15話
MG42
実物では分間1200発、秒間だと20発とかいう猛烈な発射速度を誇り、
発砲音はで一発一発を認識できず『ヴォオオオオオオ』とかいう独特な音を轟かせる。
ミリタリーを少しでもかじってる人間には堪らない一品。
最初は記憶を頼りに生成されているであろうこのまがい物がどこまで再現されているか心配ではあったが、
試し打ちをしたところ一瞬でそんなのは杞憂だとわかった。
計測なんてできないのでこのコピー品が実際どれだけの発射速度が出ているのかさっぱりわからないが、
自身の記憶の中にある発砲音と変わらない感じがするのでほぼ同じ発射速度………のはずだ。
薙ぎ払うように掃射されたそれは一瞬照準があっただけで数発の弾丸をヘリコプターのエンジン部へと叩き込んだ。
戦闘ヘリの装甲は機関銃で撃ち抜けるような代物ではないのだが、
魔力で生成された特別製の弾丸は戦闘ヘリの装甲に容易く穴をこじ開け装甲で守られたエンジンを食い破る。
瞬く間に片側のエンジンから煙が噴き出すのだが、流石に戦闘ヘリ。
一瞬よろめいて見せただけで片方のエンジンで飛行を維持し、
煙で尾を引きながらそのまま引き上げていく。
「はぁあああ、流石軍用。丈夫にできてるなぁ、感動する。あんたもそう思うだろ?」
「………」
頼みの綱と思われる戦闘ヘリが簡単に追い返されれれば黙ってしまうのも仕方がない。
だが、それでは困るのだ。
してやられたままでは終われない。
すこしはこちらにもいい思いをさせてくれないとつまらない。
「フフフ、なんだお友達が帰って寂しくなったか?だがこっちはまだ遊び足りないんだ、相手をしてくれなきゃ困る」
機関砲に撃たれた拍子に落としたサーベルを拾い上げ、
空いた手で手招きをする。
が、やはり反応が悪い。
身構えこそするものの動き出す気配はなく、
どうすればいいのか必死に考えているのかもしれない。
「あんたが本命が来るまでの暇つぶしに付き合ってくれないというなら他を当たるだけだ。あては少ないがないわけじゃない」
踵を返し銀行へと向きを変える。
それだけで真面目ちゃんの反応は劇的だった。
「…待て。それだけはそれだけは許容できない。」
固まっていた先ほどは違い前へと力強く一歩踏み出してくる。
素顔はバイザーで見えないがきっと血相を変えた顔があるに違いない。
先ほどまでの悩み事は何処へやら。
勝てる見込みはなくても守るべき市民のために悪党の前に立ちふさがる軍人。
その姿はまさしくヒーローと言える。
相手にとって不足なし、こちらも滾ってくるというものだ。
「じゃあどうする?勝てる見込みはないんだろう?何よりお前の部下はこれ以上持たないかもしれないぞ」
ヘリの攻撃で中断されたがその前は一方的だったのだ。
マイヤー達の気を引くために距離を詰めてからの反転。
その後は引き撃ちに専念して距離を取ろうとしていたが、
悲しいかなスペックの差に押され攻撃はまばらになり逃げるのに精一杯という感じだった。
「部下には悪いが我々は軍人だ。覚悟を決めてもらう。」
「あらら、容赦ないなぁ。でもまぁ、そういうことなら少し遊んでもらおう。」
自分から誘っておいてもったいぶった言い回しをしてみる。
間違いなく愉悦で顔は歪んでいるだろうが、
ありがたいことにガスマスクが覆い隠してくれる。
「先手は譲ろう」
ご自由にどうぞと言わんばかりに両手を広げてアピール。
少しでも躊躇ったりすれば煽ろうかと思ったのだが、
真面目ちゃんの覚悟は本物らしく返事もなしに突撃。
対する俺は余裕をもって迎え撃つ。
そしてワクワクドキドキが止まらない第2回戦が始まった。