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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
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10話

戦闘ヘリコプターに先導される形で

タンデムローターの大型輸送ヘリコプター2機が市街地上空を駆け抜けていく。


輸送ヘリ2機の内の1機の機内では怪人に対抗するための駆動鎧(パワードスーツ)に身を包んだ3人の男が最後のブリーディングを行なっていた。


「状況を整理する。対象は11体。推定危険レベル3。全員がガスマスクを装備し10体は黒軍服、リーダーと思しき個体のみジーパンにフード付きジャンパーを着用。基本装備は拳銃とサーベル、加えて機関銃を持っている個体が4体確認されている。しかし、いずれも現在に至るまで使用は確認されておらず、威力は不明。解析は実戦待ちだが情報部が言うには国家が分裂する前の時代、その初期の世界大戦で使用されていたものに似ているらしい。ナチスとの関連を疑っていたようだったが、今のナチスにそんな懐古思想はないと少佐殿に一蹴されていたよ」


「…少佐殿は同盟のナチス狩りで昇格しましたからね。一家言あってもおかしくないですよ」


「不運な情報部の話は後で聞きます。そんなことより本当に住民の避難は終わってるんですか。」


「ああ、警察からは周辺の避難完了の通知が来ている。警察も撤収中、残っているのは銀行内部の人質だけだそうだ」


「警察の手際は相変わらずで安心しますが、ヒーロー様達はどうしたんです。市街地ならいつも割り込んでくるじゃないですか。」


軍の怪人退治は威力の高い火器を使用するため、

市街地においては戦闘による二次被害が拡大しやすく、

そこを研究所に突かれて市街地では役目を奪われることも多く、

それを理由に予算まで奪われている。


当然軍人の多くは今まで都市を守ってきた自負と誇りがあるため最近その役目を奪っていく研究所のことをよく思わないものも多い。


「今回は重要な試験をしているため出動が遅れるとだけ連絡がきたそうだが…」


「重要な試験だぁ、それで遅れるんなら普段から出張ってくるなって話ですよ全く。」


「これを機に奴らを抑え込んだ方がいいです」


案の定ヒートアップしそうになる部下を小隊長である大尉はなだめにかかる。


「まぁ落ち着け、お前らの気持ちも分かるがまずは目の前の怪人どもだ。俺たちがいい仕事をすれば少佐殿や上層部が上手くやってくれる。」


「…はい」


「わかりました」


部下である少尉二人は返事はしたが研究所に対する問題は根が深く、

後日またケアが必要な状態であることを認識すると、

今度はどうやってガス抜きをしたものかと内心ため息をつく。


この手の問題は放置することはできない。


戦闘とは訓練を受けた人間でも過度なストレスがかかるのだ。


それをフラストレーションを抱えたまま行えばどんな事態を引き起こすかわかったものではない。


以前は部下のガス抜きを手伝ってくれる部下、

彼らにとっての先任少尉が小隊内にいたのだが、

研究所関連の案件で引き抜かれたうえに今では安易に連絡を取ることもできない。


上司である自分より彼のほうが立場的にも上手くやってくれていたのだが、

居ないものは頼ることはできないのだ。


「よし、それでは作戦を説明する。俺たち第一小隊は対象の銀行100m手前に降下。第2小隊は銀行を挟んで反対側。降下次第俺たちで先行し降伏勧告を行い、敵が応じなければそのまま戦闘に入る。戦闘では第二小隊と敵を挟撃する形をとりそのサポートを戦闘ヘリ・アパッチが行うが銀行内に人質がいるためサポートは最小限になる。また、俺たちが戦闘に入った場合、コマンドチーム『アルファ』『ブラボー』『チャーリー』による人質救出作戦が行われる。なお各チームは既に銀行裏口付近の建物にて待機中。戦闘時は二人がバトルライフルを装備して前衛、俺がキャリバーとランチャーで後衛。人質救出まではランチャーは使わないから注意しろ。人質救出が成功した時点でランチャーおよびアパッチの兵装をもって敵を殲滅する、以上だ。」


「隊長、一つよろしいですか?」


「なんだ?」


「何故降伏勧告をするんです?怪人どもは既に警察の降伏勧告を無視しているんですよね」


「確かにそうだ、だが今回出た怪人どもは目的が未だに不明だ。銀行を襲撃しておきながら撤収する気配がない。そのうえ警察相手に手を抜いて戦っている。少佐殿は『まるで何かを待っているようだ』とおっしゃっていた。故に降伏勧告と同時に相手の目的を聞き出せないかというのが上層部の考えだ。負担は増えるが大事な任務だ」


「わかりました」


「それでは最終点検に…ん?少佐殿いかがなされましたか」


最終点検を命じようとした大尉だったが、

通信が入りその手を止める。


「………わかりました。そのように」


「隊長、少佐殿からですか?」


「ああ、たった今対象の危険レベルが4にあげられた。それどころか、レベル5の可能性すらあるそうだ」


「な、何があったっていうんです。」


「警察が撤退前に敵リーダー個体に狙撃を敢行。高原工業の狙撃銃M3000とレベル3も殺害可能な.338ガグンラーズマグナムの組み合わせだ。それを対象の額、ガスマスクのレンズ、胸部、そして首に叩き込んだが、対象は無傷でピンピンしている上にキレて暴れだしたりもせず余裕の態度だったそうだ。」


怪人の危険レベルにおいて警察の装備品である拳銃やサブマシンガンなどで運用する9mmの拳銃弾が通用するかどうかはレベル2とレベル3の境目になることが多い。


必然的に警察ではレベル3以上の怪人の相手は軍に任せることが多いのだが、

決して対抗できないわけではなく、

数ある対抗手段の中でも切り札とのなるのが狙撃銃と強力な対怪人用弾薬の組み合わせである。


それでも殺害が厳しい怪人は多いのだが、

全くの無傷となってくると軍でもてこずる場合が出てくるのだ。


兵士が対怪人にて用いるバトルライフルは警察の切り札よりは弱装であり、

この時点でコマンドチームの作戦が難航することは容易に想像できる。


「だ、大丈夫なんですか隊長」


「安心しろ現在少佐殿が援軍の編成を行っている。救出作戦も含めて作戦の中止はない。だが、装備は変更だ。バトルライフルはキャリバーに持ち替えろ。牽制すらできないんじゃもっていっても仕方ない。」


「…はい」


「お前らはレベル4は初めてだったな、心配するなお前たちの実力なら訓練通りにやれば問題はない。」


隊長の大尉にしてもレベル4相手となると片手で数えられるほどしか経験はなく、

そのどれもが激戦だったのだ。


しかし、過度な不安は敵を大きくしすぎてしまう。


「お前たち、この都市を守っているのは誰なのか怪人どもに嫌というほど教育してやれ」


部下をそして自分自身を鼓舞して不安を振り払うのだった。




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