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β20 ジーンアブダクション☆神のカルマ

□第二十章□

□ジーンアブダクション☆神のカルマ□


   1


『吾は神なり』


 ガガガガガガガーン!


 プラズマが天空を割き、雷鳴が轟いた。


 美舞は美舞でなくなっているのが、玲にも見て取れた。

 オベリスクの様に尊威を持って(そび)え立っていた。


『吾は神なり』

 再び美舞に何か憑依したのが、玲にはゾクリとして感じ取れた。

 玲は口が利けなくなっていた。

 金縛りにあった。


『吾は、ジーンアブタクションを起こした』

 “吾”なるものが語り出した。


『その語り部となり給え』

 玲に語っているのか、内なる美舞に語っているのか、玲には分からなかった。


『人類は、二十三対、四十六本の染色体を持つ。その内、四十四本の常染色体の他に二本の性染色体があり、それらは性決定権を持つ。X染色体を二つ持つものは女性となり、Y染色体を持つものは男性となる』

 それは玲でも知っている事であった。


『女性のX染色体にのみ宿る聖の力を持つ人類は、左手に痣として五芒星が表れる。男性のY染色体にのみ宿る魔の力を持つ人類は、右手に痣として逆五芒星が表れる』

 その言葉で、マリアの左手に五芒星の痣があり、ウルフの右手に逆五芒星の痣がある事が確証された。


『吾は、その聖なる人類と魔なる人類との純血種であり、吾の二十三番目の染色体には、一つのX染色体に聖の力のDNA配列が並び、もう一つのX染色体には魔の力のDNA配列が並ぶ』

 美舞の事ではないかと玲は思った。


『Y染色体は、X染色体から生まれた。今そのY染色体の退化が進んでいる。現在から遅くとも約六百万年後には途絶えるであろう』

 “吾”の意外な未来予想図に玲は衝撃を隠せなかった。


『それはジーンアブダクションによるものである』

 “吾”は言い放った。


『ジーンアブダクションとは、吾が起こした遺伝子の革命的拉致である。つまり人類の言う所の突然変異である』

 玲にとっても勿論、突然変異を神である“吾”が行ったとは驚きであった。


   2


『人類の学者によれば、Y染色体は子孫に単純にコピーされ変化をせずに遺伝をするので、祖先を辿り易い。その結果分かった事は、染色体が傷付き易く修復も殆ど不可能である。そして矮化(わいか)して行った事である』

 “吾”は、まだ述べた。


『人類は知らないが、その矮化を起こしたのは“吾”である』

 要は、突然変異は主にY染色体に行われていたのであった。


『つまり、簡単に言わば(アデニン)(チミン)(グアニン)(シトシン)の塩基配列を変えたのである』

 “吾”、つまりは美舞が嘲笑した。


『取るに足らない人類に与えた“吾”の制裁である。奢り高ぶっていたからである』

 一体人類の何が気に入らなかったのであろうかが、玲にも分からなかった。


『処女懐胎がなされなければ、子孫はこれ以上繁栄されないであろう。“吾ら”の子孫のキリストの生誕はマリアの不貞ではなく、処女懐胎の可能性を示唆したものである』

 又もや、実験的な事件を起こしていたのかと玲は憤った。


『しかし、男性がいなければ、恐竜の時代にシステムが出来上がった哺乳類によって子孫を産むのに必要な胎盤ができないので、処女懐胎等人類ではあり得ない。それが、現状である』

 至極の事であった。


『Y染色体が退化すると言う事は、逆五芒星の魔の力が衰えている事になる』

 成る程と玲も思った。


『女性のX染色体にのみ宿る聖の力を持つ左手に痣として五芒星が表れる人類。男性のY染色体にのみ宿る魔の力を右手に痣として逆五芒星が表れる人類。そのバランスが崩れて来た』

 玲は、はっとした。


『三浦美舞の力を利用するには、そのバランスの崩れた力の暴走を利用すればいいのを“吾”は知っている』

 玲の危惧がそうではなくなって来た。


『そう、お前の右手の事も知っている』

 心の臓を突かれた。


『聖・魔の暴走が間もなく起こる。人類も力を合わせる時が来た』

 闘えと“吾”こと“神”は宣うのかと玲は問いたかった。


『その時が』


 そう語ると美舞はばたりと寝込んだ。

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