初めての町へ
どうにか物体に殺されずに済んだロロア。
この後も、物体を無視しては歩き続けていた。
そして―――――。
空腹と戦いつつ、かつて買い出しにも行っていた街にたどり着く。
その名は「スルィムヒエ」。
だが、その街に活気は無かった。
家の焼け跡と、怪しげな露店が並ぶ。
「これは……?」
彼女がその光景を疑問に思っていると、住人らしき老人が歩いてきた。
老人の着ていた服の継ぎ接ぎが、火の恐ろしさを物語っていた。
「こんにちは……大丈夫ですか?」
今にも倒れそうだった。
「く、食い物を……」
その原因は空腹だった。
火事の影響で、作物や食糧が燃えて無くなってしまったのだ。
「何とかしないと……。 でも、私も食糧は持ってないですし……。 あっ、そうだ」
「うむ? さっさと……」
迫ってくる老人。
するとロロアは―――――。
「……使ってみますか」
しばらくその場で立ち止まった後、持っていた杖を真っ直ぐに持ち、数字を3つ数えながらそれを上下を逆に向けた。
回復魔法の詠唱だ。
「スィル、クォール、メニル!」
これが成功し、魔方陣の上に緑色の光が放射状に広がっていく――――――。
しかし、老人の体に変化は無かった。
それでも、光の中に入っていた草は、燃やされる前に近い状態に戻っていた。
「あ、あれ……?」
「余計な事をしおって!」
老人が怒る中、住人は―――――。
「お、おい! 彼処に自然が戻っているぞ!」
「誰がやったのかしら?」
「なんか、光が広がっていたが……」
突然として戻った草木の緑に反応していた。
だが、この住人の反応は、事件の直後で色々と混乱していた事もあるのかもしれない。
その時、飛んできた何かが老人を襲う。
短い刃物だった。
刃物が老人の後頭部に刺さると、血を流して倒れていた。
「えっ……?」
「クソが、俺が殺したいのはこいつだけじゃない」
すぐに、その犯人らしき人物が現れた。
「……?」
黒い髪、少し黄色い肌。
そしてこの世界だとかなりの高値になるであろう、黒を基調とした衣服。
転生者なのだろうか。
「俺が殺したいのはお前なんだよ! お前のような死に損ないを殺りたいんだ!」
男は隠し持っていたナイフを右手に襲いかかってきた。
しかし、彼女には男の喋っている言葉が分からない。
戦闘の構えもできず、ただ戸惑うばかり。
その一方、ある城では―――――。
一人の男と、数十人の集団が向かい合っていた。
その中には、何人か手足に重い球のようなものが掛かっている者も。
「王! 魔物達の間で存在が報告されていた、“反逆者”の事ですが……」
「そいつか……。 既に殺す準備は出来ている」
「流石です、王! 自分に抗う者は、力をもって潰さないといけませんね!」
「そうだ。 この城には、足跡一つ付けさせない。 お前らも、見つけ次第殺すつもりでいろ」
男が話すと、集団の歓声や拍手が。
「今回はこれでお開きだ。 俺はこれからも、この世界そのものを生まれ変わらせるために動き続ける。 そのためにはまず、この世界に居座る連中を始末しなければならない!」