1話 漆黒の断罪者
かなり久々に……( ̄▽ ̄;)
前半、別視点です。
「⎯⎯おい、あいつらがそうなのか? どう見ても弱そうだぞ?」
ガヤガヤと騒がしい室内で、値踏みするような多くの視線が2人の人物へと注がれる⎯⎯
「本当だよっ! 前に、噂を信じずに絡んだ奴等何か瞬殺されたの、俺見た事あるんだからっ!」
何で、自分を信じないんだとばかりに腹を立てる青年。
けれど、この青年も数日前までは噂など信じていなかった。
実際、実物を見ただけで噂を信じる者はいない。
寧ろ、実際その目で見た者程、そんな噂話と笑い飛ばすものだ。
何故なら⎯⎯
「どう見ても子供じゃねぇか……まぁ、見た目は全身黒ずくめで気味が悪ぃが、とてもじゃねぇが噂程強えぇとは思えねぇ」
男の視線の先にいるのは、男女間2人の子供であった。
背丈から推測するに、せいぜい6、7歳になるかならないような子供だ。
2人とも黒髪に、奇妙な黒い仮面、黒い装束を身に付けているのは目を引くが、それだけだ。
それ以外は、至って普通の子供にしか見えない。
「んなこと言ったって、本当の事なんだから仕方ねぇだろ」
「あー。俺が、悪かったよ。そう、すねんなって」
すっかり不貞腐れてしまった友人を宥めながら、男はもう一度子供達へと視線を向けた。
「あんなのがギルド史上最速、最年少でAランク入りした漆黒の断罪者ね……どう考えても、冗談にしか聞こえねぇよ……」
青年に聞こえぬよう、男は独り呟いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……この呼び名は、もう変えられねぇのかな」
俺は街を出た瞬間、周囲の視線がなくなりうんざりするように吐き捨てた。
「あら、何で? これ以上ないくらい、私達には合っていると思うのだけれど」
そんな俺の態度に心底分からないといったように、首を傾げる黒い少女、アテネ。
俺達は町を出た後、少し離れた大きな街で冒険者としてギルドに登録した。
“漆黒の断罪者”
その名はアテネとパーティーとして登録した時に、こいつが勝手につけたパーティー名だ。
俺は前世の影響か、どう考えても中二病にしか思えない。
だが、アテネは俺とは感性が違うようで、傑作だとばかりに気が付けば勝手にパーティー名を提出していた。
お陰で、外では何度も中二臭い名前で呼ばれる事になっている。
「……中二病じゃ、あるまいし」
「中二病? 貴方は、時々可笑しな言葉を使うのね。それも貴方のいう、前世の世界とやらの言葉なのかしら?」
眉をしかめる俺に対し、クスクスとアテネは笑った。
アテネには、情報共有の為に前世の事を少し話した。
それ以来、しつこいくらいに度々前世の事を聞いてくる。
こいつに話した事は、間違いだったかもしれない。
「クスッ……ねぇ、まだ後悔してるの? その前世のゲームとやらのシナリオを、変えられなかった事に」
俺が相手にしないのが、不満だったらしい。
アテネは嗤った。
嗤いながら、俺の言葉に傷口を抉ってきた。
人外であるこいつには、俺の感情など理解出来ないのだろう。
だから、当たり前の事を俺に聞く。
何度も、何度も。
後悔しているか?
そんなの⎯⎯⎯
「そんなの、ずっとしているさ。これからもずっと、何時までも、永遠に⎯⎯」
俺があいつらを決して、赦さないように⎯⎯
俺が俺自身を赦す事も、決してない。