10話 偉業
お待たせしましたm(_ _)m
年末でやる事多くてバタバタしてました( ノД`)…
そこからはトントン拍子に、事が進んだ。
かつてない程の不祥事を、国や教会は隠す事が出来なかった。
寧ろ、教会側は積極的に責任の所在を明らかにして、罪にあげている。
積極的に動いてたのが、トーリ・クレイシスっていうのが気になるところだけど……。
トーリ・クレイシスは、攻略対象者であるユーリ・クレイシスの実の父親だ。
そして、彼の√のラスボス的な立ち位置だと、前世であの女は語っていた。
そのトーリ・クレイシスが、教会の腐敗を糾弾?
シナリオだと暴食の悪魔に取り憑かれて、女子供を喰らっていたんだっけ……なら、この展開はどう見るべきか。
今回の事に、本当にトーリ・クレイシスは関わっていないのか。
若しくは、自分の身代わりを用意して、自分は知らないふりをしているだけなのか……。
「どっちかな……」
「そのゲームのシナリオとやらも、これからはあてにならないかも知れないわね」
俺が考えに耽っていると、横からアテネがそんな事を言ってきた。
「何故、そんな事が言える?」
母様の事や攻略対象者が実在する事から、誤差はあれど有用な情報の筈だ。
「別に貴方の言う事が全て違うとは言わないけれど……今、確かにズレた」
「……何が?」
要領を得ないアテネの言葉に、更に質問を重ねた。
「運命が」
ニコリとアテネは嗤う。
それは、アテネの目的の1つでもあった。
他者が紡いだ運命は、今ほどかれ形を変えつつある。
「そして、これからもっと変わっていくの。小石を投じた水面のように……もう新たに生まれたこの流れを止める事は、あの子にだって出来ない!」
「……楽しそうだな」
此れほど目に見えて興奮を表すアテネは、初めて見た。
「貴方もそうでしょう? 貴方の目論み通りに、ランクも上がったのだしね」
アテネが、テーブルの上のギルドカードを指でなぞる。
以前のカードと違い、ランク表記がSになり琥珀色の宝石が埋め込まれている。
カードの違いはそれくらいだが、その効力は段違いだ。
手に入る情報、相手から得られる信用や特典も桁違いに多い。
「そうだな……」
そんなSランクへの昇格は、驚くほど呆気なかった。
ジャルダンを始め、多くの推薦を得られたのが大きい。
皆俺達の事を、ルーベンスの救済者であると信じているから。
「ふふ、何度も言うけれど、私と貴方の目的は同じよ。貴方の復讐の果てに、私の願いは成就する」
特に興味はなかったけれど、アテネの言うあの子が何なのか俺は知らない。
けれどあの時、アテネの手を取った時、俺の目的とこいつの目的は一致すると思った。
「⎯⎯だから、私が赦すわ」
「は……?」
先程までの笑みを消して、真剣な眼をするアテネをまじまじと見返す。
一体、何を赦すと言うのか。
「私の名の元に、貴方がルーベンスで行った事、そしてこれから重ねていく罪も全て、私が赦すわ」
別に赦しなんて求めていない、そう言おうとして言えなかった。
「そうか……」
言えたのは、それだけ。
言葉では復讐が出来ればそれでいいと言っていたが、そうではなかったらしい。
俺は僅かに、赦されたいとも思っていた。
後悔はしていなくとも、罪悪はあった。
「えぇ、そうよ……」
本当に赦されたい相手は、アテネではない。
それは母様であり、ルーベンスで亡くなった人々にだ。
けれど、この時俺はアテネの言葉に少し救われていた。
重苦しかった心が、ほんの少しだけ軽くなった。
後、もう1話挟んでこの章は終わりです。
何時もの時間か、明日の昼か夕方にでもUPします。