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5話 鍵はルーベンスにあり?

 

「……いつまで、不貞腐れているんだよ……たかが、食べ物くらいで」


翌日、早朝からギルドで依頼を数件受けて、既に昼を回っているというのにアテネは昨日と変わらず不貞腐れていた。

戦闘や採集中手伝わないのは何時もの事だが、今日は後ろをノロノロとゆっくり歩き面倒臭そうにしていた。


「なら、その食べ物くらい私にくれもよくないかしら?」


あたかも、俺が悪いかのような言いぐさ。

少しも自分の態度を改める気はないらしい。


……戦闘に参加しだして足を引っ張られでもしたら、それはそれで面倒なんだろうけど。


けれど、コイツの要求を素直に飲むのは実に癪に触る。


「……別に俺も鬼じゃない。お前がそれ相応の対価を支払うのなら、それなりの対応をする」


「……それがケチ臭いと言っているのよ」


「なら、そう思ておけばいい」


別に俺はどちらでも良いのだから⎯⎯⎯











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「⎯⎯おぉ、今日も大量だな。しかも、あれだけの数の依頼を1日でこなすなんて……流石としか言いようがないな」


日が暮れ受けた依頼を終えた俺達は、街のギルドへと戻ってきていた。


「別にこの程度どうってことはない。それよりももっとランクの高い依頼はないのか?」


この程度の依頼をいくらこなしたところで、評価は大して上がらない。

偉業とまでは言わないが、もう少しランクの高い依頼はないものか。


「この辺のはお前達が、根こそぎ持っていったからな……うーん、お前達がどうしてもと言うのなら、ここを出て別の街を拠点にした方がいいかもしれないな」


「別の街か……」


それも1つの手か。

ここで高ランクの依頼を受ける事が出来ないなら、魔物被害の多い地域に活動を移した方が効率的だ。


「まぁ、俺としては残ってくれた方が助かるがな。お前達みたいな高ランクの冒険者は少ないし、何より俺が寂しいしな!」


そう言って、頭をガシガシかきながら照れたように笑うジャルダン。

おっさんが照れても、全く可愛くない。


「別に今すぐじゃない……それに、Sランクへの推薦の約束もあるしな」


「おっ、じゃあ後10年はここにいるって事か。成人の祝いには、高い酒を飲ましてやるよ!」


ジャルダンは俺の言葉を聞いて、嬉しそうに笑う。


「それはどうかしら? 私達は1年以内に昇格するつもりなのだし。約束も1年以内でしょう?」


先程まで口を閉ざしていたアテネが、ひょいっと俺達の会話に入ってくる。


「あぁ、別に1年じゃなくても、条件が揃ってるならしてやるよ。お前達の事は信用しているしなっ!」


ガハハと、豪快笑うジャルダン。

あまり物事を深く考えているようには、決して見えない。


……こんなのが、トップでこの街のギルドは大丈夫なのか?


俺のいだいた疑問は、至極もっともだと思う。


「はぁ……他に何か変わった事は?」


それは何気なく、口から出た質問であった。

この街のギルド長ともなれば、新聞にまだ載っていない新しい情報があるかもしれない。

その程度の思い付きからの言葉だ。


「変わった事か……あー、そう言えばルーベンスの方がヤバい事になっているらしいな」


「やばい?」


ルーベンス、確かに目立った特産もなく農耕に適さない土地だったはずだ。

後は……魔物被害が多い地域として、文献で読んだ。


「あぁ、何でも食糧や水が全部ダメになっちまったらしい。それに加えて、病や魔物も大量発生して深刻な被害なようだ」  


「それって、大丈夫なのか?」


聞く限り、かなり深刻な問題のように思える。


「でも、もう安心だ。国や教会が動いて、支援を送ったようだからな。直に混乱もおさまるだろう」


「へぇ……それは良かった」


ジャルダンの言葉に頷きながらも、ルーベンスの事がどこか頭に引っ掛かる。

俺の勘が、これは鍵になると告げている。


「だな。被害0とはいかねぇが、今回は迅速な対応だったからな。最小限の被害で済むだろう。対応が遅れれば、洒落にならねぇ事態になるからな」


ジャルダンは本当に良かったと言うと、俺の受けた依頼の報酬を用意してテーブルに置いた。


「じゃあ、また明日な」


報酬を空間魔法を使った魔法鞄へと仕舞い込んだ俺達に、ジャルダンは別れの言葉を告げるとギルドの奥へと戻っていった。



「……ルーベンス、ね」


これは少し調べてみる必要があるな。


「気になるの?」


宿に戻る途中、アテネが俺に問い掛けた。


「……あぁ、もしかしたらルーベンスは鍵になるかも知れないからな」


俺がSランクへと、昇格する為の。


「そうね……いいと思うわ」


多くの命が消えていく。

俺は不謹慎だというのに、災禍にあるルーベンスに思いを巡らせ俺達はうっそりと口角を上げた。



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