表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/49

β42 ジーンアブダクション再び★まーまの夢

□第四十二章□

□ジーンアブダクション再び★まーまの夢□


   1


「聖と魔の話をしよう」

 美舞が、切り出した。


 玲は、むくちゃんを抱いたまま聞き始めた。休まる様に、とんとんとしていた。


 美舞が言葉を放った。

「X染色体のみに乗る聖の力を持つ人類、つまり、マリア母さんみたいに、左手に、痣として、五芒星が表れるのが、稀にある。そして、これも稀だけど、Y染色体のみに乗る魔の力を持つ人類、つまり、ウルフ父さんみたいに、右手に、痣として、逆五芒星が表れるのが、まあ、普通なんだ」

 美舞にとっては、普通であった。

 玲は、美舞の事を否定する気はさらさらなかった。


「しかし、マリアとウルフの二人の結婚により、僕には、一つのX染色体に聖の力をもう一つのX染色体に魔の力を持つ事になったのは、知っているよね」

 勿論であった。

 知ってしまった以上、何もかも墓場迄持って行く覚悟で連れ添っていた。


「ジーンアブダクション、遺伝子の革命的拉致が突然変異を起こしたんだ。Y染色体にね」

 漏らさずに聞いていた。

「Y染色体の遺伝子が、神の力で組み換え遺伝子の様になってしまった。僕の場合、ウルフのY染色体に乗っていた、魔の力が、遺伝子の革命的拉致により、わざわざ乗せられ、逆五芒星が表れたと思うよ」

 美舞も美舞なりに考えていたのだと、玲に良く伝わった。


「むくちゃんは、女の子だと思うかい?」

 突然の質問を美舞がした。

 この頃は、武道の話よりも、妊婦向け雑誌『えがおのたまご』などを読み出し、そうした話がかなり増えていた。

 思考も少し変わって、落ち着きも出て来ていた。


「おむつの時、普通に見ていたよ」

 ぱーぱだから、がんばっていた。


「むくちゃんは、処女懐胎なんだ」

 まーまの口から言うとは、驚きであった。


「ばかを言うなよ、あり得ないだろう?」

 玲の率直な疑問。


「僕もそう思っていたよ」

 美舞は、続けた。

「子孫のこれ以上の繁栄の危機感を示そうとしたらしい」


「誰が?」

 玲は、かなりばかばかしく思えて、しらけた。


「神が」

 この世界に疑問を持たない美舞は、言い放った。


「ああ、“吾”か。あれな。神のガガガガガガガーン!」

 玲も関わりがあった。


「何故、むくちゃんが……。キリスト? そんな話もあったな。キリストならば、うーん、マリア様が自己増殖して、X染色体に聖の力、Y染色体にも組み換えて聖の力を持たせたとかか?」

 玲の推理は今では証明出来ない。


「イエス・キリストが磔にされて亡くなった後にその遺体をくるんだ、真の聖骸布でもあれば、DNA解析ができるが、ないだろう? 難しいな」

 玲も頭を捻った。


「美舞は、聖母マリアではないから、心配しないでな」

 はっきりと知っていたから、言えた。


「僕は、不貞はないよ! 言って置くけど」

 なんか、おかんむりになった美舞に手を焼く玲。

「まあ、まあ……。信じているし、ずっと二人で見守って来たお腹の赤ちゃんじゃないか、なあ、むくちゃん」

 むくちゃんの顔を覗き込み、ゆらゆらさせて、玲は、ひょっとこの顔をして、小さく笑った。

「まだ、笑わないか……」


   2


「美舞は、お産の後、アレになった様だね?」

 一応、確認した。


「知っていたの?」

 我慢して隠さなくても良かったのかと、今更に、思えた。

「夫ですから。当然」

 にやり。

 流し目をした。


「再び、両手に痣が出来て、辛かったのだろう? 様子がおかしいまま、家出されて、そりゃあ、心配したさ。その後、新興宗教みたいにアレとしてこの城におさまっていたし、助けに行かないとならないって思ったよ」

 だから、こうして、来たのであった。


「実は、むくちゃんの飛翔術で、天守閣から、入ったのだよ。しかし、俺は失敗して落下。むくちゃんは、アレに痛い思いをさせられているのかと思ったよ。どうなっていたんだい?」

 訊きたかった事だ。

 二人にどんな秘密があったのか、訊きたかった。


「驚かないでね」

 美舞が少し俯いて、目だけちろりと、玲を見上げた。

「今更、何を?」

 沢山、驚きがあったので、今更、何もかも大丈夫であった。

 

   3


「これから、話すのは、僕の夢だ。多分、夢なんだ」

 話すのに、迷いや後ろめたさのある美舞であった。

「まーまのむくちゃんとの夢か……」

 玲は、むくちゃんを優しくとんとんしながら抱いたまま聞き始めた。

「そうなるね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ