ゴミの後始末
今回はかなり残酷な描写が強くなっておりますので、苦手な方は飛ばす事を推奨します。
俺達の戦いが終わり、ロミアを勝ち取った後、俺はロミアの首輪を能力で外した。
ロミアは驚き、説明を求めてきたが、その説明をマリナに任し、俺は疲れているという理由で部屋へと帰ってきた。
しかし、疲れているというのはもちろん嘘だ。
そもそも傭兵があそこまで弱かった事が予想外だった。
俺は殆ど山から出たことがなかった為あれが普通の実力なのかもしれない。
今度から手加減しようと心に決めつつ、息を潜める。
現在、俺は女子寮のすぐ近くの林に隠れている。
今は夜だが夜這いではない。
絶対にない。
俺がここに居るのには理由があるのだ。
そして、気配が近づいてくる。
(やはり来たか。)
俺はあの貴族が簡単にマリナとロミアを諦めるとは思えなかったのだ。
なので襲ってくるなら夜だろうと思い、わざわざレオンを早く寝かしつけて、ここで待機していたのだ。
俺はその刺客達を観察する。
(人数は5人。かなりの手練れのようだ。昼間の傭兵とは違う。それに、完全に裏の人間だな。)
昼間の傭兵とは明らかに違う雰囲気を持つ刺客達がバラバラになったのを確認して能力を解除する。
「第三施錠、解除」
刺客の位置を全て確認したところで俺は一番近くの刺客に向かって倒れるように加速しつつ、右手を前に出す。
そして十数メートル先の刺客との距離を殺す。
刺客の真後ろに来た俺は低い姿勢のまま刺客の足を切る。
「ん? なんだ? …俺の足が、足がぁぁぁぁ!」
「どうした! 今から襲撃するんだ大きな声を出すな!」
「それどころじゃねえんだよ。俺の足が無えんだよ。」
足を切られて暫く呆けていた男は自分の足が無くなっている事に気付き、途端に騒ぎ出した。
そして、俺は大声を注意した男の後ろに回り込み、再び距離を殺して、男の首を切り落とす。
「どうしたんだ⁉︎ だ、誰だ貴様⁉︎」
「俺か?俺はお前達が今から攫おうとしている2人の現主人ってところかな?」
「貴様か!あのアラムをボコボコにしたって奴は。我らの主人には貴様も連れてくるように言われている。大人しく付いて来てもらうぞ。」
「ああ、いいだろう。どうせお前達の主人のところには行くんだ。だが、お前達は全て亡骸になっているかもしれないがな。」
「何を言って…」
ザシュッ!そんな音がしたかと思うと、今まで話していた男の腕が切れ、いつの間にかヒイロが隣に立っていた。
そして、振り返り際に右手で触れ、殺す。
「すまんな。余計な話をする時間はあまりないんだ。夜は短いからな。」
「貴様!」
「あと2人だな。この惨状を伝える奴はさっき足を切った奴で十分だからお前達は殺してもいいんだ。だから、死にたい奴からかかってこい。」
そう笑みを浮かべながら言う俺に刺客達は少し恐怖したようだが、二人共襲いかかって来た。
「いい度胸だ。」
そうして、2人の死体ができた。
4人の死体と痛みで気絶した刺客を運びながら俺はロミアを飼っていた貴族の家の前まで来た。
普通、生徒は学園の寮に住むのだが、貴族は例外である。
貴族はそれぞれ学園に近い土地に家を持っているのでそこから登校する事を許されているからである。
俺は貴族の家の前で死体を袋に入れ、生きている者の傷を左手で治し、庭に置いてから顔を隠し、袋を担ぎ上げ、家に侵入する。
「おお、来たか!」
「はい。お望みのものです。」
「ああ、では早速…」
「いえ、先に例のものを頂かなければ。」
「そうじゃな。ほれ。」
そう言って金の入った袋を投げてくる。
「こんなもんじゃねえよ。」
「は?何を言っておるのだ。ちゃんと金を渡したではないか。」
俺は顔をだしながら言う。
「お礼はあんたの命がいいな。」
「ひっ!な、な、なぜ貴様がおるのだ!」
そう言って震え出す貴族。
俺はそんな貴族をゴミを見るような目で見ながら、袋を貴族の前に投げる。
「開けてみろ。」
貴族は恐る恐る袋を開け、中を見る。
中を見た後の貴族の顔は、今までも青かったが、より一層青くなった。
「わ、私をどうする気だ?」
震える声で聞いてくる。
「言っただろう?今までロミアにやってきた暴力。マリナを見る目。そして、無理矢理自分の物にしようとしたその強欲を命で払ってもらおうと言ってるんだ。」
「な、な、な!」
貴族は怖がり、失禁寸前だ。
しかし、途中で何かに気づいたのか少し余裕を取り戻す。
「いいのか?私はグランハルト家の嫡男だぞ?私を殺せばお前達は国を追われる身となるぞ?」
俺は深い溜息を吐き、貴族に向いて言う。
「恐怖で正常な判断が下せていないようだから言ってやる。今この場では俺とお前しかいない。死体がどうやって喋るんだ?それに…」
「それに…なんだ?」
「30分だ。」
「は?」
「お前ら貴族共を殺すのにかかる時間だ。お前の両親、兄弟、親戚、許嫁に至るまで全て殺しても30分で終わらしてやろう。」
そう言い放った俺を見て、今度こそ逆らう気が無くなったのか貴族は完全に呆けていた。
「安心しろ。今回はお前の命だけで許してやるさ。」
そう言って、貴族の頭を撫でるように右手で触れる。
その瞬間、貴族は生き絶えた。
今回はヒイロのかなり黒い部分が見えました。
第三施錠についての説明がなかったのでここに入れておきます。
第三施錠
手を向けた先の空間を殺す能力。
目の前の空間を殺す事で、物体間の距離も殺す事ができ、周りからは瞬間移動したように見える。
空間は死んでも直ぐに元に戻るので実際にはヒイロが移動したようにしかならない。
この能力は空間にしか作用しないので生き物が死ぬことはない。
そのためヒイロが便利と感じた唯一の能力である。