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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
28/47

27話

「なかなか見つかんねぇなぁ」


ぼやきながら人通りのない裏路地を進んでいく。


ブルー相手に伏線を仕込むことに成功した俺は次の準備に取り掛かったのだが、これがなかなか捗らない。


非番の日の行動が情報通りだったブルーと違い今度の相手はそうもいかない。


人気のない所にいるはずと裏路地や廃工場やら都市の郊外を中心に捜索しているのだが結果は芳しくない。


ブルーとのお遊びと違ってこっちは本命、そもそもいなかったならともかく可能性があるうちは諦めるわけにもいかない。


今回の目的は釣り餌の確保。


騒動を起こしフォースレンジャーを迎撃準備を整えた目的地まで誘導する囮役。


自分自身でやってもいいがそれだと面白味がない上に警戒されてしまう。


特にブルーに感づかれる可能性は捨てきれないので、野良の怪人にその役目をやってもらう。


この都市の野良の怪人は知能が低いらしいので運用できるかは躾けと運次第だが、

上手くいけばなかなか楽しいことになるはずだ。


とはいえそれも捕まえられればの話、ますば怪人を見つける必要がある。


適当に目のついた廃ビルに開きっぱなしの自動ドアをくぐって足を踏み入れる。


8階建てくらいのものだがエントランスはそれなりのスペースがあり以前は会社名が入っていたであろう各階の表記も今は空欄になっている。


エレベーターも動いている気配はなく、正面ドアが開きっぱなしで掃除されていないフロアは歩くたびにじゃりじゃりと音を立てていく。


「当たりみたいだなここは」


ぱっと見はただの廃ビルだが人が出入りした痕跡がある。


フロアの床には足跡と思しき痕跡、階段前のドア周辺には開閉されてたであろう跡。


あとはどんな奴が出入りしているのかって問題だが、張り込みをするかそのまま踏み込むか、その辺は深く考えずに動き出してしまったからどうしようか。


「……動かないで」


若い女性の声。


それと同時に背中に固いものを押し付けられる感覚、おそらく銃の類だと思うが、一応の対応として両手を軽く上げる。


「一応気を配ってたはずなんだがいつから居たんだ?」


「黙って、質問はこちらがするわ、聞かれたことにだけ答えてちょうだい」


「余裕がないなぁ。もう少し遊び心がないと人生つまらないんじゃないか?」


「聞こえなかったの?聞かれたことだけ答えて。本当に撃つわよ」


銃を握っているであろう手に力が入る音が聞こえる


「ひとついいことを教えてやろう。」


あげていた両手を下ろし振り返る。


当然、警戒していたであろう女性は発砲。


拳銃にしては重い発砲音に強い衝撃を胸に受け2、3歩下がるがどうということはない。


満面の笑みで女性と対面する。


フードをかぶった細身の女性はその顔に驚愕の表情を浮かべている。


「う、うそでしょ」


「脅しというのは相手が恐れるだけの暴力がその背景になければいけない。俺を脅すにはその程度の力(拳銃)では役不足だ。」


見れば女性が持っているのは口径のデカそうなリボルバー。


並の怪人ならただじゃすまないのだろうが、

俺の体はその程度では痛くも痒くもない。


「この状況下での脅しは敵対行動と同義だ、覚悟はできてるかな?」


それでも再び拳銃を構えようとする女性の手から腕を振るって拳銃を弾き飛ばす。


「とは言え君に酷いことをしたいわけじゃない、いくつか質問に答えてくれればそれでいい。」


鷹揚に両腕を広げアピールするが、一歩二歩と距離を置かれる。


「さっきまでの威勢はどうした。返事くらいはしてくれないと困るんだが」


仕方がない少々手荒に聞き出すしかないか。


「リア、一旦隠れろ」


フードの女性を捕まえようと構えた時だった。


階段のドアを蹴破る勢いで開けて出てきたのは茶髪の優男と身長が2mはありそうな怪人。


怪人と表現したのはその見た目のせいだ。


人間とは思えない甲殻に覆われた身体に3対の腕、頭にはカブトムシの様な角、その上目は複眼ときている。


一応ズボンと靴を履いているため辛うじて人間の残滓を感じ取れるがその程度だ。


だが普通の人間ではないのはほかの面々も同様だった。


階段のドアから突入してきた二人に気を取られた好きにフードの女性の輪郭がぼやけ溶けるように背景に同化していく。


透明人間。


面倒なことこの上ないが透明になろうともそこに実態はあるはず、どこにいるかわからなくなる前に捕まえようと手を伸ばす。


腕力自体はそうでもないのはわかっている以上捕まえれば人質として使える。


「させるわけないだろ、そんなことっっ」


優男のこちらに向けて伸ばした手のひらから拳サイズの火の玉が発射される。


それも複数。


慌てて伸ばそうとした手を引っ込めるとその先を確かな熱量を持った火の玉が通過していく。


「オオオオオオオオオオオオ」


階段側に改めて意識を向けた俺に対し甲虫男が雄叫びをあげながら突撃。


一対の腕は自身の腕で受け止めるが残念ながら甲虫男にはまだ4本の腕がある。


残りの腕は俺の体の各所を掴むと人間離れしたその腕力で俺の体を持ち上げ突撃の勢いそのままに壁へ叩きつけてくる。


が、俺の体はそれを余裕をもって耐えてくれる。


本来なら叩きつけられた衝撃で肺から空気押し出され呼吸すら困難になるのかもしれないが、

笑うだけの余裕が俺にはあった。


「ハハハハハハハハ、予想以上のものが出てきたなこれは大当たりだ。」


「ナンダコイツ。」


壁にたたきつけられてなお高笑いしたのが効いたのか一瞬ひるんだ甲虫男に蹴りを入れる。


「ウグゥッ」


腹部への蹴りで力の弱まった相手に対し背後の壁をけって体当たりをかます。


「グゥ八ッ」


一瞬で反対側の壁へ甲虫男を叩きつけると今度は優男へと向きを変える。


甲虫男が崩れ落ちるように倒れるなか優男は再びこちらへと手のひらを向けて火の玉を放つ。


「芸がないなぁ」


流れ弾が味方にあたるのを嫌ったのか一発しか放たれなかったそれを掻い潜ると次発防止のため優男の両手を左腕で払いのけるとがら空きになった胴にボディーブローを叩き込む。


もちろん手加減込みだ。


痛みで蹲った優男を足蹴にしながらさっきの透明女を警戒。


「さっきのに逃げられると厄介だな」


もうすでにこのビルから逃げていたら無意味だが一応ビルの正面側に『INVADER』を何人か召喚する。


一度創造した『INVADER』は一定数であれば亜空間に収納可能で召喚する位置も多少コントロールが効く。


直接創造してもいいのだが、創造したての『INVADER』は動きが鈍いのだ。


とにかくこれを使って物理的に入口を封鎖しようと思ったのだが、呼び出した黒軍服達は入口の物陰でこそこそしている小柄な男を発見。


何をしているのかと思って捕まえさせた途端に背後でジャリッという踏みしめる音。


急いで振り返るもそこには何もいない。


だが、間違いなく誰かが駆け寄る足音がこちらに向かってくる。


「フフフフ、なるほど」


絡繰りが判明してことを鼻で笑うと両手を広げてそれを鷹揚に受け止める。


軽い衝撃に合わせて抱き込むように手を回せば何かを捕まえた手ごたえ。


腹部を貫こうと執拗に刺突を繰り返すそれを押さえつけつつ囁く。


「大人しくした方が身のためだぞ。」


フードの女性が大人しくなって姿が可視化されるまでそう時間はかからなかった。


「それにしても随分とまぁボロボロにしてくれたなー。刺しすぎだろ」


ボロボロになった服を確認する傍ら外にいた男も含め全員を一か所に座らせる。


特に縛ったりはしてないがあの感じであれば『INVADER』で囲ってやれば逃げたりはできないはず。


背後に『INVADER』を並べ威圧感たっぷりに俺は話しを切り出していく。


「それで、急に襲いかかってきてくれちゃったわけだけど、俺に何か言いたいことはないですか?」


「あんた何者よ」


「そういうのが聞きたいわけじゃないんだよなぁ。謝罪求めてんだよ俺は、分かるか?凶暴女」


「はぁ?誰が凶暴女よ」


「お前だよお前、急に銃突きつけて脅したり、人の服がこんなになるまでナイフを突き刺してきたお前のことだよ。レディーとしてもう少しお淑やかに振舞えないのか?」


「ぶっ殺してやる」


そういうとこだよ。


「まぁいい、で俺とまともにお話してくれるのは誰だ?できればリーダー的な立ち位置の奴がいいんだが」


「無視しないで」


「……落ち着けリア。僕が話そう。一応僕がまとめ役のつもりだ。シキ、サイ構わないな?」


「モチロンダ」


快諾する甲虫男とコクコクと首を縦に振る小柄な男。


「じゃあまずはお互い自己紹介から行こうか。俺はコルテス、『INVADERS』のコルテスだ。後ろの連中は俺の部下の『INVADER』ども。よろしく頼むよ優男君」


「僕はリオール、大柄の男はシキ、小柄な方がサイ、フードをかぶった女の子がリアだ。一応もう一人仲間がいて僕らはドクって呼んでる。『INVADERS』って初めて聞くんだけど、えーと……そのどういった集団なのだろうか」


「まぁ最近名乗り始めたばっかりだからな、知らないのは当たり前だ。俺たちのことは新興の悪党とでも思っといてくれ。そんなことよりお前たちのことだ、そっちの甲虫男に凶暴女を見る限りなんとなく予想はできるが、リオールお前の口から説明してもらおう。」


「リオール、こんなやつには何も話さないほうがいいわ。自分から悪党を名乗るやつがまともな訳がないのよ」


「おっとっと、リアちゃーん俺を罵倒してくれるのはいっこうに構わない。俺は心が広いからな。凶暴女のヒステリックも受け止めて見せよう。だが質問に答えてくれないのは困る。命が惜しいならその判断はしないほうがいい。」


「どうせ、話したら殺すつもりなんでしょ。」


その気持ちはわからなくもない。


だからと言って話を遮ったらろくなことにならないと思わないのだろうか。


「先のことを考えるのはいいことだ。だが、思い込みだけで発言するのもよくないぞ。君らには利用価値があるんじゃないかと予想してる。俺は答え合わせをさせて欲しいのさ。予想が正しければ俺はお前らを無下には扱わない。あと、忘れてるのかもしれないから忠告するが俺が話してる相手はリオール君だ。オーケー?」


「だからあんたなんかに」


「リア、ここは僕に任せてくれ」


「むー」


むくれて見せる凶暴女に優男は真剣な表情で訴えかける。


「頼むよリア」


「わ、分かったわよ」


「ありがとう。それじゃあ話の続きをしよう」


「よろしく頼むよ」


ここで皮肉の一つでもいえば面白そうなのだが、そのあと拗れると面倒なので出かかった言葉を飲み込み続きを促す。


「まず僕らについて、君も気が付いてるとは思うけど僕らは怪人化が始まった人間の集まりだ」

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