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第16話 出発 「おい・・」


 もう完全に「我が家」と言ったらココという感覚になりつつある屋敷に戻ってきた。


 預かったのはアダムス王国の封蝋が入った一通の手紙、これをカレン姫に渡し、返事をもらってくるというミッション。

 幸い期日は設定されていないので、きちんと準備を整えるだけの時間は有るが早い方が良いのは間違いない。


この日はそろそろ良い時間になっていた為、準備は明日と言う事になり夕食、入浴を済ませて休むことにする、それほど肉体的にきつかった訳じゃ無いけど・・すごく疲れた。


____________________



 そして翌日。


 ローニー:「コウ殿は良いとして、お前ら・・・潜入舐めてんのか?」


 潜入工作や密偵などその道のプロ、ローニーからのダメ出し。


 レイエスさんの答えはこうだ。


「服装は町人や商人の古着にしましたし、武器等も持っていません。念には念を入れて馬の馬具等まで使い古された物に取り替えました、怪しまれる所は無いと思いますが?」


 子胥さんも「その通りだ」と(うなず)いている。


 自分の意見を正直に言わせてもらいます。

 

「ローニーが正しい」


 だってそこの3人、全く忍んで無いもの。


 衣装は良いのだ、衣装は。


 この3人、本人が目立ちすぎるんだよ!!!


 まず子胥さん、女性にしては高い身長に輝く銀髪、そして無駄な美貌。

 とにかく目立つ。

 服装も「例の軍服の上からフード付きのマントを羽織っただけ」だ。

 しかもフードは後ろに跳ね上げているので顔丸見えだし・・・

 これを変装と言うなら、ただ帽子をかぶるだけの方が顔が見えにくくなる分マシかもしれない。


 もう服装云々よりとにかく顔が目立つ。


 

 そして次、レイ。


「僧侶や巡礼者など、宗教的な立場から旅をしている者は、宗教的な揉め事を避けるため審査が甘くなるモノですし、私は修道服のままの方が良いでしょう」と言うのがレイの言い分。


 それは正しい。正しいけど今の自分の外見を考慮しよう。ちょっとくたびれた感じの老人とかならともかく、金髪ロリ修道女とか目立たない訳無いだろうよ!!?



 そしてレイエスさん・・・いや、まあこれは本人には罪は無い・・・かな?


 衣装は古着で、今言ったように馬具なども怪しまれないように中古の物と替えている。フードやショールなど顔を隠せるような小物も揃えており、努力の方向性は全く間違っていない。


 だけど何て言うんだろう、、「育ちの良さって隠せないんだなぁ・・」って、そう思ってしまった。


 まず何て言うか立ち姿が綺麗、あと優雅な物腰。


 勿論、顔形も整っているのだが、そういった一つ一つの立ち居振る舞いから滲み出る育ちの良さが、変装後の衣装とちぐはぐすぎて違和感しかない。


 ちなみにユキは少々地味目のメイド服、メガネもそのままで変装とは言えないけど「そのまま真面目そうな女中」で行けそうだ。

 美人ではあるが常識の範囲内だし。

 相変わらずそつがない・・・なんか腹立つ。




 まあ、俺とコウ殿、ユキは良いとして、そっちの三人は顔が派手過ぎんだよなぁ・・・そんな理不尽な文句を言うローニー、まあその通りかもな。


 かといってずっとフードを被っている訳にもいかない、フードとマントで全身を隠した6人組とか怪しすぎる。


「わが国で暗殺のため変装した者は、漆を顔に塗ってかぶれさせて人相を変え、炭の粉を飲んで喉をつぶして声を買えたらしいが、それは流石にやりたくないのう」


 子胥さんがポツリと呟くが。


 いやそれもう「変装」とか言うレベルじゃあないだろう・・・

 何でそう極端なんだ。


 結局「まあ私達3人は戦闘要員と言う事で、出来るだけ姿を出さぬようにし、交渉やら工作やらはお主達3人でやってもらうようにするのが良かろう」


 という子胥さんの、こっちに丸投げする気満々の意見に落ち着く。


 腹立つけどそれが一番無難なのかなぁ、まあローニーがいれば何とかなる・・のか?



「己の未熟さを恥じるばかりです」

 そんな雰囲気を察したレイエスさんが申し訳なさそうに言う。


 いや別にそこまで責任を感じなくても。


レイ:「それにしてもコウ殿の変装は見事ですね、完全に普通の町人にしか見えません!」


子胥:「確かに!どこからどう見ても普通の町人だ、見事としか言いようがない」


 レイと子胥さんが自分の「変装」を絶賛してくれるが、変装とか以前に俺サラリーマンだから!リアル町人だから!


 天然発言かと思ったら目が笑っていやがる、子胥さん達ははもう少し謙虚になってくれ。


ユキ:「コウ様は・・・」

「スパン!」


 子胥さんとレイが自分をからかうのを見て、ユキが楽しそうに自分も参戦しようとしたので、この時の為に用意しておいたハリセンで後頭部を叩いて止めておく。


「なんか私だけ扱いひどくないですか!?」


 なんか言っているユキは放置で。


「おう、お前ら、一応これ作戦会議だからな?」


 あきれるローニー。


 彼も最初は丁寧な感じでしゃべってたけど、最近は随分とフランクになった、かたっ苦しいのは苦手なので良い事だ。


 結局子胥さん、レイ、レイエスさんの3人には顔や紙を隠せるような、フードの着用を義務化してもらうことにして、ブラウンウイック王国に出発することになった。


「ほら、やっぱりコウ殿に来てもらって正解ですよ。役に立たないなんてそんな事は有りません」

 レイエスさんは嬉しそうに言うが、役に立つ理由が「普通に見える」とかねもう。


 なんやかんやで「後は臨機応変に柔軟な対応をしていく」と言う方針に決まった訳だが、それって言い方を変えれば「行き当たりばったり」って言わないか?


「まあなるようになるさ」


 そう、肩を叩きながらニヒルに笑うローニーだけが頼りであった。



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