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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
41/47

40話

赤、ピンク、緑、黄の影がそれぞれ突っ込んでくる。


「後衛の援護を受けられる様に常に少数で当たれ、隙を突くなら2対1で十分だ。2対1を徹底しろ」


だが、これはあくまで取り巻きに対してだ。

レッドだけはそうもいかない。


『INVADER』のサーベルによる斬撃を意にも介さず、撥ね除けるように一目散にこちらに向かってくる。

撥ねられた『INVADER』がトラックとでも衝突したように転がっていくのを目の当たりにすれば天を仰ぎたくなる。


相手はしたくないが、好都合だ。


どのみち『INVADER』では持て余す以上、自ら相手をするほかない。


「マイヤー、二人で猛牛の相手だ。回避か最低でも受け流せ。まともに貰えば一発でお星さまだぞ」


小さく頷いたマイヤーと共にレッドを迎え撃つ。


振り下ろされる一撃は前回の比ではない圧力を伴っている。

速さは見切れないこともない速さだが、見誤れば一瞬でゲームオーバーだ。

死神の鎌の如き斬撃を掻い潜り一太刀を入れるが、城壁でも殴っているのかと錯覚するレベル


マイヤーをレッドが無視しているため、マイヤーは絶えず攻撃しているが効いている様子はまるでない。

後衛からの援護射撃も謎の斥力によってそれてしまってレッドに対しては効果を期待できない。


正直やってられん。


レッドはもちろん危険だが遅れて参戦したブルーも捨て置けない。

へっぽこ3人組はともかくブルーは戦うと決めたなら冷静だ。

後衛の射線を意識した立ち回りは確実に被弾を抑えているし、前後で挟まれた程度ではひるまず攻撃を裁いている。


その落ち着いた対応によって一人一人確実に数を減らされ、

今も袈裟斬りにされた一人が光の粒子へかわっていく。


実に厄介だ。


「後衛、半分前衛に回れ。特にそこの悲壮感野郎を抑えこめ」


レッドに至っては俺以外眼中になし。


ある意味助かるが

こうしている間にも滅多矢鱈に手に持った武器を振り回してくる。


もちろんどれが当たっても致命傷間違いなし。

瞬きしている間に気が付いたら閻魔様の前に立っていましたじゃ洒落にならない。


「クソッタレがッ」


「観念しろ、悪党。お前に勝ち目なんてない」


「冗談きついなぁ、おい。こちとら物わかりが悪くて、人の話を聞かないから悪党やってんだ。お前の言葉に傾ける耳も、頷く頭も生憎持ち合わせがない。」


「そうか・・・・なら、次で決めさせてもらう」


「もう勝利宣言か、夢の見すぎで永眠しても知らないぞ」


レッドがその手に持った武器を振り上げ、構える。


明らかに大振りの攻撃を繰り出されるであろうその構えに対し俺はゆっくりと後退する。

臆した訳ではない。


この手の攻撃は距離をとった方がこちらの選択肢が広がる……はずだ。

油断なく構え、カバー出来る様にマイヤーを側で待機させる。


「こいよヒーロー、お前を否定してやる」


レッドがそれに応えることはなくそのまま動き出す。


攻撃自体は今まで散々見せられた大振りのそれ

真正面から張り合えばタダじゃ済まないが、

それとて避ければ済む話。


結局気合を入れただけ、

こいつを少し買い被りすぎたようだ。


こんなもの左右に大きく動けば…………




…………………不味い、体が動かん。


恐怖で怖気付くような体と心ならとっくに死んでる自信がある。

つまり、原因は俺自身じゃなくこいつ。


この野郎やりやがった。


仲間の精神に干渉するだけじゃ飽き足らず、

敵である俺の肉体にまで直接干渉してきやがった。


なんでもありにもほどがある。


しかも、薄々感じてはいたがこいつは能力を意識的に使ってるわけじゃない。

ほぼ天然なのがなおのことムカつく。


マイヤーが慌てて俺を引っ張るが、どんな力を使っているのかピクリとも動かない。


「ふざけやがって、チート野郎がぁああああああああ」


動けよ、動け、これで死んだらただの喜劇だ。

嫌なことから逃げて、外道に落ちた挙句、呆気なく死ぬ。


嫌だ嫌だ嫌だ。


結局、誰かの引き立たせ役じゃないか。

結局、嘲笑われて終るんじゃないか。


そんなの嫌だ。

嗤うのは俺だ。


レッドが目の前に迫る。

足掻きが通じたのか、それとも能力の制約なのか

レッドが武器を振り下ろす瞬間に忌々しい戒めから解き放たれる。


それは一筋の光明が見えた瞬間だったが、

獲物を捕らえて死神が鎌を振り下ろすその時にできることなど限られている。


しかも、体は俺を助けようとしていたマイヤーに引っ張られていて体勢は不十分。

だが、なにもしないよりはマシと右手でサーベルを掲げその背に左手を添えて衝撃に備える。

正直こいつの攻撃を真正面から受け止めるなんて正気の沙汰ではないのだが・・・。


結論から言ってしまえばそんなものは無意味だった。

レッドの銃剣はサーベルをあっさりと両断。

俺のサーベルが幻影だったじゃないかと錯覚するレベルであっさりと。


そうなれば後は俺の肉体となるところだが、

ここでマイヤーが引っ張っていたことが功を奏した。


斜め後ろに引っ張られたおかげで、

やつの刃は胴体ではなく左腕を二の腕のあたりで切り落としていく。


傷口からは鮮血が溢れ出すがそれは一瞬で、

怪人としての肉体は反射的に筋肉を利用して血管を塞ぎ出血を止めて見せる。


傷口は焼けるような痛みと熱を帯びているが幸いまだ動ける。

追撃はまだない。


必殺の一撃で仕留めきれなかったのがよほどショックなのか、

それとも……


とにかく、棒立ちのレッドに向かって叫ぶ。


「やってくれるじゃねぇか、この借りは必ず返す。必ずだ、絶対にだ。利子付けて手前らの命で贖わせてやる。覚えて置けッ」


それを合図に『INVADER』達が一斉に手榴弾へと手を伸ばす。

足止めとして対面している『INVADER』にとっては自爆覚悟になるが、

奴らの前から撤退するのは2度目だ。

それくらいしなければブルーが見逃さない。


「撤収だ」


それを聞いたレッドが一歩踏み出すが、

そのまま止まって一瞬、武器を持っていない左手で()()()()()()


その光景に口角が自然と上がるのを感じる。


そうか、思ったより早かったな。


()()()()()()()

次のフェーズといこう。


爆炎とスモークが俺たちの姿を隠した。

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