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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
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17話

濃密な殺気とでもいうのだろうか…。


その前も十分な気迫はあったのだが、

今度は完全に吹っ切れたというべきか。


損傷し怪我をしたはずの左足で地面を踏みしめての仁王立ち。


背筋がゾクゾクするこの感じは今の俺には心地がいい。


幽鬼とかした真面目ちゃんから繰り出されるのは先ほどと同じ上段からの振り下ろし。


けれど威力は段違い。


受け止めること自体は問題ないのだが、足元のコンクリートが軋みをあげる。


押し返すにしても今度は多少の抵抗感を感じる。


何処からこんな力が出るのやら。


中身は普通の人間だと思ってが、案外改造でも受けているのかもしれないな。


それとも火事場の馬鹿力とでも言いうのだろうか?


「やればできるじゃないか」


「………」


いじり甲斐がなくなってしまったのは少し残念だが、戦闘力とトレードオフなら仕方ないだろう。


もう少し反応を見てやろうと今度はこちらから切りかかる。


先ほどは見事に受け流していたが、頭に血が上っていそうな今果たして同じことができるだろうか。


無造作にサーベルを振り下ろすのはこれも先ほどと同じだが、

今度は真面目ちゃんの反応が大きく違った。


左腕を頭の上に掲げながら踏み込んでの横なぎに振りぬこうとしてくる。


慌てて相手の右手を空いている左手で柄ごと抑え込むことで胴体を分割されることを阻止。


右手は進路を変えサーベルの柄頭で掲げた左手ごと真面目ちゃんの頭部を殴打。


怪人の馬鹿力で殴られた相手は当然顔から地面へとたたきつけられる。


相打ち覚悟とはあっぱれだが、びっくりして力加減ができなかった。


衝撃でひび割れたコンクリート、フレームが無残に変形した左腕と凹んだ頭部を見ればこれは死んだと推察するには十分だ。


だが、彼は動いた。


もはやゾンビといってもいいだろう緩慢な動きで立ち上がる。


ふらふら揺れる不安定な身体にだらりと垂れ下がった左腕、

それらに反するように顔はこちらだけを向き武器を握る右手には力が宿りぶれもない。


「ハハハハハハハハハハ」


これには思わず笑いが噴き出してしまうのも仕方がない。


ボロボロになっても立ち上がる。


肉体の限界を誰かを守りたいという信念と不屈の精神で超えてくる。


まさしくヒーローと呼ばれる類の人間だ。


だが、だからこそ面白い。


ヒーローを大した信念も、不屈の闘志もない、ただただ力を持っただけのこの俺が足蹴にしている。


なかなかの皮肉だろう。


結局力がなければ何も成しえないのだ。


正義も悪も力があってこそ。


どう見ても弱肉強食なこの新しい世界であればなおさらだ。


では、空っぽな自分は何をなすのだろうか?


………思いつかない。


人間だった頃から自身の未来を考えるのは苦手だったが、

怪人になっても簡単には変わらないらしい。


であれば、今を楽しむしかないだろう。


遠くから近づいてくるヘリのプロペラ音を聞けばまだまだ楽しませてくれるのは間違いない。


それに、目の前の男だってまだ倒れていないのだ。


ふらつく足取りも攻撃の刹那だけは機敏さを取り戻し、

こちらの命を刈り取ろうと高周波ブレードを突き出してくる。


決死の攻撃をひらりと躱すと腕をつかんで投げ飛ばす。


糸の切れた人形のような転がり方をしても、止まればブレードを突き立て立ち上がる。


どこまで持つのか試したいところではあるが、どんな遊びにも制限時間というのがあるものだ。


「そこまでにしてもらおうか」


凛々しい女性の声につられて空を見上げれば、

上空を通過中のヘリが複数の駆動鎧(パワードスーツ)を吐き出すところだった。


駆動鎧(パワードスーツ)が降下する姿は先ほどの真面目ちゃんたちでも見たが、

今度は抱えた重機関銃を降下中というどう見ても不安定な状態でぶっ放してくる。


その意図は明白でボロボロな真面目ちゃんその部下から距離を取らせたいらしい。


掻い潜ってもよかったのだが、先ほどの凛々しい女性の声が気になる自分としては仕切りなおすのも悪くはない。


どうやら反対側の交戦地点でも割って入られたらしいので、しばらくは攻撃を中断させる指示を送る。


マイヤーともう一体のガスマスクも自分後ろへと下がると、

ふらふらと未だに立ち上がろうとする真面目ちゃんとの間に7体の駆動鎧(パワードスーツ)が降り立つ。


先頭は他と指揮官用を思しき少し意匠の違う駆動鎧(パワードスーツ)しかもそれが先ほどの凛々しい声の女性らしい。



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