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INVADERS  作者: 心人
幻想と現実の狭間で
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9話

油断


確かに油断していた。


マイヤー達がいいように警官隊をあしらっていて気が大きくなっていたのもある。


だが一番大きな要因としては警官隊の謎の奮闘だろう。


勝てないとわかっているはずなのに挑み続ける彼らに見入ってしまっていたのだ。


当たらない攻撃を何とか当てようと先端にスタンガン機能のある警杖で槍衾のような隊列を組み始めたときは流石に吹いてしまったが、

同時に興味をそそられることでもあった。


何が彼らをそこまで駆り立てるのか。


だが、終わったら調べてみるかなんて悠長に考えていたのは流石に呑気過ぎたのだ。


俺は映画館で4DXでも見ている気分だったが、

ここは戦場。


ましてガラス1枚挟んで向こう側ではマイヤーと警官隊が乱闘の真っ最中とくれば、

こんなところでくつろいでいるのはバカで、

その代償はすぐに支払われることになった。


頭に強い衝撃が走る。


突然のことで驚きはしたものの、

意外と頭は冷静に働いていた。


正面から強い衝撃を受けた頭に引っ張られる形で、

ソファーごとひっくり返りながらもその原因をつくった狙撃手が向かいの少し奥にある背の高い建物にいることは認識出来ていたし、

なんならスポッターとセットのそれがもう2セットいてこの後追撃がきそうなことまで分かっていた。


ガスマスクの額に弾かれたとみるや、

ガスマスクの左側のレンズと左胸部にすぐさま次弾が飛んできて、

最後は首にまで一撃を貰ってしまった。


肉体の強化がなかったら即死どころかオーバーキル。


しかも最後の一発は喉を直撃し、

貫通はされなかったが物理的に一時気管を塞がれたせいで、

動揺で心臓がバックンバックンである。


だが、ここで慌てふためくわけにはいかないのだ。


なにせ余裕ぶっこいて高みの見物をしていたのに狙撃されて慌てるなんて格好悪い。


格好悪すぎる。


さらにこれはデビュー戦なのだ。


今後悪党として活動を続けていけば参考資料として今回の戦闘映像が出回るのは間違いない。


その時に醜態を晒した映像が流れるなんて考えるだけで最悪だ。


だがまだ挽回できる。


実際身体はピンピンしているのだ。


ここからの行動を間違えなければ、

最悪の事態だけは避けられるはずだ。


今にも飛び出しそうな心臓と精神の動揺につられて震えそうになる身体を細心の注意で押さえつけて、

ひっくり返ったこの状態から行動を開始する。


ゆっくりとそれでいてそんな攻撃じゃ意味ありませんよみたいな雰囲気が出るように、

イメージは………、

そうターミネーターだ。


あの感じが出せれば与える印象としてはマイナスどころかむしろプラスじゃないだろうか。


我ながら名案かもしれない。


とはいえ、身体の構造的(主に関節)に不可能な動きは出来ないので、

不気味な印象を与えるような機械的な動きをイメージしながら身体を起こしていく。


こんなに緊張するのはいつ以来だろうか。


社会人になってからは緊張しないわけじゃなかったが、

上司や客先に言いたい文句が多すぎて、

内心キレて怒ってる状態か一周回ってナイーブになってることがほとんどで、

純粋に緊張するなんてなかなかなかった。


そう思えば、

こんな事態も楽しめる。


そして俺は無事に任務を完遂し、

どうだと言わんばかりに狙撃手の方を見ることができたのだ。


改造により強化された視力をもって、

狙撃手達の顔色を伺うと、

そこには驚愕した顔、恐怖に青ざめた顔、悔しさが滲む顔がならんでおり、

演技の成功を確信させてくれる。


動揺が治り一安心した自分とは反対に今度は彼らが慌てて引き上げていくのをほくそ笑みながら見送るのだった。





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