忍び寄る気配
俺がレオンをみっちりと訓練していると授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
俺が前衛科に来た時は、『治癒』のくせにとか言う声も聞こえていたが、俺がレオンを絞りすぎたせいか、授業が終わる頃には誰も文句を言わなくなっていた。
レオンを子分達の元に向かわせ俺はラインハルトのもとへ向かう。
「よう。ラインハルト。」
女の子に囲まれているラインハルトに話しかける。
すると、女の子達は俺に気づき、蜘蛛の子を散らしていくように去っていく。
「相変わらずすごいね君は。」
「嫌味か? これでも傷ついてるんだぞ?」
「そっちじゃなくて、武術の方さ。」
ラインハルトの能力は『炎術』という超攻撃特化型なので、もちろん前衛科だ。
最初は組手の相手に誘ったのだが、実力差があり過ぎると言われ断られてしまった。
「そうか? 俺は手加減してやってるつもりだぞ?」
「あれで手加減してるのか……。」
「ああ。レオンに本気出すと訓練にならないからな。」
「レオン君も大変だね。」
「何が?」
「君を超えようと思うと常人とは逸脱した努力が必要になるだろうからね。」
「それなら心配いらないさ。レオンはいずれ俺を超える。それだけの才能があいつにはある。」
「君が言い切るなんて珍しいね。でも、君も才能があるんじゃないか?」
「俺のは師匠にやらされたお前の言う常人とは逸脱した努力って奴だ。」
「そういえば、前から気になってたんだけど、君の師匠って誰なの?」
「私も聞きたいです!」
いつの間にかマリナも俺の横に来ていた。
「う〜ん。あんまり言いたく無いんだけど、お前達絶対秘密にしろよ?」
「もちろんさ。」
「もちろんです!」
「俺の師匠はライオネルって言う……」
「「ライオネル⁉︎」」
二人が声を揃えて叫ぶ。
「しーっ。二人とも声がでかい。」
「だってヒイロ。ライオネルって言ったら伝説じゃないか!僕達騎士の人間でも弟子になりたいって人は山ほどいるよ。」
「そうですよ!ライオネルは伝説と言われて村の子供達の憧れなんですよ!」
「わかった。わかったから落ち着け二人とも。」
マリナの頭を撫で落ち着かせる。
「すまない。取り乱してしまった。それにしてもどうやって弟子になったんだい?確かライオネルは弟子を取らないことで有名だったけど。」
「それは……。ライオネルに拾われたんだよ俺は。」
「何か、君の出生に関わるようだね。じゃあ、聞かないでおくよ。」
「聞かないのか?」
「君が教えてくれるって言うんだったら聞くけどあまり言いたくないだろう?気になるけど無理強いは良くないからね。」
「まったく本当に良い奴だよお前は。」
そして、時間を確認しラインハルトと別れることにする。
「また明日な。」
「ああ、また明日。マリナちゃんもね。」
「はい。また明日。」
俺達は子分と話しているレオンを途中で捕まえ、訓練場に向かう。
いく途中で後衛科に行き、ロミアを迎えに行く。
すると、ロミアは男子に囲まれていた。
「ねえねえ。ロミアちゃん。これからどっか行こうよ。街でなにか奢るからさ。」
「我の奴隷にならないか?」
「すみません。私は主人を待っておりますので。」
ロミアを囲んでいる男子達を掻き分けながらロミアの前まで行く。
「ロミア、大丈夫か?」
「ヒイロさん!」
そう言ってロミアが俺の腕に飛びついてくる。
男子達に囲まれて内心不安だったんだろう。
男子達は俺の存在に気付き、解散する。
ロミアが腕に抱きついたまま訓練場に向かおうとすると、マリナも反対の腕に抱きついて来た。
「ロミアばっかりずるいです。私もいいですよね?」
「ああ。」
そのまま俺は二人に抱きつかれたまま訓練場に向かった。
いつもの訓練を終え、二人を女子寮まで送り、寮にかえってご飯の支度をする。
実は二人とも学園の奴ら相手なら軽くあしらえる実力を持っているのだが、最近どこか学園の人間のものではない気配がするのだ。
教師ならコソコソ動き回る必要もないし、生徒なら大人特有のがっしりとした気配はでない。
つまり、大人の教師ではない人間が出入りしているようだが、俺の障害にならなければ別に構わないので今は放っておいている。
しかし、万が一の事があってからでは遅いので、マリナとロミアは女子寮まで送るようにしているのだ。
今日も何事もなかったが、今日は一段と気配が多かったので近々なにか起きるのかもしれない。
明日も何事も起きないようにと願いながら眠りについた。
ラインハルトはイケメン君です。
作者的には容姿のイメージがあまりついていないので、皆さんの思うイケメンを描いてもらえればよろしいかと。
内面はかなり気の使えるタイプです。
こういう友が一人いれば楽かもしれませんね。
更新速度の話ですが、2日に一回もしくは3日に一回のペースになると思います。