苦労して得たもの
貴族を事故死に見えるようにして、現場を後にした俺は、保険で生かしていた庭の男の下に向かう。
こいつは貴族が俺を襲った男達など知らないと言い張った時の証人だったが、貴族があっさり認めたのでもう用済みだ。
顔を見られているので、殺しておく。
そして、おそらく雇われていた5人の男達の死体にさらに右手で触れる。
俺の右手は触れている時間の長さで死に方が変わる。
長く触れれば触れるだけ穏やかに死ねるのだ。
一瞬なら血が吹き出したりする。
逆に言えば、長く触れることで老衰のように死ねる。
そして、それより長く触れれば砂になる。
原理はわからないが土に埋めると人は骨以外なくなるのでそういうのに近いのだろう。
一時間程かけて死体を処理し、急いで寮に帰る。
もう日が昇りかけていて、遠くの空は少し光が出始めている。
寮に着いた俺は血のついた服を台所で洗い、完全に血を落としてから、朝の食事の支度に入る。
外の日から見てもう寝る時間は無いと思ったので、朝の料理を手の込んだ物にしようと思ったのだ。
朝の食事の支度があらかた終わるとレオンが匂いにつられたのか起きてくる。
「ふぁぁぁ〜。兄貴、おはよう。」
「おはよう。顔を洗ってきなさい。」
ふぁ〜いと返事をしながら水を汲みに行くレオン。
レオンは朝に弱いのだ。
それが獣人だからなのかレオン自体が弱いのかはわからないが。
そうしてレオンと一緒に朝食を摂り、学園に登校する。
すると、既に来ていたマリナとロミアが俺の席までくる。
「昨日はありがとうございました。」
「ああ、気にしないでくれ。これで君は自由の身だ。」
「その事なんですが、貴方の奴隷にして貰えませんか?」
一瞬デジャブを感じたが、落ち着いて聞く。
「何故だ?折角手に入れた自由を手放す意味がどこにある?」
「ヒイロさんは確か少し前に山から出て来たんでしたよね?」
「ああ、そうだが、俺は君に話したか?」
「いいえ、マリナが言ってました。」
マリナの方に視線を向けると、悪戯がばれた子供のような表情をしていた。
「そうか。それがどうしたんだ?」
「はい。獣人の扱いは良く無いんです。特に女となれば奴隷にしようとしてくる人はたくさんいます。なので、ヒイロさんの奴隷にしてもらいたいのです。」
「そういう事なら良いが、俺の奴隷になっても狙ってくるものはいるだろう?」
「はい。だから厚かましいのですが、もう一つお願いがあるのです。私に稽古をつけてくれませんか?もう二度と大事なものを奪われたく無いのです。」
「わかった。良いだろう。」
そうして、ロミアに修行をつけることが決まった。
授業が終わり、俺はロミアの下に向かう。
「ロミア、今日の夜こっそり俺の部屋に来てくれ。」
「え?」
「なっ⁉︎」
ロミアは驚いた様な顔をし、マリナはプルプルと震えるていた。
「ヒイロ様⁉︎どういうことですか⁉︎夜のお相手なら私がします!」
ロミアからも私は奴隷だからそういうことも必要よね。などと言う声が聞こえてくる。
「そういうことじゃ無い。」
「じゃあ、どういう事なんですか⁉︎」
マリナが食い気味に聞いてくる。
「ロミア、お前は前の主人につけられた傷があるだろう?それを一晩かけて直そうと思ってな。」
「そういう事ですか。ありがとうございます!」
「ああ、夜待ってるぞ。」
何故かロミアが顔を赤くしながら頷いてくる。
何故顔を赤くしてるんだと思っていると、マリナの方からあんなこと言われちゃったらそうじゃ無いってわかってても意識させられちゃいますよという呟きが聞こえた。
(そういうことか。確かに今の言葉だけ聞くと、誘ってる様に聞こえるな。ま、ロミアが嫌そうじゃ無いから無理に掘り出す必要もないだろう。)
そうして、レオンとマリナに修行をつけつつ、レオンやマリナが最初にやったランニングや模擬戦をロミアに教え、一旦ロミアを寮に帰し、夜を待った。
因みにレオンは最近できた舎弟らしい奴の所に泊まらせている。
やらしいことはしないと言っても裸になるので見せられないと思った配慮だ。
すると、コンコンと扉がノックされる。
「ロミアか?」
「はい。」
ロミアを中にいれ、
「服を脱げ。」
「やっぱりそういうことを」
「違う。俺の能力は直接触れなければ効果がない。恥ずかしいとは思うが我慢してくれ。」
「わかりました。」
ロミアが服を脱ぎ出す。
やがて一糸纏わぬ姿になり、ロミアの豊満なバストなども露出される。
俺は少し見惚れたが背中や腹にあるぶたれたような跡や首にある首輪の跡を見て気を取り直す。
ロミアをベットにうつ伏せにさせ、
「背中触るぞ。」
「はい。んっ。」
左手で触れた瞬間ロミアが出した声にドキッとしたが、1秒も触れていれば触れていた所の傷跡は無くなっていた。
ペタペタとロミアの傷跡に触れていき、ものの2分くらいで背中の方の傷跡は無くなった。
次は前の方なのだが、流石に面と向かってみるのは恥ずかしかった。
言動は大人びているが俺だって年頃の男なのだ。
まだ10歳だから性欲を我慢できているが大人になってこの美少女に迫られたら我慢できるかわからなかった。
そんな事を考えていると
「どうしたんですか?背中終わったんですか?」
「ああ、終わった。」
「じゃあ、次は前ですね。」
そう言って、ロミアは躊躇いなく仰向けになる。
その大胆さに驚きつつ
「あのな、俺男なんだが、恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいですけど、私は既に貴方のものです。貴方に何をされても何も言いません。」
俺は溜息をつくと、
「もっと自分を大切にしろ。」
そう言い、自分の理性を信じながら傷跡を治していった。
さらに、数分が経ち、全ての傷跡が無くなったことを確認すると、
「よし。終わりだ。もう遅いがどうする?寮に帰るなら送っていくぞ?」
「え?ここに泊まっていってもいいんですか?」
「まあ、もう夜も遅いからな。明日朝早くに女子寮に帰ってもらう事になるが。」
「是非泊まらせてください!」
そう言って俺も寝る支度をしてたのだが、
「何故俺の布団に入ってくる?」
「私奴隷だったから人と寝るのって憧れだったんです。小さい頃レオンと寝たりしてたけど最近は寝れてなくて。」
奴隷の頃の話を出されると断りづらくなるから困る。
「それに、ヒイロさんと一緒に寝たかったのもあります。」
「わかった。いいよ。」
俺はロミアの頭を撫でる。
すると、ロミアも微笑みで返してくれた。
(やっと心の底から笑ってくれたな。)
俺もロミアも安心したのか眠りに落ちた。
ロミアの添い寝です。
それにしてもロミアの裸見て理性を保ってられるヒイロの精神力もなかなか強いですね。
本当はロミアの体について詳しく書ければ良かったのですが、何分作者の表現力が乏しいのでこれが限界です。
後は皆さんのご想像にお任せします。
この章はこれで終わりです。
後は閑話を一つくらいいれて次の章に移りたいと思います。