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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
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22話

例のガスマスク共をフォースレンジャーが取り逃がした。


その一報を聞かされた時、吹き出しかけた怒りを鉄仮面の中へとしまい込む。


「その後の奴らの動向は?」


「少佐殿、……封鎖線を突破したとの報告は入っていません。現在警察と共同で封鎖区画の捜索を進めています」


「敵はレベル4だ。細心の注意を払って事に当たるように」


「はい、それでは失礼いたします。」


報告者が退出すると同時に自らのオフィスの椅子へと腰掛ける。


思わずため息が出てしまうが、今ならだれも見ていない。


部下の前では口に出せなかったが、すり抜けられた可能性を考えてしまえばため息の一つもでるというもの。


無秩序に暴れるタイプではないにしろレベル4の怪人が都市の中で野放しだ。


本来なら緊急事態宣言が必要な事態。


だが、市長をはじめとした行政上層部どころか同盟軍上層部すら研究所の影響下にある状況で正常な判断など望み薄なのは間違いない。


内憂外患


現在この都市は最悪な状況だ。


やはりあの時無理をしてでも証拠を押さえるべきだったのかもしれない。


研究所が違法な人体実験を行っているという証拠。


この都市での怪人発生率の上昇の原因が研究所にあるという証拠。


肝心なタイミングで軍の上層部に邪魔をされ、手持ちの証拠も握りつぶされてしまった。


今では糾弾することさえ叶わない。


違法な人体実験を行っている研究所が政治と軍事に食い込み、外から力のある怪人が都市内へ入り込む。


「クソッ」


沸々と湧き上がる怒りに身を任せ、一度はデスクを殴りつけるがそれで動くのは山積みになった書類だけ。


動かねばならない、事態を解決するためには自分が動くしかないのだ。


まずは外患を取り除く。


今一度怒りを鎮め電話へと手を伸ばす。


私からの電話を予感していたらしい担当者が一回の呼び出し音だけで電話に応じる。


「私だ。進捗を確認させてほしい。」


「はい、少佐殿。『INVADERS』と名乗る怪人の集団について、まず同盟軍のデータベースに該当する組織または個人はありませんでした。」


同盟軍とは情報の共有のために枠組みのこと。


基本的には各都市に所属している防衛のための軍隊だ。


戦力派遣となると揉めることが多いが情報だけは滞りなく共有される。


同盟軍に所属していない都市の軍も一定数いるが、協力関係ぐらいはある。


それを含めても『該当なし』となれば新手の怪人ということになる。


「ガスマスクを着用した怪人だけでしたら類似例は多数あるのですが、複数のレベル4以上で統制のとれる怪人の集団となるとそれだけで稀有なケースです。まず間違ありません。」


危険レベル4となると、一般的な怪人の組織においては幹部や組織の長クラス。


大手と呼ばれるような巨大組織においてもそれなりの上位者だ。


そのクラスになると我が強く単独で活動するものが圧倒的に多い。


集団で行動するのは大手の親衛隊ぐらいだ。


それこそ片手で数えられる程度しかいない上に大抵はマークされていて情報がないなどありえない。


「となれば我々が奴らの第一人者になるという訳か。光栄なことじゃないか。それで分析の成果は?」


「はい、それでは判明している点から、戦闘ヘリの装甲を貫くなど奴らの使う銃火器は既存のものより貫通力が異常に高いことがわかっていますがその弾丸が現場や被弾した戦闘ヘリから発見できませんでした」


「……つまり魔力で生成されていると?」


「魔導解析班の解析待ちではありますがその可能性が非常に高いかと」


魔法、扱えるものが少なく未だ一般には浸透していないがその力はまさに脅威だ。


最近の研究では聖職者共の使う『奇跡』や超能力者が使う『超能力』、一部の武闘家の使う『気』などそのすべての根本が同一のもので構成されていることが証明されている。


軍ではその根源たる力を『魔力』と呼称し科学による究明を続けている。


魔力の扱い方は系統によって違いはあるが基本的に個人の素質と才能によるところが大きく学問として成り立っているのは一握り。


「最悪だな。弾切れの期待もできない上に武器もか…」


「はい、弾だけでなく武器も生成できるかと、さらにフォースレンジャーとの戦闘映像を確認する限りではそれ以上も可能と考えられます」


「…それ以上?どういうことだ?」


「怪人の生成です、少佐殿。連中の内一体がフォースレンジャーの攻撃によって倒されたのですが、その個体は徐々に光の粒子へと変化しその場から消失しています。」


光の粒子への変化、魔力で生成された物質が核を失って崩壊する際によく見られる現象の一つ。


つまりガスマスクの怪人どもが何らかの魔法かスキルで生み出されているということ。


「朗報であり凶報だなそれは……。大方、コルテスと名乗ったあのリーダー格の能力だろうが……」


この手の能力は大元を叩けば他も消える。


だが、それが容易ではないことは今までの経験が教えてくれる。


生み出されてくる怪人がレベル4ともなれば尚更だ。


「あの場で生成しなかったということは何らかの装置に依存してる可能性も…」


「希望的観測過ぎる。現状、上限はわからんがその場で生成できると考えた方がいい。」


「…はい」


「だが、これで統制がとれていた理由がわかる。能力で生み出された群体を操る怪人や能力者は前例がある。」


「個別で戦闘していたことからある程度自律はできるようですが…」


「どの程度か判別するには現状では情報が少なすぎる……か」


「…残念ながら」


「ほかに報告は?」


「以上です少佐殿。細かいデータや戦闘映像は編集したものを後程を送らせていただきます」


「それでは引き続き頼むぞ」


「はい」


受話器を置くと同時に再びため息が出る。


今回の敵は強力だ。


間違いなく苦戦する。


であれば『INVADERS』と名乗る連中の目的を知る必要がある。


今回の件がフォースレンジャーに対する威力偵察だとすれば、おそらくは研究所に用があるのだろうが…。


研究所のデータか所有物の奪取、もしくは研究所自体の破壊か。


どれも推測の域を出ない上に研究所そのものがブラックボックスだ。


何が出るかわからない。


鬼が出るか蛇が出るか、どちらにせよしばらくは静観が必要だろう。

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