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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
34/47

33話

「そういやお前らここでの生活はどうしてるんだ?このビル、電気と水道は通ってるみたいだが食い物と日用品は?買い出ししてるのは凶暴女か?」


「買い出しはリアにはさせてないよ。外に出るとなるとみんな症状が出てる部位を隠す必要があるからね。シキ以外は隠そうと思えば隠せるんだけど、ドクは指名手配されてるし、みんなも万が一があったら大変だからね。僕の弟にやってもらってるよ」


「弟?事情を話したのか?」


「よくできた弟でね。事情を話したらちゃんと理解してくれたよ。」


「ほーん」


「年はそこまで離れてないけどかわいい弟でね。僕の自慢の一つなんだ。」


流石にこれの瓜二つという訳じゃないと思うが、というかこんな性格の奴はほいほいいていてほしくない。


それでも、こいつの影響を受けてるのは間違いないだろうが……。


「それで、今回のことは話すのか?」


「もちろんだよ。物わかりのいい子だからきっと理解してくれる。それに手伝ってもらってるからいまさら仲間外れという訳にもいかないしね」


「仲間外れねぇ、その方が弟君は安全なんじゃないのか?」


仮にもこの街を牛耳ってると思わしき所へ喧嘩売りに行くわけだからな。


「そうしたいのはやまやまだけど、後でバレると拗ねちゃうからそういう訳にもいかないんだよ」


それは物わかりのいい子の反応じゃないだろ。


「……そうだ。今日はあの子が来る日だから紹介するよ。」


「いや待て、そんな友達を紹介するノリで俺を紹介されても困るだろう。弟君が。」


「大丈夫、言ったろう、物わかりのいい子だから。」


「はぁ、そこまで言うなら好きにしろ。それでそいつはいつ来るんだ?」


「うーん、いつもならそろそろ来てる時間だからみんなのところにいるかもしれないね。」


リオールが腕時計を確認しそう呟いた時だった。


一人の男がドアを蹴破るような勢いで部屋に入ってきたのだ。


「兄貴、大丈夫かッッ」


入ってきたのは大柄で筋肉質の青年なのだが、目つきは鋭く、金髪に髪型はオールバック、耳にはピアス、首元には金のチェーンネックレスとくれば以前の俺では絶対に近づかなかった人種であるのは間違いない。


「得体のしれない奴と二人きりで話すなんて何考えてんだッ」


もしかしてもしかしなくてもこれが弟君か?


これを物わかりがよくてかわいいと表現できるリオールの頭はどうなっているんだ?


「落ち着いてコール。僕は大丈夫だから。」


「兄貴はいつもそういうが、今回は流石に不用心すぎる。」


「君はリアたちの時もそういったけど、その時も僕は大丈夫だっただろう?僕を信じてくれコール」


「ま、毎回毎回それで引き下がると思ったら大間違いだからなッ、そいつは最近中央銀行を襲った怪人で、軍とも交戦してる。下の連中とは違う正真正銘の御尋ね者なんだぞッ」


「褒めんなよ。照れるだろ」


「あんたは黙っててくれッ」


おーこわ。


確かに見た目はいかつい感じだが、会話を聞いてれば兄を思いやるいい弟に聞こえる。


少しツン要素の強いツンデレ言ってもいいかもしれない。


「聞いてくれコール」


俺にすら噛みついてくる弟君に見かねたのかリオールが弟君の両肩に手をかける。


「僕たちの症状は日々悪化している。シキに至ってはいつ正気を失うかわからない。もう時間がないんだ。」


「だがよ、兄貴もっと他に方法があるかもしれない。俺だって今まで以上に手伝うからよ」


悲しさと怒りが混ざったような苦しそうな表情を浮かべる弟君に対し、真剣な表情でリオールは言葉を紡ぐ。


「もう一度言うよ、コール。時間がないんだ。僕だけなら君に任せたかもしれない。けど、みんなの命がかかってる以上、この状況を打破できるかもしれないチャンスを逃すわけにもいかない。彼に協力する、それが僕たちの決断なんだよ。」


「兄貴はいつもそうやって……なんでも自分で決めちまう。…………分かったよ。兄貴の決断を信じるよ。」


「いつもありがとう、コール。僕の帰る場所を君が守ってくれるから僕は安心して行動ができる。本当に感謝してる。」


諦めたように苦笑いする弟君をリオールはそっと抱きしめる。


「ああ、任せてくれ。兄貴の背中を守るのは俺の役目だからな。」


俺はいったい何を見せられているのだろうか。


兄弟愛?青春?それとも……。


とにかく、この妖怪人誑しがなんでも誑しこむのはよくわかった。


言動、表情、仕草が弱った人間の心に染み込むよう最適化されてるとしか思えない。


しかも天然でだ。


リオール自身が持っている能力よりよほど厄介だ。


「すまなかったねコルテス、弟も分かってくれたところで改めて紹介しょう、弟のコールだ。」


「ニュースじゃ俺は死んだことになってたし、外見なんてほとんど公表されてないはずだがよくわかったな。」


一応手を差し出すが、そこまで馴れ合うつもりはないらしくスルーされる。


「少しばかりツテがあるからな、あんたの部下の見た目やあんたが死んでいないことも知っていた。それに、下にいたあんたの部下は特徴的過ぎて見間違いようがない。流石にこんなところにいるには驚いたが……。」


どんなツテか知らないが意外と情報統制は緩いのかもしない。


いや、警官や軍人の職務に対する責任感とやる気を見ればそれを阻害する研究所をよく思ってない奴もいて当然か……。


その辺から漏れてるなら色々とはかどりそうだ。


それに少佐殿にもいいプレゼントが送れそうだな。


「それにしてもよかったな、リオール。この弟君ならお前の無謀な試みにも手を貸してくれそうじゃないか。」


「兄貴、なんの話だ?」


「コールにその話は……。」


作戦の話を持ち出したら露骨に固まるリオールと疑いの眼差しを向ける弟君。


「仲間外れにすると拗ねるって言ったのはお前だろ?それに人手が足りないんだ、手伝ってもらった方が効率的だぞ。」


邪悪な笑みを浮かべた俺は弟君に予定している作戦を伝え、ささやかな悪戯を成功させた。


逆にリオールが拗ねたのは言うまでもない。

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