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β14 優勝談義☆僕に決まっている

□第十四章□

□優勝談義☆僕に決まっている□


   1


 昨日があまりにも色々な事があり過ぎて二人は忘れていたが、今日は歓迎大会の続きがある。

 美舞も玲も勿論出場する事になっている。

 注目すべきは、やはり混合の部で美舞と玲の外に一年生が五人、二・三年生が九人の十六人で準々決勝が行われる。

 偶然、一年生同士が当たらない様になっていた。

 会場で美舞たち三人は一年生について話していた。


「ねえ、玲君。一年生で一番強いのは誰かな?」

 日菜子は聞いた。


「そうですね。先ずは月代夕矢君ですが、彼は攻めよりも守りに重点を置いた闘い方を好むようです。体が小柄でもスピードが無い彼にはそれが一番だったんでしょうが、決定打に欠けます」

 玲は続けた。


「次は火野光輝君。彼はどうやらボクシングを習っているようですね。蹴りは使えません。それでもパンチ力とスピードは光るものがあります」

 次々と語り出した。


「次は水城猛威君ですが、彼は火野君とは逆に拳撃が駄目です。その代わり蹴りが凄いです。自在の蹴りと言っても良い」

 分析力はかなりある。


「次は木田洋次君ですが、彼は空手家としては二流だと思いますが、何故か残っています。格闘センスは悪くないです」

 実は彼の事は好きではない。

 でもきちんと誉めるべき所は誉めるのが玲である。


「最後に金山柔一君ですが、彼は柔道家ですね。あの足捌きは空手家のものではありません。パンチも蹴りも遅いですが重さはあります。後、捌くのが巧いので長期戦に向いている様です」

 かなり語り尽くしたが物足りなさそうな玲が少し可愛いと美舞は思った。


   2


 玲が説明するのを日菜子は頷きながら聞き、その横で美舞が何かを考えている。


「あともう一人、女子部ですが日下部涼夏さんもいいですね」

 突然女子の名が挙がった。

「どういう事?」

 美舞がさらっと訊いた。


「彼女は女性にしては大柄ですが、動きに無駄が無く華麗です。攻撃が素早く重い、守ってもミリ単位で躱す。彼女は格闘家になる為に生まれて来たかの様ですね」

 べた褒めである。玲にしては珍しい。

 日菜子はそんな玲を見て、悪戯な笑みを浮かべた。

「美舞の前でそんな事を言っていいの? やきもち妬くわよ」


「僕もそう思う」

 美舞はさらっと言った。

 見た目は平静であるが、内心は他人には分からない。

「あの子は、女子部を任せて行ける逸材だね。これで僕は男子部で気兼ねなくできる」


「……」

 玲は美舞を見て不思議な感じになった。

 美舞の強さに対する真摯な気持ちはどこから来るのだろうか。

 両親の教育の賜物なのか、それとも血のなせる業なのか。

 そのどちらにしても美舞にとって棘の道になるだろう。

 その事を考えると玲はずっと美舞の側で見守って行こうと思うのであった。


   3


「それで、優勝するのは誰かな?」

 再び日菜子は訊いた。

「それは勿論……」


「僕に決まっている」

「俺に決まっている」

 美舞と玲はハモった。

 素晴らしいハーモニーに日菜子はグッと来た。


「何言ってるの。昨日、僕に負けただろう」

 雛鳥みたいに口をぱくぱくして言った。

 子供っぽいのは母親譲りであった。

「今日は負けないさ」

 負けじ心はお互い様の玲。

 而して挑発の始まりであった。


「それはこっちのセリフだよ」

 雛鳥ちゃんは続けた。

「よし、じゃあこうしよう。もし、俺が勝ったら俺の言う事を一つ聞いてください」

 玲はちょっと軽く言ってみせた。


「……いいよ。変な事じゃなければね」

 少しぶすりとして美舞が返答した。

「よーし、頑張るぞ」

 玲は不気味な笑みを浮かべながら闘技場に向かった。

 それを見送りながら日菜子は呆れた顔を美舞に向け、囁いた。


「大丈夫なの?」

「何が?」

 美舞は大切な時に限って素っ頓狂である。


「勝てるのかという事もそうだけど、あんな約束してしまって」

 日菜子は少し大人っぽい考えで制していた。

「大丈夫でしょう。僕は、先ず負けないもの」

 自信だけは負けない。

 それも兵に必要なものだと信じていないと勝てない。


「でも……」

 日菜子は珍しく曇り顔であった。

「でも?」

 本当に何の心配をしているのか同じ年でもこうも違う。


「負けるのもいいのかもね。美舞は奥手だから」

 少し微笑んだ。

「……」

 やっと、少しだけ意味が分かった。

 美舞は日菜子の言葉に赤面した。

 女の子としてはそれでもいいかなと思うところはあるのだが、格闘家としては負けられない気持ちが強い。


 兎に角、玲と闘うには決勝迄行かなければならない。

 それ迄負けないと言う保証はないのだから、一生懸命闘わなければならなかった。


「僕に決まっている」

 自信を捨てたら駄目だ。

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