表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焼かれた家から旅に出る  作者: TNネイント
守りたいもの
13/16

嘘じゃないなら

 その後リスクェは、そのロロアのいる牢屋の前に立ち寄った。

 彼女の後ろには逃げないための対策か、一人の転生者らしき見張りの男がいる。

 リスクェをこの施設に連れた男とは同一人物だ。

「……これが奴か。 無様(ぶざま)だな」

 傷だらけで倒れていたロロアの姿を見て、見下した。


「意識があるかすら怪しいが……」

 しかし、男にとっては、この身体状態は想定外だった。

 というのも、倒れたまま、あるいは死んでいる場合であれば、「脅す」の前に「意識を戻らせる」という過程が加わってしまう。


「……いや、これは……死んでいるとしたら、私に与えられた目的が無くなるぞ?」

「この草でも使うか?」

 中に立ち入った直後、迷うリスクェに意見する男。

 オクメルが置いていた草を利用するつもりでいた。

「そうだな」


 右手に草を持った男は、ロロアの体を右足で蹴り上げ、無理矢理口の空いている方を上にさせた。

「すり鉢は……無いか」

 だが、今は「すりつぶす」手段がない。

 そこで考えたのは―――――「切る事」だった。

 彼は左手で草を、右手に用意していた小さめの刃物を持って切り分け、その一部をそのままロロアの口内に突っ込ませた。




 しばらくの時間が経ち―――――。




 ロロアの意識は戻ったが、喉に何か物を詰まらせたようにむせていた。

「何……ですか……? いきなり……?」

 (せき)をするのような音が交わった声は小さい上にかすれていて、目には涙も浮かんでいた。


「……失望したぞ。 まさかお前が他所で人を殺していて、逃げてきた先が私のいる森だったとはな」

「……はい」

「認めるか。 無駄に(いさきよ)い」

「実際、そうですけど……でも―――――」

「言い訳は無駄だ。 ……喋るようなら、これで(つつ)くぞ?」

 問い質していくリスクェだが、道具を使った脅しには多少の抵抗があった。

「どうしたんですか……?」

 ロロアは、そんな彼女を気にかけた。


「聞こえていないか。 なら……ここで死ね!」

 しかし、喋った事に反応したリスクェは、ロロアの心臓に相当する部位に突っ込んだ。

 だが、鈍く動いた右手は、刃物による切り傷の代わりに、リスクェの体の向きを大きく反らした。


 状況は一旦戻り―――――。

「本当に……どうしたんですか……?」

 時間が経ち、草の効果で少しずつ状態を良くしつつあるロロアだったが、その身体を震わせ始めた。

 普通であれば、歯向かう理由のない相手。

 そんな相手に刺されかけたのは、彼女には衝撃が強すぎた。

 目も、少しだけ涙がこぼれそうだった。

「お前が憎くなった、それだけだ。 先程から見苦しいぞ、この―――――」

「私、信じてますから……。 本当なら、こんな事しないって……!」

 それでも、少しの涙を流しながら、訴えかけた。

 そして少しの間、リスクェの口が止まった。


「何をやっている、追い詰めるんじゃなかったのか?」

 そんな彼女に対し、転生者の男からの横槍が入る。

 不満のようだった。

「えっ? ……いや、しかし――――」

「裏切るつもりか? もっと追い詰めろよ」

 また無言となり、今度は視線を男の顔から左下の地面の方に反らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ