第10話 戦闘、と言う名の蹂躙。
グロシーン有り、ご注意ください。
戦いの開始を告げたのは、子胥さんの鞭打。
リーチを生かし先制で盗賊たちの中で馬に乗っている奴、その馬に対して鞭が炸裂!
「パァン」
当然馬は痛みに棹立ちになり騎手を振り落とし暴れまわる、そう、周りの盗賊達を巻き込んで。
「ヒヒィィィン、ひhぢygqg」
暴れまわる馬に盗賊たちが怯む、そこに切り込む存在がいる、レイだ!
右手に生み出した武器は聖属性の白いオーラを纏ったメイス。
それをパニック状態の盗賊の一人、その頭部に対し、思いっきり振り抜いた!!
「ホーリー・スラッシュ!!!」
ちょっと待て! 何でホーリー・スラッシュなんだよ!?メイスって鈍器だから!斬撃要素どこにも無いから!
「ゴッ」
予想通りの鈍い音がして、盗賊の一人が糸の切れた人形の様にその場に崩れ落ちる。
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あたりの喧騒が消えた。
打ち据えられた盗賊は、頭部からの大量出血によるチアノーゼ状態でビクビクと痙攣しており、側頭部から見えてはいけないピンク色の何かが露出している、モザイク無しでそれを見てしまった自分は、胃から酸っぱい何かが込み上げてきて慌てて目を逸した。
「お前・・・」
「酷い・・」
レイを見る盗賊たちの瞳には、信じられないモノを見る様な怯えの色が浮かんでいた。
そんな盗賊達に、返り血に染まったレイが笑顔で告げる。
「安らかに眠って下さい」
口調が丁寧な分余計に怖い、って言うか安らかに眠れる要素がどこにも無い!!
そもそも、そのセリフはアンデットなり呪われた存在を解き放った後で言うセリフであって、生身の人間を強制的に物理で永眠させた後で言うのはどうなんでしょうか!?
「レイよ、取りあえず生かしておくのはその馬に乗っていた奴で良かろう、あと馬も貰っておこうか、中々よさそうな馬ではないか」
「承知しました、確かに農耕馬では無く、乗馬用の馬の様ですからコウ殿の練習に良さそうですね、欲を言えば軍馬だったら言う事無しなんですが」
もはやどっちが盗賊なのか分からない・・・
「ひぃぃ、何なんだよお前ら!」
逃げようとした盗賊の足を子胥さんの鞭が掬い、引きずり倒す。
そこにレイの追撃。
「ホーリー・スラッシュ!」
「ゴスッ」
再び鈍い音が響き、レイの返り血の量が増す、既に「ホーリー」の要素すら欠片も無い。
「うわぁぁっぁ、何なんだよこいつ等、人を殺すのに何の躊躇もねぇ!」
「こいつらヤバい!早く逃げろ!!!」
「後ろの男は雑魚っぽいけど、この女2人はヤベェ!!」
いや確かにその通りなんだけど、最初に襲い掛かってきたのはそっちなんですけどね?殺されても文句言えないでしょ。なのに、死に際に自分をディスって行くとか、なんか納得がいかない、ちょっとイラっとする。
なのでちょっと口を挟む。
「レイ、子胥、その辺りにしておけ」
「む?」
「おや?」
子胥さんとレイが、自分の珍しい物言いに興味をそそられた様な表情で振り向く。
そこで言ってやった。
「ただ殺すだけでは面白くない、少し遊んでもらおうじゃないか」
そう言いながら、漫画でよくある「ニヤリと笑う」と言う表情を、頑張って作ってみた!この三文芝居で、せめて「雑魚っぽい」とか言われなくなると良いな?そんな些細な意趣返しだった。
イメージ的には「どこぞの悪の組織のボス」、何か黒くてシュッとしてる感じの。
「ほう、なるほど、では少し遊ぼうか?」子胥さんがノリノリで地面に這いつくばった盗賊達の前で「パァン」と鞭を鳴らす。
レイも「ではその様に」と慇懃無礼な礼をして、盗賊達をにらみつける。
「ヒッ、ヒィィ」
「アイェェェェェ」
効果は抜群だ!・・・いやちょっと抜群すぎる?
へたり込んでいた盗賊の何人かが耐えられなくなって、泡を吹いて失神した。
よほど恐怖を感じたんだろう・・・何て酷い。
あとSUN値チェックに失敗してして発狂した奴については、レイが物理で黙らせた、うん・・・何て言うか静かになったよ・・・うっぷ、ソレこっちに見せないで!
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気絶した盗賊達を、破いた服や靴ひも、手綱など紐状の物で縛った後、自分達は急いで屋敷に向かっていた。
「ここらはそんなに治安が悪いとも聞いて無かったけど、盗賊とか居るんだね」
やっぱ異世界だなぁ、とか思いながら呟いたんだけど。
「タイミングが良すぎる。森の中に斥候らしき気配が有ったし、馬に乗っていた一人も戦いが始まる前に逃げた、いや場を離れたというべきか?」
「おそらく金品や女目的と言うより、誰かに雇われた線が濃厚でしょう、その点コウ殿の芝居により生きたまま数人を捕らえられたのは僥倖でした」
「なるほど読んでおったか、それで生け捕りにしたのだな、コウ殿」
「生かしておいた一人が情報を持っているとは限らぬゆえ、一人でも情報源は多い方が良い、流石です」
「ア、ハイ、ソウデスネ」
何か二人の間で急速に「村田光株」がストップ高になっている気がするんだけど、気のせいでしょうか?
何はともあれ屋敷に到着、すぐにレイエスさんに委細を報告して、放置してある盗賊共を回収してもらう。あとついでに猟奇殺人の跡にしか見えない現場の片付けとか・・・戦利品の馬は子胥さんがちゃっかり回収、抜け目ない。
「恐らくですが、こちらが密偵を送っているように、あちらもこの街に手の者を潜ませているのでしょう」
とにかく捕らえた連中を尋問して情報が得られ次第、また知らせて貰うという事になった。
「では、すいませんが私は湯を使わせてもらって良いでしょうか」
レイが珍しく、待ちきれないように発言し
「では私も一緒しよう」
子胥さんも同調する。
この屋敷にも、子爵邸程の規模では無いが風呂が有る。子胥さんも戦闘したし、レイに至っては返り血まみれだ、まあ風呂に入りたいのも解る。
そんな訳で湯殿に向かう二人を見送った、、別に一緒に入れなくて残念とか思ってませんよ?
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美女と美少女の入浴シーン・・・普通ならさ
「アンタまた胸大きくなったんじゃない?、やだ!もうやめてよ!」
みたいなサービス展開になる所なんだろうけれど、そうならないのはもう知ってる。
なぜかメイドの手が足りないとか言う事で、タオルと着替えを持って行ったんだけど・・・もちろん「脱衣所でバッタリ、キャー!」みたいなエピソードも無かったよ?そして風呂場から聞こえてくる声は。
「やはり人間の血汚れは落ちにくいですね(イケメンボイス)」
「うむ、特に髪についた時は厄介だな、どれ私が濯いでやろう(バリトンボイス)」
「これは忝い、しかし子胥殿は中々良い体ですな(イケメンボイス)」
「ふふ、若い体と言うのはそれだけで良いものだな(バリトンボイス)」
ええこんな感じですよ、殺人鬼が証拠隠滅してるようにしか聞こえない。
ちなみに最後の子胥さんのセリフは、年を取った時の体力の落ち方を実感してるからだと・・・そう思いたい。
二人のヴィジュアルが見えてるならともかく、声だけでは全くサービスシーンになりはしない・・・と思ったんだけど。
脱衣所の掃除をしているフリをしながら、その会話に聞き耳を立て、一人ハァハァしている駄メイドが一匹。
お前がココに居るから、メイドの手が足りねぇんじゃねえの?
子胥さんとレイの会話に聞き耳を立てるその表情は、ちょっと公共の場で公開しちゃイケない感じのやつ。
「子胥さん!レイ!タオルと着替え、ここに置くから!!」
後ろから湯舟に向けて、声を掛けると「ビクゥ!!!!」と解りやすく反応しゆっくりと此方を振り向く。
風呂場からは、「すまんな」とか「有難うございます」などの返事が聞こえるが。
それさえ耳に入らないくらい、取り乱す駄メイド。
まあ何だ・・・「取り合えず仕事しろ、な?」
自分の真っ当な要求に、消え入るような声で「・・・はっ、はい!」と言う答えが聞こえる。
あと気になる事が有ったので、「仕事が終わった後でいいから話したい事が有る、部屋に来るように」言うと、「解りました」と言いながら、真っ赤になっていた。
「あれ?俺何か変なこと言ったかな?」
首を傾げながら、風呂場を後にして、食事の後部屋に戻った。