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焼かれた家から旅に出る  作者: TNネイント
守りたいもの
10/16

誰にだって味方はいる

 痛みからか、立ち上がる事すらできないロロア。

「やっぱり雑魚は……雑魚なんだなぁ!!」

 男が左足で追い討ちをかけようとする。


 目を瞑る彼女。


 左足は、そのまま彼女の腹を踏みつける。

 これが相当重かったのか、抵抗を一つもしてこない。

「力尽きたか? オラ!」


 男はその後も、彼女の身体に暴力を加え続けた。

 無言の、瀕死状態の身体に。



 ――――――――――



「つまんねぇ奴だったな! 近くの拠点に連れて直々に殺してもらおうか!」

「おおー!」

「歯向かった罪、死で償ってもらわないと!」


 一方で3人は、意識がなくほとんど死体に近いロロアの体を処分してもらおうと、どこかへと移動し始めた。

 ある森から遠い北の街で、考えられないペースで建設が進められていた、"魔王"の勢力の拠点の一つだ。


 そこまで、彼女は左腕を掴まれ、引き摺り回すようにして運ばれた。



 ――――――――――



「ん……んん……?」

 ロロアが目を開けた先に広がっていたのは、檻。

 もともと破けかけていた服は更に破れ、手と足は黒い拘束具で壁に縛りつけられている。


 監獄のような場所だった。

 窓はなく、壁は脱出する事ができないように分厚く硬い板で出来ている。

 扉も檻よりも隙間が狭く作られており、その上二種類の鍵で施錠(せじょう)されている。

 肌は土の中の石などとの摩擦で出来たであろう、数々の傷が生々しい。


「うわっ!? 起きた!?」

 横にいたのは、見た目からして彼女と同じかつてのリーフェント帝国の住民だったであろう女性。

 だが、話す言葉は彼女の話すそれとは少し異なる。 


 というのも、旧リーフェント帝国での言語は、種族や地域、文化によって異なっていた。

 今までロロアが話してきた「フルフェリサ語」もその一つで、「東部を中心に暮らしている人種が話していたのが北東部や南東部を由来とする別の人種へと伝わっていった」という歴史もある。


 帝国内で話されていた全ての言語の数は分かっていないが、「過去に王族や様々な識者や学者が話し合った際にも『わざわざ統一する必要がない』という結論に至り言語の統一ができなかった」と記録されていたほどには多い。

 この関係で、ある動作が地域によっては感謝を表すものであったり、禁忌とされていたりする事も多く、「リーフェントの名に相応しくない不統一国家」と揶揄する者もいた。


 そしてこの女性も手足にはまた別の拘束具、体にはここに来るまで人ではなく何かの物のように扱われた事が想像できるような、多数の傷がある。

 服も破れている部分が多く、命が持つのもおそらく長くはない。


「あの、ここって……?」

 女性に一度話しかけてみるが、伝わらないのか顔を向くだけ。


 その時、何者かが歩く音が響く。

 しばらくして目の前に現れたのは、「転生者」であろう男。

 身に着けているものは、リーフェントにはまだ普及していないものばかりだ。

 背中には剣も装備しており、その気になればいつでも二人側を斬り殺せる体制だ。

 ロロアは一度両目を(つむ)り、顔を左側へ向ける。

 だが、男は持っていたキーリングに通されていた中の鍵で一度施錠を解除すると、それを利用して二人の拘束具の鍵を外した。


 一見助けているようにも見えるが、やはり違う。

「“労働の時間”だ。 早く来やがれ!」

 やはり喋っているのは日本語―――――だが、この男の言葉は、二人には自分たちが今まで使ってきた言葉のように聴こえている。

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