4話
ガスマスクもといマイヤーのスペックはなんとなくわかってきた。
動きも機敏だし、これなら戦隊モノの雑魚敵よろしくバタバタ倒される心配はないはず。
となれば、問題は何体出せるかということになってくる。
さっきは強制発動という形だったが自力で発動するのはどうするのだろう。
念じるとかそういう感じだろうか。
試しに出ろ出ろと頭の中で念じてみる。
変化なし。
新たな黒軍服のガスマスク現れることはなく、マイヤーはこちらをじっと見つめ、博士はずっとインターフェースで作業をしている。
説明では強制発動以後は任意発動が可能になるといわれたし、
おそらくモニタリングしているであろう博士が何も言わないということは現在問題がない、
つまり任意発動が可能な状態のはず。
こっちに何か問題が…、
発動条件を満たしてないとか?
これ以上出せないとかは勘弁してくれよ。
召喚系スキルで一体だけとかハズレにもほどがある。
無双出来そうなが出せるならともかく、
どう考えてもマイヤーはその分類には当てはまらない。
まだ伸びしろがあるだけかもしれないが…。
うーん、わからん。
考えてもわからないならできることからしていこう。
とりあえず物体を具現化するわけだからイメージは大事だよな。
まずは頭の中でマイヤーと同じ黒軍服にガスマスクをイメージしてみる。
さらにそれがマイヤーの隣で立っている姿をイメージする。
すると、体から何かが引き抜かれる感覚とともにマイヤーの隣に光の粒子が人の形に集まりだし、
光が収まってみればそこにはマイヤーと瓜二つなガスマスクが立っていた。
なんだこういう感じで出せばよかったのか。
出し方がわかればこちらのもの、
上限を調べる必要もあるし出せるだけ出してみよう。
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結果だけ言えばマイヤー含めて12体出すことができた。
出来たのだが、問題が一つあった。
1体具現化させるたびに発生する脱力感。
1体ではさほど問題にならなかったが、
9体目あたりから抗いがたいものになり12体目でうつ伏せで倒れる羽目になってしまった。
これは極力戦闘中には使わないほうがいいな。
流石に見かねたのか博士が近寄ってくる。
「魔力炉に保持者とのリンク、武装の汎用性。それを踏まえれば初期からこれだけ出せれば十分だろう」
「…魔力炉?」
「人間なら大なり小なり持ってるものだ。魔力や気と呼ばれるものを生成する。魔力や気と言っても呼び方の違いだけで存在としては同質で、生命の維持、魂の保持に不可欠なもの。生命エネルギーとも呼ばれる。」
「は、はぁ」
助けてもらえると思ったらいきなり講義が始まった。
「本来、スキルや魔法などで創造されたものは炉を持たない。故にその存在の維持には何らかの形、多くの場合はそのスキルの保持者か魔法の施行者から必要なエネルギーの供給が必要になる。だがお前が創造したこいつらは違う。創造された瞬間から自前で魔力を生成して存在を維持し、その上で自身が使用する武装の創造まで行う。 異例と言っていいだろう」
「マイヤー肩を貸してくれ。…それで博士、異例なのはわかりましたけど、それは何か役に立つんですか?」
「自立できるというのもそれだけで利点だが、内蔵している炉のほうが利点は大きい。魔力で炉を造れるということは、炉に負荷をかけず出力を上げられるということだ。消費に供給が追いつけばそれこそ半永久的にスキルや魔法の行使が可能ということになる。外部からの供給で同じことはできるがそれでも特別な才能かエリックの様な機械の体が必要になる。どちらも容易ではない。とはいえ、今のお前では増加した出力をまともに扱えないから今すぐというのは無理だな。」
そこらへんは経験を積むしかなさそうだが、
気の遠くなる話になりそうだ。
「せいぜいレベル上げに励みますよ。レベルがあるかは知りませんが…」
「レベルはという概念はないが経験を積めば力になる。励むといい」
顔に似合わない励ましの言葉を博士が言った時だった。
入口の扉が開き一人の男が入ってくる。
エリックと違い見た目は人間のそのものだ。
「博士、新入りってのはどいつだ」