燃やされた森
その頃、かつて森だった場所―――――。
ロロアは、黒く焼けた木が並ぶ所を歩いていた。
本は忘れ、服は先程の戦闘で破けている。
空腹もあり、限界に近い状態だった。
「これは……酷い……」
彼女の視界には、真っ黒な焼け跡と化した木が並ぶ図しか広がってこない。
退かそうにも、それで木が倒れてしまうなら無意味になってしまう。
そこで―――――。
「……ただ、ある程度の努力はしないといけません」
彼女が唯一使う事のできる、回復魔法の出番だ。
傷は既に癒えているのだが、彼女にはある意図があった。
それは―――――魔法の「効果」を知る事だ。
『あの魔法には本に書かれてあった事以外にも、何らかの効果があるかもしれない』―――――。
何故か自然が戻っていた事から、そう考えていたのだ。
「スィル、クォール、メニル!」
詠唱をする際の杖を持つ手の動きは、少し早くなっていた。
魔法を唱えてからしばらくの時間が経つと、身の回りの木々に葉が生え始める。
その様子を見ていると、どこからか声が聞こえてきた。
「お前……人間か?」
「ひっ!?」
耳元で囁くような話し方。
だが、それが唐突だったのか彼女は怯えた。
「落ち着け。 脅すつもりは無かったが……」
目の前に現れたのは、数十センチ相当のサイズの羽根の生えた人間のような生物だった。
「まず、誰ですか……?」
「私か? リスクェ・アーメテス、ローエシの者だ」
「"ローエシ"……? 思い出しました。 森に生息している、ムウツィの一つですよね」
「その通りだ。 だが……この森も、ほとんど全て焼かれてしまった。 そして今、私以外で生存している者を発見できていない」
「そうなのですか……。 ところで、私は旅をしているんですが……」
「旅人だったのか。 それなら、願いたい事がある」
「何ですか?」
「この森で、私の仲間を見つけてほしい」
「分かりました」
ローエシ―――――。
それは、旧リーフェント帝国時代末期に、「要保護種族」に指定されていた種族の一つ。
小さい体や羽根、耳の形といった身体的な特徴がある。
リスクェの話だと、現在いる森を中心に繁殖していたが、「悪魔の炎」による森の焼失後は、自分以外に生存している者が確認されていないという。
ロロアはそんな彼女の頼み事を受けたが、生存している仲間を見つける事はできるのか―――――。