘の様子を見守った。


 


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