20話
ただのコスプレかと思いきや特別製の銃弾を弾いて見せる。
これだけでただの変態の群れじゃないのははっきりとわかる。
どんな種と仕掛けがあるかわからないが、連中は何かしらの力を持っているのは確定的。
「くそっ、この野郎」
「不意打ちなんて卑怯だぞ」
「不意打ちだぁ。お前らは試合開始のゴングがないと戦うこともできないのか?とんだド素人だなぁーおい」
ちなみに自分もそのド素人に含まれることはここでは棚上げしておく。
「敵が卑怯だろうと俺たちは負けない、いくぞみんな」
皮肉が効かないというか、会話が成り立たないことに若干の眩暈がしそうだ。
銃の効果が薄いということで一斉にサーベルを抜くとフォースレンジャーへと斬りかかっていく。
それに対し相手も腰元の銃剣の付いたおもちゃの様な銃を引き抜いて応戦。
俺は赤もといレッドと相対してサーベルを振り下ろすが真面目ちゃんが必死に逸らしたそれをレッドは正面から受け止めて見せたのだ。
格の違いを改めて認識させられるが、
だが鍔迫り合いになったことに驚いたのは自分だけじゃなかった。
「くそっ、こいつら強いぞ」
「……っく」
この時点でどんな相手と今まで戦ってきたか察せるというもの。
とはいえ余裕がないのはこちらも同じ。
押し込もうにも力は同等。
仕切りなおした方がいいんだろうが、どうやって仕切りなおせばいいのだろうか……。
後ろに飛びのくか蹴りでもくらわせればいいのだろうか。
「なんてパワーだ今まで戦ってきた怪人の中では間違いなく一番強いぞ」
まだ一合打ち合っただけなんだがなぁ。
相対するレッドの噛み合わない言葉にイマイチ気持ちが乗らない。
何ともやりずらい。
これなら真面目ちゃんとこの同盟軍とかいうのと戦ってた方がよほど楽しいに違いない。
あっちは弄りがいも嬲りがいもあるのだから素晴らしい。
気分が乗らない鍔迫り合いを続けながらもチラリと見れば、他の連中は剣劇の応酬となっていた。
全体の雰囲気としてみればこちらが押しているとみていいだろう。
接戦になっているのはブルーと俺が相手をしているレッドくらいだ。
「俺たちは負けるわけにはいかない。俺たちがこの都市をこの都市で暮らす人々を守る。」
相変わらず寒いこと抜かす奴だ、そう辟易した時だった。
ギャリギャリと不穏な音をたてながらサーベルが押し返され始めたのだ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお」
しかも雄叫びとともにどんどんと力が増している節さえある。
「どうなってやがるっ」
慌てて距離を取ろうとするがそれをレッドが許さない。
「これでもくらえぇええええ」
距離を詰めて放たれた横からの薙ぎ払いを受け止めようとはするものの、
凄まじい力に踏ん張りすらきかずに一瞬で吹き飛ばされる羽目に。
無様に地面を転がって壁に酷く打ち付けられる始末。
「うぐぅ…ああ、くそ」
鈍い痛みからはスグに開放されたものの状況はどんどんと悪化していく。
ブルーと戦っていた『INVADER』が蹴り飛ばされてスキができたところへおもちゃの様な銃から銃撃をもらったのだ。
しかも、銃口から飛びだしたのは鉛の弾丸でも対怪人用の特殊弾でもなくプラズマが迸るエネルギー弾。
その威力はえげつなく一撃で『INVADER』の胸部に風穴を開けるレベル。
糸が切れた人形のように崩れる『INVADERS』の一人。
彼に割り振った番号は7番。
ラッキーセブンだから長い付き合いになるかもな、なんて思っていたが一番に脱落。
悪党には意外と縁起の悪い数字なのかもしれない。
「流石ブルー、こいつらは強いが俺たちの敵じゃないな」
「……いいから、一気に畳みかけるぞ」
初めて喋ったブルーからは苦労人気質をひしひしと感じるが、今はそれどころではない。
「わかってるって、心配性だなお前は。」
倒れた7番は徐々に光の粒子へと還っていく。
ここまで来たら出し惜しみしてる場合じゃない。
何より一旦逃げないとまずい。
「調子に乗るなよヒーローモドキどもがぁあああああ」
カモフラージュを兼ねて指を鳴らしつつ銀行内で待機してる4体の機関銃持ちに合図を送る。
タイムラグもなく一斉に唸り声をあげたMG42は瞬く間に場を制圧していく。
案の定すぐに伏せたブルー以外は弾かれたように転がっていく。
「「「うぁああああああああ」」」
「きゃああああああああ」
悲鳴が上がる時点で致命的なダメージは期待できないな。
『INVADER』達に招集をかけつつ、マイヤーの手を借りて立ちあがると、ポケットに手を突っ込むふりをしてすぐさまスタングレネードを生成。
『INVADER』達にはスモークグレネードの生成を指示しつつお別れを告げる。
元より今日は威力偵察の様なもの、ある程度相手の実力を見れたのだから引き上げるに限る。
「フォースレンジャーども今日はあいさつ程度だからこの辺でお別れさせてもらおう。」
「逃げる気かッ」
「当たり前だ。準備不足なのがよく分かったからな。それとお前たちみたいな中途半端な連中は必ず殺す、覚えとけッ」
臆病者だ何だと好き放題言い始める連中の相手は早々に諦めてスタングレネードを放り投げて背を向ける。
インチキなレベルのパワーと防御力から不安はあったが強力な閃光と音は無事奴らの行動力を奪ったらしく、ダメ押しの白煙に紛れてその場から逃げ出し路地裏へと消えることに成功した。