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悪役令嬢、ヒロインから奪い取った『逆ハーレム』のために魔王を倒す  作者: 小早川真寛
8.5章 魔王と邪悪な側近の想い出

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失望と落胆に立ち向かう~魔王視点~

 ユーゴが魔王になることに周囲から大きな反対はなかった。魔王といっても特にすることはなく、魔物を統括する……という立場ですらないから当然といえば当然かもしれない。雑務があるわけでもなく、一ヶ月に一度か二度、王宮や神殿と供給する魔力量についてやり取りするだけだ。


 時間を持て余したユーゴが最初に思い付いた計画が


「リリィを女王にすること」


だった。自分の手でリリィを幸せにすることができなくなった以上、間接的にリリィを幸せにする方法が『女王』だった。計画を打ち明けた際、アデラインは


「ここに誘拐してきた方が簡単じゃない?」


と無責任なことを言ったが、何もない魔王城でリリィが幸せになれるはずはない……とユーゴはその考えを即座に却下した。


「被害も最小限で、結構いい案だと思うんだけどね~」


と不服なようだったが、アデラインは何かと計画に協力してくれた。アデラインによると、国王と魔王は自由に話ができるというので、


「リリィを第一王女として認知して欲しい」


と伝えたが、国王は


「五歳まで行方不明だった娘を認知するのは難しい」


と承諾を渋った。そこでユーゴは王城を魔物に襲わせた。理性を失った魔物を誘導するのは難しい作業だったが移転魔法を駆使し王城、王宮内に魔物を放ち、あたかも魔王が攻めてきたように演出した。


 この事件により、これまで存在しているか、していないか分からなかった“魔王”の存在を認知させることに成功したのだ。さらに王宮でもリリィの認知の件はスムーズに進むようになり、十五歳の誕生日には離宮が与えられた。



 全てが順調だった。



 欲を言えば戴冠の儀式の際、『大人になったリリィと会えたらいいな……』と心のどこかで思っていたユーゴだが、魔王城に来ることで自分のように魔力に侵される人間も存在することを知って諦めた。


「危険なら王宮で聖剣を渡していただけるだけでも大丈夫ですよ」


と儀式の簡略化すら提案したほどだ。決してリリィが危険な目にあってはいけない。彼女の隣にいるのが自分ではない誰かであれ……たとえそれが自分を虐めたエドガーであれ


「彼女は幸せにならなければいけないのだから」


 そうユーゴは何度も自分に言い聞かせた。どんないじめっ子に対してもリリィが屈さなかったように、ユーゴはどんな困難にも負けられなかった。




 だから五年ぶりにリリィと再会した時、涙が思わず出そうになった。予想通り綺麗な女性に成長したリリィは輝いて見えた。


「お初目におめにかかります。第一王女のリリィでございます」


 そんなリリィの他人行儀な挨拶ですら『今までしてきたことは無駄じゃなかった』とユーゴを感動させた。聖剣を渡した時は思わず抱きしめそうになったが、リリィは


「リアムさんを置いて女王になんてなれません」


 ととんでもない発言をした。正直、リリィと再会するまでユーゴは心のどこかで、見た目が魔物のようになっても「元人間だ」と伝えれば、自分がユーゴであることをリリィが気付いてくれるのではないか……という淡い期待を抱いていた。ところが、こともあろうに冴えない中年男性を指し、「この男のために王位を捨てる」と言い出したのだ。ユーゴの「ユ」の字すらも登場させずに。


 腸が煮えくり返りそうだった。


 自分がリリィを幸せにできないだけでなく、自分が苦労して用意した“幸せ”ですら必要ないと切り捨てられたような気がしたからだ。そんなユーゴに「だから言ったでしょ?」と呆れた表情を浮かべるアデラインの顔を見て、その悔しさはさらに増幅するばかりだった。

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