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第7話 温泉回・・・やったぜ?

美女との混浴回・・・勝ったな。




 それは「うちの風呂はちょっとした自慢」と言うのに相応しい風呂だった。

 と言うかちょっと所じゃない。


「え、なにこれ、下手な銭湯より広いんじゃない?」


 20畳程もあろうかと思える部屋に銭湯並みの湯舟、しかもこの硫黄の様な匂いは・・・もしかして温泉!?


 いわゆる「源泉かけ流し」これ以上贅沢な風呂が有るだろうか。



「ほう!言うだけの事は事は有るではないか!!!」


 子胥さんが嬉しそうに言う・・・全裸で。


 いや、これはネットの掲示板のネタとかじゃなく、そのまんまの意味。



 隠すとか恥じらうとか、そう言う概念自体が無いんじゃないかと言うくらい堂々と入浴を楽しんでいる。


 今も、自分の目の前、湯舟の淵に腰を下ろし、タオルを肩から背中に「スパァン」と引っ掛け、ナチュラルに話しかけてくる子胥さん。


「これは良いな、疲れが一気にとれるわ」


 とか言ってるけど、当然「モロ見え」である。

 髪の毛や湯気や、謎の光に邪魔される事も当然無い。

 どれ位モロ見えかと言えば『ああ銀髪の人って、そっちも銀色なんですね』という、それが解る位にはモロ見えさ。


 目の前にいるのは「絶世の」と言っていいレベルの美女だ。

 その美女と合意の上で混浴しているとか、ラッキースケベの極みと言っていい。なのに何故だろう・・・全くエロスを感じない!・・・・いや別にEDと言う訳じゃないですよ?念のため。


 温泉回ってもっと「嬉し恥ずかし、キャー、エッチ!」みたいなモノだと思っていたのに・・裸の美女が目の前にいるのに、全く嬉しく無い!


 ここまで堂々とされると、何というか・・・「下着と水着は隠れる面積が同じなのにエロさが違う理由って何ですか?」とか、「見たきゃ見れば」って言う感じのギャルのヒョウ柄パンツに価値観を見いだせない気分というか・・・・・・つまり羞恥心って大事だよね?


 何十年か前の少年は「修正入りのエロ本」でも大いに興奮し、幸せを感じていたのに比べ、現在は簡単にネットで無修正が見られるのに、少年たちは冷めている。



「幸せって・・・一体何なんだろうな?」


 遠い目をして一瞬哲学に目覚めかける。


 その時であった。



「あぁ~~~いい湯ですねぇ~~、ここ最近の疲労感が一気に抜けていく気がします」


 レイエスさんの声で目が覚める。そうだよ、元々風呂に入るのは疲労を癒す為であって「肌色面積が多い」とかは重要では無かった筈だ。反省しろ、俺!


 心を入れ替えた自分は肩までゆっくりと湯につかり、改めて子胥さんを見る。うん確かにものすごい美人だけど、そう言えば俺って洋物のAVとかダメな人だったわ、今思い出した。

 

 結局見るのかよって? 

 見るでしょう普通、見た目は美女な訳だし。


 ちょっと仕草や態度から江戸っ子爺さん的なオーラがダダ洩れなのが気になるが。


 せめてこれが逆なら・・・イヤ、逆はもっと嫌か、むさいオッサンから美少女オーラが立ち昇る様を想像しかけ、慌てて考えなかった事にする。


 視線に気付いた子胥さんが、「どうした?」と聞いてきたので、「いや、子胥さんオッパイでけぇなって思ってさ」と返しておく。

 完全にセクハラ発言だが、まあ()()()()気安さって奴だ。


 子胥さんも気にする風でもなく「そうであろう、私の美しさは後宮の美姫達にも負けてはおるまい」とか調子に乗った後、大声で笑った。

 笑い声は勿論「うふふ」とかでは無く「うわぁはっはっは!」声は相変わらずのバリトンボイスだけれど、なんか慣れてきた。


 「見た目は美女、心は親父」なんかどっかで聞いたこと有る様なキャッチコピーが頭をよぎる、なんか殺人事件とかが起こりそうな・・いや、俺と子胥さんは復讐者(アヴェンジャー)なんだから、むしろ殺人事件を起こす側なんだけど。


「まだ召喚されてから数日しか経っていないのに随分馴染んだなぁ・・・」


 滅茶苦茶な人だけど「まあ子胥さんだし?」と思えてしまう自分が居る、そして、それが存外嫌じゃ無い。

 子胥さんだけじゃ無くレイエスさんも。

 彼には自分と同じ常識人枠として親近感を感じる、異論は認めない。


 前日までが逃避行の連続だった訳で、まさに命の洗濯とで言う様な入浴を存分に楽しむレイエスさんに付き合って、自分と子胥さんも長めの入浴を楽しんだ。



___________________________




 風呂から上がると、言っていた通り着替えが用意されていた。


 見栄えというより着心地を優先したラフな木綿製の服だ。パジャマやガウンと言う程までラフじゃないので「親しい人同士ならギリギリこれを着たまま食事をしても許される」みたいな感じ。


 正直こんな疲れた状態で、堅ッ苦しい服でディナーとか勘弁なんで有難い、自分はそう感じただけだったけど。


 子胥さんは少し感心した様子。

 レイエスさんに対し語りかける様子は、まるで教師の様だった。


「フランシスコ殿はレイエス殿の事を本当に心配し、配慮してくれている様ですな。我が国の古典を読んでも『人は上手く行っている時だけ良い顔をして、窮地に陥ると離れていくのが普通であり、普段は素っ気なくとも困っている時にも態度を変えないのが真の友である』と書かれております」


「レイエス殿の父と、フランシスコ殿は真の友人だったのでありましょうな」


 

 子胥さんの言葉にレイエスさんの目から涙が零れる。


「私は・・ジャンゴ殿に何か返せるのでしょうか・・」


「返さずとも良い、まずは生き残りなされ」


「はい・・・・・」


 目の前で会話する二人はまるで師弟のようで、子胥さんは美女、レイエスさんも貴族のイケメンって事も有って、物凄く絵になっていた。


 ・・・いきなりのシリアス展開、考えてみればレイエスさんは「父と兄を殺されて復讐に燃える主人公」子胥さんは「呼び出された美女の復讐者(サー〇ント)」、何か売れそうなコンテンツの臭いがする・・


 畜生・・自分要らないじゃないか・・内容はともかく見た目だけなら美男美女だし・・・二人とも爆発し・・・


「危ぶえねぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ギリギリ意思の力で踏みとどまったが、危うくレイエスさんと子胥さんを爆破してしまう所だった・・・やっぱ使い勝手悪いというか、暴発の可能性が高いテロスキルだろうコレ。




___________________




 その後の食事は子爵もレイエスさんと同じテーブルに着いた。

 貴族の食事と言えば、想像するのはあの「やたらと長~いテーブル」だったのだが、今回の食事は大き目の丸テーブル、まあ6人掛け位かな?


 結婚披露宴の招待客用のテーブルや、ちょっと高級な中華料理店の多人数用テーブル席みたいな感じ、勧められて自分たちも同じテーブルに着く。


 やたらと身分とかに煩い貴族だったら、上座下座とか以前に自分達と同じテーブルには着かないだろう。そのあたりも含めて好感が持てた。


 

「大したもてなしも出来んが、遠慮なく食べてくれ」


 確かにテーブルの上の料理はそれほど豪勢と言う訳ではないが、消化が良くて胃に優しい系統の料理が多かった、これは明らかにレイエスさんに向けた配慮だろう。


 味自体もとても美味しいし、何よりも子爵自体が同じ料理を食べているのだ、これに文句をつける奴が居たら、それはよっぽど頭の悪いやつなのだろう。


 もちろん感謝して頂く。


 お互い一刻も早く情報が欲しい所だろうが「それは明日の朝一番に話し合いの場を作る」と言う子爵の提案を受けてこの場はただ食事をして、その後はすぐに寝室に案内された。


 確かに疲労し切った状態で話し合っても、建設的な話し合いになるとは思えない。ならばまずは休養を取って、思考がシャープな状態で話した方が良い。

 この切迫した状況下でそう判断できるフランシスコ子爵・・・かなりの切れ者かも知れない。


 って、子胥さんが言ってた。

 いや自分は会話しただけで「こ奴、やりおる」とか感じられないし?


 何はともあれ、数日ぶりにベットで眠れる。

 かなり疲れていたのだろう、自分はそれほど寝付きがいい方では無いのだが、その日は泥の様に眠った。






ごめんなさい。

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