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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
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18話

「随分と部下を可愛がってくれたようだな」


駆動鎧(パワードスーツ)から発せられる凛とした声はなかなかで聞きほれてしまいそうだ。


「反応が面白かったのでついつい、次は貴方が遊んでくれるってことでいいんですかね?」


おかげで気分の高揚が声に出てしまう。


「私としてもこの手で部下の借りを返してやりたいところだが、生憎お前の駆除は担当が変わってしまってね。だがよろこべ、お前が待っていた相手だぞ」


「ほほーん、待っていたのは間違いないんですがね、あんまりにも来るのが遅いもんで、実はあなたたちの方が有能で楽しませてくれるんじゃないかと思ってたところなんですよ」


実際来るのが遅すぎるのだ。


警察みたいに3分で飛んで来いとは言わないが、

もう1時間は立つんじゃないかという遅さ。


本当にこの都市を守る気があるのか疑いたくなるレベルだ。


そんな連中より、死ぬ気で食い下がってくる軍人さんたちの方が相手をしていて楽しいのは間違いない。


「それはいい、是非とも上層部の風見鶏どもに説明してやってくれ、もっとも貴様が生きていられればの話だが…」


「私はまだしばらくは死ぬ気はないので大丈夫ですよ。」


「ふん、それは見ものだな。あとで映像記録を見て貴様の無様な姿に笑ってしまわないか心配だよ」


「無様を晒すかは知りませんがね、しぶとさを売りにしようと思ってるのでまぁ大丈夫でしょう。ところでフロイライン、貴方の階級は?」


「…少佐だが?」


最初は名前を聞こうと思ったが、彼女と俺は敵なのだ。


階級で呼ぶくらいが丁度いい、そんな気がしたのだ。


「少佐、ね。それでは少佐殿、足の遅いヒーロー共が来る前に一つ交渉といきませんか?」


少佐というと小太り眼鏡が真っ先に出てきてしまうが、まぁそのうち慣れるだろう。


「…悪いが怪人との交渉など論外だ。」


「貴方にとっても悪い話じゃないと思うんですがね。こちらで抱えている人質の話とか…」


「…要求はなんだ」


「あれぇ、怪人と交渉などしないのでは?」


「…何事においても例外はある。」


苛立っている声もまた棘があってとてもいい。


「お顔を拝見したい。その凛とした声を聴いてからずっと気になってるんでね。」


「……いいだろう」


一瞬間があったが返事自体はあっさりとしたものだった。


ただ、本人は覚悟が決まっているようだが、その部下たちはそういう訳にはいかないようだった。


「少佐殿、危険です。この場で装備を外すなどっ」


「お考え直しください。相手は怪人なのですよ。」


「少佐殿にもしものことがあったらどうするおつもりなのですか」


顔を見せてといっただけなのにひどい慌てよう。


不意打ちでもすると思っているのだろうか?


それは酷い誤解というもの。


真面目ちゃんたちとの戦闘の結果、この人数でも普通に戦えばば負けはないのはわかりきってる。


強者の側に絡め手など必要はない。


「お前たちの言いたい事はわかる。だが、市民と私の命だ。天秤にかけるまでもない。それにこの後来る連中に交渉ができるとも思えん。」


慌てふためく部下たちの制止を振り切りこちらに向き直る少佐。


「人質の確認をさせてくれ、顔を見せるのはそれからだ」


「もちろんですとも、誘導に人もいるでしょうから部下の方もついて来ていいですよ」


ついて来いと言わんばかりに歩き出す自分に対して、

少佐殿はズタボロの真面目ちゃんたちの搬送の指示を出すと部下を6人連れてついてくる。


反対側のにらみ合いも少佐の指示によって解消され、こちらと同様に引き上げが始まっていく。


移動といっても銀行自体は目の前、さしたる時間もかからない。


その上、立て籠もっていてもブラインドの一つもおろしていないので、外までくれば中の様子はよく見える。


銀行内部では数十人の人質たちは一所に集められ、それを見張るようにガスマスクが突っ立っている。


特に怪我をしているものもいないためか、少佐殿からは安心のため息が漏れでてくる。


「…これで全員か?」


「くまなく探したんで全員でしょう。心配ならそちらで探しますか?」


「そうだな。…裏手でにらみ合いをしてる連中を入れてやってくれ。彼らに確認をさせる。」


「構いませんとも。では、そろそろ拝見させていただいてもよろしいですかね?」


「…待て、ほかに人質がいないのを確認してからだ。」


慎重なことだ。


こちらとしてはこだわる点もないし、いくら妥協しても構わない。


なんならここでの妥協は交渉できるということをアピールするにはちょうどいいだろう


出番があるかは知らないが、先は見えない以上選択肢は多い方がいい。


少佐の指示に呼応して裏手から入った連中は訓練されているだけあって非常に手際がよく、

あっという間に銀行内部を確認し終えてしまう。


「…確認はとれた。こちらも約束を果たすとしよう。」


人質への通達を部下に任せて俺と向き合う少佐殿は、ようやくそのヘルメットに手をかける。


プシューという気の抜ける音と共に、ヘルメットを外した少佐殿ははっきり言ってとても美人だった。


黒髪のショートヘアに気の強そうな碧い目、鼻立ちの整った顔に口元のほくろとくれば役満もいいところだ。


「思わず見惚れてしまいました。どうですか?今度デートでも」


「レディをデートに誘うなら貴様も顔を見せたらどうだ?」


もっともな言い分、もっと素っ気なく断られるかと思ったが意外な反応。


とはいえ、顔を変えたりできない以上、素顔をここで晒すのはまずい。


流石に今後動きにくくなるのは勘弁だ。


「そいつは手厳しい、表にいるときはこれをトレードマークにしようと思っていまして、プライベートなら外しても構わないんですがね。」


「ふん、まあいい。このまま人質は全員連れて行っていいんだな?」


デートはまた日を改めて誘うとしよう。


場を整えれば一回くらいは実現できるかもしれない。


「ええ、少佐殿に免じて全員連れて行っても構いません。邪魔もしませんとも」


少佐の部下たちに外へと連れ出され、いつの間にか待機している護送車へと乗り込んでいく人質たち。


どの顔もやっと危機的状況から解放されると安堵の表情を浮かべている。


その最後の一人が乗り込んだところで、少佐が改めてこちらに向き直る。


「躊躇いもなく人質を全員解放するとは貴様は変わった怪人だ。名前を聞かせてもらおうか」


そういえば名乗ってなかったな。


まぁ名乗る気もなかったんだが、この少佐にならいいかもしれない。


だがどう名乗ったものか、

博士からもらったコルテスという名前もあるが、

それだけじゃインパクトに欠ける。


それに、俺は一人じゃないのだ。


ガスマスクをつけた可愛い手下がいる。


いい加減こいつらもガスマスクやら手下と呼ぶのもあれだろう。


集団としての名前を考えようと思ったのだが、早々に一つの壁にぶち当たった。


統一性のなさだ。


名前はコルテスという名前を博士からもらった系統としてはスペインだ。


だが、俺を含め能力で出てくるのはナチスの様な連中、この時点で噛み合っていない。


少し捻るためにも時間が欲しいが、隣の少佐は訝しそうにこちらを見ている。


この視線に長時間は耐えられない。


美人はあまり待たせたくないのは男としての性だ。


この際だ、捻った名前や統一感はあきらめよう、むしろごちゃごちゃにしてしまえばいい。


あとは勢いで話してしまえばいい。


文句を言おうとしたであろう少佐を制止して、思いつくままに名乗りを上げる。


「俺たちは『INVADERS』配下は『INVADER』とでも呼んでやってくれ。そして俺の名前はコルテス、『INVADERS』のコルテスだ。」



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