2話 変えられなかった結末
説明回チック。
あーるだけで分かるように書くの、思ったより難しいですね。
本編と混ざっちゃいそうです。
“七ツノ大罪~貴方と私の愛の軌跡~”
俺が前世で学生であった頃に、流行っていたらしい乙女ゲーム。
聞いた事があるだけで、実際に見た事もやった事もないゲーム⎯⎯⎯⎯
この世界が、そのゲームに準えている事に気付くまで、そう時間はかからなかった。
それはきっと学生時代に出会ったあの少女のインパクトが、強すぎるせいであろう。
“須藤 由奈”
隣のクラスの癖に、毎日のように俺達のクラスにやって来ては腐った妄想を撒き散らす傍迷惑な女。
腐女子であり、このゲームのシナリオも盛大にネタバレしていたから記憶によく残っている。
けれど、何もかもが遅すぎた。
母様の名前を、その腐女子から聞いた事はない。
けれど、確かに腐女子の話の中に出てきていたのだ。
“レイアス・ウェルザック”
レイアスは、ゲームの攻略対象のキャラの名前だ。
そして母様と縁のある人物でもある。
このキャラの設定はこうだ。
実の父親と初恋の人を殺された事で、母親を憎悪している。
そして母親の名は、クリスティーナ。
レイアスは、クリスティーナの連れ子であった。
母様を殺すように、依頼した女の名だ。
根拠は、それだけではない。
俺の容姿だ。
銀髪に、金色の瞳。
これはこの国の名門、ウェルザック公爵家の特徴だ。
そもそも固有魔法を持つのは貴族の血を引いているので、まず間違いないだろう。
どちらの情報も、名門貴族なだけ簡単に手に入った。
母様は平民であった。
故にクリスティーナは家の権力を使い、父親の正妻の座へと無理矢理腰掛けた。
毒婦として黒い噂の絶えない女だ、母様も身の危険を感じたのだろう。
たからこそ、母様は女1人で俺を隠して育てていたのだ。
⎯⎯俺のせいだ。
俺があんな我が儘を言ったから。
俺は母様が何かから、逃げ隠れているのは分かって筈なのに。
俺がもっと早くにこの世界の事に気付いていれば。
そうすれば、母様は死なずにすんだかも知れない。
けれど、いくら後悔したところで現実は変わらない。
俺は母様の運命を変える事が出来なかった。
母様は殺されてしまった。
もう2度と会えない。
それがだけが、事実だ。
だから、俺は復讐をするのだ⎯⎯⎯
「……さっさと依頼を済ませに行くぞ、アテネ」
世間話は終わりだと、強力な魔物の多数でる森へと足を踏み入れる。
そこに一切の躊躇や恐怖はない。
「はいはい、分かっているわ」
アテネもまた怯える様子もなく、俺の後に続いていく。
こんな子供達が危険性の高い森へと足を踏み入れるなんて、端からみたら狂気の沙汰であろう。
周囲から注目されるのも当然だ。
今日はどれだけ成果が上がるのだろうか?
早く、早く力が欲しい。
あの女を、シュトロベルン公爵家を滅ぼすだけの力が。
「……その為にも、条件を満たして早くSランクに昇格しないとな」
この国でSランクの冒険者は、30人にも満たない。
故に、それに見合うだけの発言力や権利が与えられている。
この称号は、後に必ず役に立つ。
何としてでも、手に入れる必要がある。
突如、新星の如く現れた2人組のパーティー“漆黒の断罪者”。
彼等はギルドに加入して、2ヶ月弱という最短記録でAランクにまで上り詰め一躍有名になった。
けれど、彼等の躍進はその程度では止まらない。
その数週間後、彼等はSランクへと昇格し最年少最短記録を新に樹立する事になる。