武器ってなんですか?
無事に転職が済んだ俺達は武器屋へ向かった。
「お、ここか、すごい店だな……」
俺達が着いたこの町唯一の武器屋はなんというかボロボロの古民家みたいな店でした。
「へい、いらっしゃい」
店主のお爺さんが元気そうに言った。
職員のお兄さんによると、ここの店主さんは昔、凄腕冒険者として名をはせたらしいのだが、どうみてもただの腹巻をした老人にしか見えない。
いや、もしかしたら弱そうに見せて相手を油断させているのかもしれない。
そんな考えを読まれたのか、
「昔の話じゃ、今はただの老人じゃよ」
と、店主さんにボソッと言われた。
流石は凄腕冒険者と呼ばれた男、すごい。
いや、ただたんに外でそんな会話していたのに気付いていただけかもしれないが。
「あ、あの初心者でも使える杖はないですかね?」
俺は尋ねると、
「お前さんはそうだな、これなんかいいんじゃないか?」
と感心してるところ店主さんが店の奥から杖を出してきた。
木で出来ているが怪しい雰囲気の杖だ。
「えっと、この杖は……?」
急にこの杖を勧めてきた店主さんに聞き返すと、
「これはな、ある強力なモンスターが封印されたと言われる杖じゃ。誰も怖がって買わないから売れ残っとるんじゃ。どうだ、1本買わんか?」
なんて物をオススメしやがる。
「待って待って、呪いの杖じゃないですか。そんな物騒な物はいらないですよ」
そんな怖い物はいらないと丁重に断ろうとすると店主さんは、
「まぁ、よく聞け。この杖の中の魔物は持ち主の魔力に応じた魔物を召喚できる優れものじゃ。まぁ、ただ少しだけ魔力の消費が高いだけじゃ。そこまで危険はない。だからどうじゃ買わんか?」
魔物召喚?何それカッコイイ。そんなチート使えたらゲームでいう魔物使い、つまりレア職ってこと?
俺はしばらく悩むとこう言った。
「か、買います!」
「ほっほっほ、お前さんならそういうと思っておったぞ。値段は少しくらいならおまけしてやる。金貨5枚じゃ、値段に見合う働きはするぞ」
そう言って店主さんが言った値段に俺は驚いた。
金が全く足りないのだ。金貨1枚は日本円にして100万円程度とラナから聞いている。ラナから貰ったのは銀貨10枚、銀貨は1枚あたり3万円程度らしい。これじゃ全然足りない。
「あの、すみません。その……お金が……」
俺は申し訳なく言うと、
「はぁ…。そうか、じゃあ餞別ということでやろう。わしの見立てじゃこの店に置いて置くよりも使ってもらう方がこの杖も嬉しいじゃろ」
そう言って店主さんはにっこり笑った。
「いいんですか?」
俺はキョトンとして聞くと、
「若い者には未来があるからのぉ」
「ありがとうございます!!俺、これを使って魔王討伐頑張ります!」
俺は目に涙を浮かべながら頭を下げた。
なんて、優しい店主さんなんだ。この町は日本と大違いだ、みながみな優しい。なんて良い世界なんだ。
「呪われた杖なんて気味悪がって誰も買わないんじゃもんな。タダなのはちと痛いがまあ、良かったわい」
店主さんが何か言った気がするが感動のあまり聞き取れなかった。
他のみんなは決まったのだろうか。
ふと、辺りを見ると
「これが良さそうね。うん、切れ味も良さそう」
由利が短剣を手にして言っている。
あいつは本当に女なんだろうか。後衛職についてる俺が言うのもなんだが。
由利はともかく他2人はどうなってるんだろう。
「私の武器は別の所で買うわ」
「えー、お母さん他のところで買うの?ところで、これって私に似合う?」
「うーん、そうね。遥香はもっと可愛いのがいいんじゃない?これとかはどう?」
「こ、これ?」
「ちょっと待てぇ!」
俺は2人の会話に割って入った。
「母さんはなんてものを娘にオススメするんだ!」
母が遥香に勧めていたのはメリケンサックぽいやつだった。どうしてメリケンサックみたいのなんかあるのだろう。
いや、それよりも、
「母さん落ち着いてくれ。遥香は僧侶だ。そんなガンガンいこうぜはしない。」
「あら最近の女の子は肉食よ?いのちだいじにはもう終わりよ」
「ガンガンいこうぜがガンガン逝こうぜじゃ意味ないんだよ!遥香は僧侶、いのちだいじにが正解だって」
俺と母が言い合っていると、
「これ可愛い!私これにする!」
遥香が言った。
どう見ても神社の巫女さんが持ってるシャンシャン鳴るやつなんだが。
「お嬢さんいい目をしてるの。それは神楽鈴、神聖な道具で武器としては使えないが回復魔法の威力上昇とかじゃ」
店主さんが説明すると、
「ほうほう、僧侶の私にピッタリね!」
遥香は頷きながら言った
………ここほんとに異世界?
「ありがとうございましたぁ!」
武器屋で武器を買い終わった俺達は酒場へと戻った。
武器を買ったらお金がほとんどなくなったため防具も買えず、とりあえず依頼を受けてお金を稼ぐことにした。
町の外では夜にモンスターが湧く、それにより他の町への移動中に襲われるのが多いらしい。そこで冒険者の出番だ。それを狩って報酬をもらう。これこそ異世界って感じだ。
早速職員のお兄さんのもとへと……?
「ちょっと落ち着いて下さい!その方ならさっき来ましたから!」
「本当ですか?」
「は、はい!」
そこでラナが泣きじゃくっていた。