プロローグ
「お・れ・は、モテたいんだよ!」
悲痛に近い叫びが教室を支配する。先に言っておくがこれは俺の叫びではない。
悲しいことに俺の友人、間賀田 宮夏の叫びだ。
放課後とはいえ教室にはまだまばらに生徒が残っているのでこう言った発言を恥ずかしげもなくするのは止めて欲しい。
「凛もそう思うよな、な。」
「お、おう。」
このゴリ押しには流石に同意せざる得ない。同意が嬉しかったのか宮夏は更に続ける。
「やっぱ男として生まれたならモテたいよな。しかも高校2年なんてそういう事があって然るべきだよな。」
なぜかシャドーボクシングを加えながらそんなことを言っている宮夏。
俺は俺で机に頬杖をつきながらため息をこぼす。
(モテたい、か…)
正直宮夏ほどオープンには出来ないがどうしようもない程共感できる。
短い高校生活だ。いろんな可愛い女の子とカラオケ、お祭り、買い物。そんなことが出来たらと思うと夢が広がる。
だが…
「やっぱり俺はそういうの興味ないな。」
男という生き物は実に浅はかなり。
友人にすらプライドを見せてしまう悲しい生き物なのだ。
だが、友人とは偉大である。そんな魂胆など見すかしてくるのだから。
「とか言って、女の子とカラオケとかお祭りとか行きたいと思ってんじゃないの。」
とは言え、このレベルで見透かされるとキモい。
「お前、キモいな。」
「なんでさ。」
その後もギャーギャー言っていたが、全てスルーして窓の外を見ながら惚ける。
まだ高校2年生になって数週間しか経っていない。高校生活はまだ丸々2年間残っているといっても過言ではない。諦めるような時間じゃない。
なんと言っていいか分からないがとりあえず、俺 赤木 凛はどうしようもなく女の子にモテたいのだった。