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第十三章 「信じていたいもの」   第三話 ~思い出が残りますように(下二)~

 ま、まだ私ですかっ!? そんなぁぁぁ!!!

第三話 ~思い出が残りますように(下二)~



 向こうの方から人工的に作られた竜巻が見えます。なぜ人工的に作られたか分かるかと言えば、このほぼ無風の屋内プール場に突風が吹くことは考えられないからです。更に言えば仮にここで風が吹くことがあるのだとしたら、つまるところ美奈穂さんの魔装備サクヤの風エフェクトであると断言します。

 河童さんの排出量も減ってきているし湧いたところからすぐに私と凜ちゃん、大樹君が消し去るので、美奈穂さんがこちらに来るのも時間の問題でしょう。しかしそれが一番の問題でした。時間……―――このクラーケンさんは広々プールへと向かっているらしいです。予想ですがクラーケンさんはプールに入れば今よりもずっと凶悪になりそうです。移動速度は本当に遅いけど、確実に進んでる……攻撃も通らないんじゃいつかは水浴びを始めてしまいます。私たちはそれまでにダメージを与えられる術を考えなくてはなりません。

「―――そいつがオリジナルー?」

リアちゃんが空を飛んできました。そういえばリアちゃんも悪魔だから空飛べるんだった。

「はいぃ! でもどんな攻撃も跳ね返してしまうんですぅ!」

「やっぱそっかー」

「知ってたのかリア?」

大樹君の問いにエッヘンと鼻を鳴らすリアちゃん。

「イエス! 私の情報網を甘く見ないことだね! ―――……その悪魔は仮の名をタイプCと命名したばかりなのだよ」

「タイプC? ……フェーズ1に名前なんて付ける意味あるのか? 多種多様じゃねぇかあいつら」

「そうだね、普通のフェーズ1なら人の形を維持できないから憎悪の塊に似合った醜い形であることが多い……でもコイツは違う。コイツはね大樹、人に見えてるんだよ」

「人に……!? てことは、あの心臓のところが変な化け物と同じ悪魔!?」

「察しが良いね、ただ「同じ悪魔」ではないよ。あれはタイプA……今回のはタイプC」

少し考える素振りを見せた後、閃いたように大樹君。

「そうか……! タイプAは複数居た! 俺の知ってるだけでも同じ形の奴を2体見てる! タイプCも一緒で、コイツよりも前に確認されていたってことか!」

「その通り。私の調査の結果、今各地で似たような悪魔が確認されてる。美奈穂もそのことを危惧してた」

「ならコイツに対抗する手段はもう判明してるのか!?」

「いや、残念だけど今研究中。捕縛は成功してるから結果待ちだね」

「いやいやいやっ! じゃどうすんのこのタコちゃん!」

ツッコミを入れる凜ちゃんにも、リアちゃんは冷静に言葉を返します。

「色々やってみるしかないね。ただこれは好機でもある……最前線の研究資料を提出できるかもしれないからね……♪」

冷静だと思ったら、最後は怪しげな笑みでした。やっぱり悪魔……性質が少し私たちとは違うのかもしれません。

「どんな攻撃をしたのか教えてくれるかい?」

私たちは子河童を処理しつつゆっくり歩くクラーケンさんに歩幅を合わせます。その間にリアちゃんに今までの経緯を説明。

「―――電気が通るかもしれない、か。見た感じ水属性だしね……十分ありえると思うけど……。それより私は紅葉の話が引っかかるなぁ」

「私です?」

「うん、クラーケンの口から出てくる河童がさっきより減ってる、小さくなってるって話」

「気のせいかもしれませんけど……」

「でもそれがもし本当だとしたら……コイツの本当の弱点が見えてきたような気がするんだ」

「どういうことだ?」

「電気以外に弱点があるってことーっ?」

「水分補給のためにプールに向ってるってことは、水分をなくせばいい。電気で感電させるんじゃなくて―――……火で水分を逃がしたらどう?」

「わぁっ!!」

「なるほどそれだッ!!」

「炎エフェクトってーと……ほのりんかな?」

「そうなりますねっ! 穂歌ちゃんを急いで呼びましょうっ♪」

「私が空飛んで呼んでくるねっ。ついでに万が一に備えて今コイツの向かってるプールの水を抜くように交渉してみるよ!」

「そうだな! 頼むぞリアっ!」

リアちゃんの簡易化して小さくなっていた羽が大きくなり、羽ばたいていきました。

「俺たちはここで時間稼ぎだな!」

「はいっ! 頑張りましょうっ!」

「イエッサーっ♪」


 ―――と、意気込んでクラーケンさんへと刃を向けた時でした。


「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオヤァアオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアヤアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「うわあああっ!!!?」

「ふ、ふぇえええっ!!」

「うっそなんじゃなんじゃぁあああっ!??」

なんと今の今までノロノロニョロニョロとプールに向っていたクラーケンさんが突然私たちの方へ方向転換し猛スピードで突進してきたのです!! なんだかクラーケンさんは機嫌が悪いようです。

「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「こいつ……っ!! こんな速く走れたのかよッ!!!」

「私も初めてですよぉっ!!」

「おーいっ! 私だけ反対に来ちゃったけどそっちは大丈夫ー?」

「はーいっ! 大丈夫ですぅうー!」

「なんなんだよこのタコちゃんっ!! 情緒不安定にもほどがあるってばー!!」

話をする暇も与えないとでも言うように、今度はクラーケンさんが足をぎこちなく動かし始めました!

「何か来る……!?」

「はいっ! 気を引き締めて―――ッ!!?」


 またしても突然、クラーケンさんの足が全方向に向かってビョーンと伸びます!


「紅葉ッ! 捌けるか!?」

「大丈夫ですッ!」

私は前方から驚くべき速さで伸びてくる細く尖らせた大きい足を寸前で躱して輪切りにします。大樹君はというと、目を閉じて正面から飛んでくる足を待っています。

「大樹君ッ!!」

しかし私の嫌な予感は杞憂でした。大樹君がキッと目を開いて鎌を一瞬で振り下ろすと、クラーケンさんの足は根元まで真っ二つになりました! 斬れたところから見るに、あの細く尖らせた大きな棘の中心に真っ向からぶつかったと思われます。

 クラーケンさんを挟んで向こう側からも驚きの声。

「あれっ!!? タコちゃんの足斬れたよッ!!? どいうことやっ!!」

「分からんがチャンスってことに違いないッ!! 行くぞ二人ともっ!」

「はいっ!」

「うぇーいっ!」


 ――――でも、足が切れたのはその時だけでした。この後の私たちの攻撃は足を伸ばす前と同じで跳ね返ってくるだけだったのです。


「どういうことだよ……っ!!」

「はぁ……はぁ……分かりません」

「正直魔力の使い過ぎで私とみっちゃんは限界近いよ……ダイキング」

「あ、ああ、そうだよな……。それにしてもリアの奴遅すぎる!! 穂歌探すのにどんだけ手間取ってんだッ!」

あれから10分は経っているはず……そろそろ穂歌ちゃんが来てもいい頃です。

「ゴォォオオオヤァアアアアアア……ッッ!」

「……?」

「? どうした紅葉?」


 私の気のせい? え? でもでも……! 私は気付いてしまいました。


「ッ!! 大樹君凜ちゃん! このイカさん(?)大きくなってませんかッ!!!!??」

「えっ」

「言われてみれば……!!」

全然クラーケンさんは先程とはスケールが違っていました。

「も、もしかして……っ!! この伸びきった足の先って……!!!」

「はぁッ!!? まさかプールじゃねぇだろうなぁあああっ!!?」

そうじゃなければこんなにクラーケンさんの身体が大きくパンパンになったりはしません。私たちの予感は的中していることでしょう。

「どうすりゃいいんだよッ!!」

「攻撃はもう効かないよぉぉ。今さっき足が斬れたのはあれがタコちゃんの限界だったからだったんだよきっと……だから数本斬られるの覚悟して伸びたんだよ……」

「凜ちゃん! 今はそんなことよりもどうやってこのピンチを乗り越えるかを考えましょうっ!」

「……うん、そうだね! ほのりんはまだ来ないみたいだし私たちでできることをやろうね!」

「だけど俺たちにできることって……?」

大きくなっていくクラーケン氏を見ながら頭を捻る私たち……クラーケン氏はまた一回り大きくなったところで、ようやく成長を止めました。

「これが限界なのか?」

「そうみたいです?」


「ンンンンンンゴォオオオオオオオオオオオオンンンンヤァアアアァァアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


再び雄叫び。口が大きく開かれたかと思うと、中から成人(?)河童が数人出てきます。

「キューリィイイイイ!!!!」

「うおわっ!!?」

一瞬で大樹君と私の間に割り込んできた河童さんは大樹君へとひっかき攻撃を放ってきました! とっさに大樹君は身を引いて躱します。

「にょわぁあっ!!?」

振り返ると凜ちゃんも河童さんに押されています!

「大樹君! 凜ちゃ――――!!」

当然私を放っておくわけもなく、河童さんは正面から襲い掛かってきました! 鍔迫り合い(相手は手刀)になります……!

「んぅ……くぅ……っ!!」

さっきまで簡単に弾き返せた手刀が何百倍も重く感じる……!!? やっとの思いで大樹君が一匹撃破した後に言います。

「……ゴーヤがキュウリになっただけで……ッ! なんだコイツらっ!! 今までのとはまるで違うぞッ!?」

その直後、凜ちゃんも一匹撃退に成功。しかしすぐに二匹目と戦闘が始まります。

「ありえん! こんなんありえん! 早く来ておくれほのりんじゃなくてもいいからもうとにかく誰か助けておくれぇえええっっ!!!」

一匹一匹がこの強さ……しかも無限に口から出てきています。倒せないわけじゃないけどこの勢いで増えたら私たちの殲滅速度が追い付かなくなりそう……!! ……しかも。


 ―――ガチィイイイインッ!!!


「おい凜もう少し離れろ鎌が当たっちまう!」

「そ、そんなこと言われてもなぁあああああっ!!?」

マリアとピナータが干渉します。凜ちゃんは河童さん3体相手に身動きが取れないみたい……大樹君も似たような感じでどうしても自分たちの間合いで戦わせてくれません。

「はぁっ!!」

手の空いた私が急いで移動し二人に絡み付いている邪魔な河童さんの背中を斬ります。

「今のうちに離れてください二人ともっ!」

「おおっ! 悪い助かるっ!」

「ありがとよぉおっ!!」

大樹君と凜ちゃんの間合いは男女の差はありますがほとんど同じ……しかも大樹君はブンブン振り回しますし凜ちゃんもグルグル回してます。あの速度でまたぶつかりでもしたら一気にリズムが崩れてしまいます。


 ―――バチィイイイイイイインンッッッ!!!


「あっ!!」


 悪い予感は見事的中……河童さんたちが巧みに二人を押していき、鎌と槍がぶつかってしまいました。凜ちゃんのピナータが空高く弾かれて形状変化を解除します。

『ぴなぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁああぁああぁぁぁあああぁあぁぁあぁぁぁぁ―――』

「ピナたぁああああああああんんんっっ!!!」

「ごめん!! くそこいつらワザとこっちに誘導してたのかッ!!!」

「凜ちゃん早く探しに行ってあげてっ!」

「でも二人じゃ対応できないよこんな数ッ!!」

「馬鹿っ! 魔装備持ってないんだからどちらにしろあぶねぇって言ってんだよ!」

「あ、そうね! ごめん二人とも! 頼むよっ!」

「こっちこそ悪かった! 早く見つかるといいな……!」

「うん! 行ってくる!!」

と、凜ちゃんが後ろの簡易的な林へと入っていくと同時にドサッと鈍い音。何の音だろ……?

「は? ……な!! 紅葉ッ!! おい紅葉ッ!! 大丈夫かっ!! しっかりしろ!!」



 ああ……どうやら私が地面に倒れたみたいです。自力で出力できる魔力が底を突いたということのようです。


「あと、任せます大樹君……♪」





 はいお疲れ様です奏風です! 紅葉ちゃんにはずいぶん長い間今回語っていただきました! たまにはいいんじゃないかということで! まだまだ続きそうです御樹……どうか最後までお付き合いをよろしくお願いいたします!

 とはいえ、僕も最近は筆が完全に止まっておりこの十三章が終わるまでに十四章を書き終えなければ十三章EXが投稿できないという状況になっています。さあ僕も彼らと同様、踏ん張らなければならないようですね!!

 来週もよろしくお願いします! ありがとうございました!

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