11話 絶望出づる復讐の炎
残酷描写ありです。
主人公が病み始めます……(ToT)
「……殺す、」
殺す殺す殺す殺す殺す殺す……。
「殺してやる……」
ポタリと血が流れる。
その血は握った掌か、それともきつく噛んだ唇から流れているのか――――
ポタリ、ポタリと母様の血と混じり、蒸発していった。
魔力が、暴走しているのかもしれない
「絶対に、赦さない……そいつらには、同じ、それ以上の苦しみをっ!!」
俺と母様のみを避けるようにして、炎がゆらりゆらりと上がり始めた。
火事はまだ起きて間もない。
それにこの祭りの中で、すぐさま町を出られるとは考えづらい。
まだ、母様達を殺した奴等はこの町の中に居る筈だ。
「殺す、殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…………楽には死なせない……!」
ブツブツと呟きながら、焦点の定まらない目で、路地裏から騒がしい人混みを見据える。
火事や……母様が殺されたっていうのに、悲嘆に嘆いているのはほんの一部で大半が関係ないとばかりに祭りを楽しんでいる。
あれだけ楽しみにしていた光景が、今は何よりも忌まわしく思えた。
「……逃がさない」
俺は、町へと手を伸ばした。
頭の中で魔法陣を紡ぎ始める。
――賊共を皆殺しにする、魔法を。
けれど、目的の為には、俺が教えて貰った攻撃性の低い魔法では駄目だ。
取り零す可能性がある。
鼠の一匹たりとも、逃がす訳にはいかない。
もっと強力な、町全部を炎で焼き尽くすくらいの。
――全て殺し尽くす魔法が必要だ。
あんな事があった後だと言うのに、俺の脳は望み通りの魔法を生み出そうと思考を加速させていく。
1分もしない内に、脳内で都市殲滅型の魔法が産み出された。
これなら……誰1人逃す事なく殺し尽くせるだろう。
“リュー君はとても優しいね”
ふと、母様の声が頭を過った。
もう2度と聞くことの出来ない声だ。
……やっぱり、それは間違いだったよ……母様。
俺は人間として欠陥品で、壊れている。
俺は優しくなんてない。
だって、俺は――
「赦さないから……全てを燃やして……殺す」
その瞬間、黒くドロリとした靄が、俺の体に纏わり付く。
いや、俺が気付かなかっただけで、ずっと前からそうだったのかもしれない。
沼底から沸き上がるように、ドロリドロリと際限なく溢れ出す。
その靄が俺の体を覆う度に、ジワジワと意識を思考を蝕んでいく。
この靄は、俺を殺そうとしているのかもしれない。
今すぐに逃げるべきなのだろう……けれど
「燃やしつくせ」
俺は町へと、手翳した。
止めるつもりは、毛頭ない。
この身がどうなろうと、知ったことか。
――もう、全部どうだっていいんだ。