第一章 「御魂世界事情」 第一話 ~新生活~
皆さん初めまして奏風です。読みづらいですね。「カナタ」です。間違って「ソウフウ」と呼ばれたりすることもありますけど、カナタです。奏風。
「御魂の神樹!!」の連載を始めました! 正直書き溜めもそんなに多くないんですけど、これから頑張ります! 連載頻度は……どうでしょうかね。1週間に1話……いけるかなぁ? ぐらいですね。よろしくお願いします!
第一章 「御魂世界事情」
第一話 ~新生活~
「―――どうだ? 新しい家は?」
「まぁまぁだな……。っていうか、ここは親父の昔住んでたところなんだろ?」
「おう。まぁ改修改装で俺の住んでた頃とはだいぶ変わってるらしいけどな!! ……御魂市か。久々に行ってみたい気もするが、なにぶんこっちも忙しくてな! 時間に余裕ができたら寄るから部屋はいつでもキレイにしとけよ?」
「はいはい、分かってるよ」
「ああそうだ。大家の婆さん生きてるか? 俺も学生時代世話になったんだよ―――」
俺の名前は甲賀大樹。この春、ここ御魂市に移り住んできた高校1年生だ。引っ越した理由は簡単で、4月から俺はここから近い御魂高校に入学するからである。実家も大して遠く離れているわけでもなかったが、父の紹介により、それなりに広くてキレイなマンションの一室を借りられることとなった。これからここで一人暮らしすると思うと、期待で胸が踊る。
親父と電話を終え、俺はご近所さんたちへ挨拶を済まし、部屋に戻って荷物を整理することにした。準備は万全だ。
「よし。やるか」
ダンボールの中の荷物を的確な位置に次々と置いていく。大した自慢ではないが、掃除やインテリアのセンスは結構ある方だと自負している。だからこうしているだけで自然と鼻が鳴る。
―――と、実家で育てていたアロエの鉢植えを日当たりのいいベランダの傍に置きに来た時だった。
……!? ベランダに……誰か、居る……?
ベランダに人影が見えたような気がして、俺は身構えた。薄いカーテンが掛かっていて、それがどんな人物かまでは分からない。
恐る恐るカーテンを女々しくちょっぴりだけ開け窓の向こうを覗くと……そこにあったのは女の子の後ろ姿だった。身長はやや小ぶりで、真っ黒で軽くくせ毛のロングヘアー。
彼女も俺のことに気付いたらしく、瞬間、目が合った……明るめ紫色の瞳。純粋そうな顔立ち。後ろ姿は大人びて見えもしたが顔を含めると、なんていうか愛らしいというか。うん、かわいい。
「!!」
彼女はびっくりしたような顔をして……その後俺は信じられない光景を見た。
「―――えっ!? 消え……? いや、違う!!」
一瞬消えたようにも思えるが違った。ベランダの手すりから女の子が飛び降りたのだ! 一応説明しておこう。ここはマンション4階。408号室。
俺はとにかく焦った。急いで窓の鍵を開け、外に出る。そして下に向かって叫ぶ!
「おい! 馬鹿!! 早まるな!! そんなことしたら君のお父さんお母さんが泣く―――……ぞ?」
鉄臭さを感じる胸の苦しい絵が広がっているのだろうと覚悟してベランダから下を覗いたが……そこに先ほどの女の子は居なかった。
「……? ……いや、確かに今ここに居たはずなんだけどな……」
疲れているのかな? 変にかわいい女の子。4階から落ちたと思ったら消えた……? ん? あれあれ? これはまさか?
「いや、いやいやいや。そんなまさかな。……。ここ……もしかして”いわく付き”だったりしてな……。ハハ、ハハハ……」
親父に確認しようと思ったが、電話は繋がらなかった。俺の父、甲賀平治は、運送業をしていて昼夜大型トラックで日本中を飛び回る多忙な人物だ。今は忙しいんだろう。
「……また後で掛けよう……」
荷物が全て片付き、俺はテレビ前に置いた2人用ソファーに寝転がる。そうしてさっき起こったことが脳裏に浮かんだ。今思い出すだけでも背筋が冷たくなる。俺があの女の子を恐ているのにはもう一つ理由がある。
なんであんなもの持ってたんだろ……。
目が合った時、左手に持ってたのは……あれは間違いなく剣だった。日本刀かと思ったけどどこか、もっといびつな形をしていたような……。
読みが正しければ、これからずっと俺はあんな悪霊に命を狙われることになるのか。ううむ。なんてことだ。だがしかし、かわいかった……。
携帯を開くと、妹からメッセージが着ていた。
『いいなぁ一人暮らし!! 私もしたい! 兄ちゃん、その部屋私にくれ!』
「空気の読めないコメントだな……」
俺は少し笑った。こいつ、きっと真実を知ったら怖くて夜寝れないだろうな。ここは良き兄としてかわいいかわいい妹に返事をしておこう。
『この部屋は危険だ』
―――返事はすぐに着た。
『ぇ~何その中二発言(´・ω・`) とりあえず見るだけ見に行っていい?(/・ω・)/』
『今日は荷物整理に忙しいな。また今度だ』
『シャスケェ……(´・ω・`) え? もう終わってるよね? 物音しなくなったし』
「……は?」
『は? じゃないよね? もう終わってるもんね? 入るよ?( ゜Д゜)』
今の「は?」は、メッセージではなくリアルリアクションなんだけど。発言なんだけど。なにこれ怖い怖い!!!
「は? は? は?」
―――ガチャッ―――
「うわぁああああああああああああああああああ!!!」
「なんじゃうるさいな兄ちゃん。お隣さんに迷惑です!」
いきなり玄関からリビングへバタバタと駆け上がり現れたその女の子は、髪の色は黒赤な俺よりも全然明るい赤色をしていて、長くはない。ふわっとパーマを掛けている言わばゆるふわボブカットとか言うやつである。瞳の色は俺とほとんど同じ黒にほんのちょっと赤が混じる程度の色をしている。少しキリっとした顔立ちで、母さんに似た美人体系である。
無論「兄ちゃん」と言ってくる辺りで分かるとは思うが、これがうちの妹 甲賀澪である。
「兄ちゃんお前に住所教えた記憶ないんだけど!!」
「お母さんが心配してたから見に来たよ」
澪は小さく笑ってため息を吐いた。なるほど、母さんの差金か。それなら澪が住所を知っているのにも頷ける。母さんは日々多忙な父のため、ほとんど一人で弟、妹、そして俺の面倒をみてきてくれた。きっと大変だったに違いない。俺が一人暮らしを始めようとした理由の一つでもある。これで少しでも母さんが気苦労が減ればいいけれど。
「それで、この部屋のどこが危険だってー?」
どうしようか迷ったが、どうせ澪のことだ。真面目に話したところで気にしないに決まってる。だから敢えてここはありのまま今起こったことを話すぜ。
「ここ、「出る」んだよ……。さっき見てしまったんだ。ベランダで刀を持った若い女と目が合った」
「へぇー。それでその後どうしたの?」
「下に飛び降りたと思ったら居なくなってたよ」
「……。兄ちゃん……」
え? 怖いの? あんまりこういう手の話は通用しないのが俺の知っている澪だが。でも、そうだよなぁ……もうこいつも中三だもんなぁ。小さい時に得意だったものが不得意になってたっておかしくない―――
「……疲れてるんだね。入学式まであと3日あるんでしょ? ゆっくりすることだねー」
ああそうだね。こいつはこういう奴だ。今も昔も変わらずこういう奴なのだ。
「……ありがとな。お前の言う通り残りの休みは食材とか調味料揃えながらゆっくりすることにするわ」
「お大事にっ」
「お気遣いありがとう」
とりあえずまだ完全に冷えてない2リットルペットボトル緑茶を冷蔵庫から出した後、棚から2つコップ取りそれに注ぐ。テーブルに持って行って1つは澪の取りやすい位置に置く。もう1つは向かいに置き、そこに俺は座る。
「ああ、そうだった。兄ちゃん」
「なんだよ」
「今日は泊まりだからそのつもりでいてね」
不意に口に含んだお茶が気管に詰まる。
「ゲホッ、カハッ……。―――それは冗談だ!!」
「え。そこは疑問形じゃないの? 「それは冗談で言っているのか?」とかじゃないの? なんで決め付けてるの? 本気だったらどうするの?」
「本気じゃなんとなく兄ちゃん困るからだ」
断じて違う。兄ちゃんお前と一緒に寝るのが恥ずかしいわけじゃないからね。ドキドキするとかじゃないんだからね。そこんところ誤解しないでよね。
近頃のアニメとかラノベとかでよくある「血が繋がってない妹」設定はないんだからね。ちゃんと兄ちゃんお前と血が繋がってるからね。ほぼイコールだからね。
「友達がここの近くに住んでるんだー。だから泊まった方が楽じゃーん」
「実家だってそう離れてないだろ。駅1つ半ぐらいしか距離ないじゃないか」
「兄ちゃん、その一々めんどくさがる癖直した方がいいよ? 人を説得するのだって非効率だし、元々そんな嫌じゃないんでしょ?」
ううむ。こいつの言うことはもっともだ……。マジで面倒な時は完全否定するんだけどな。
「そういうことで、私はこれからも度々兄ちゃんの部屋でお世話になるからよろしくね♪」
あさっての方向に向かって愛嬌を振りまいている。おい、我が妹よ、俺はここだ。
「なんだそれは。っていうか誰に向かって言ってるんだ……まぁいいや。布団1枚しかないからお前が使っていいよ。俺はソファーで寝るわ」
「ありがとね」
「おう。その友達にも伝えといてくれ。「君に会う度に妹が兄ちゃんの布団占領してるから何とかして欲しい」ってな」
「まぁ、言わないけどな♪」
今の「言わないけどな」は澪の台詞である。こいつはたまに雑な言葉遣いになる。いきなり男っぽい口調になる。でも俺はそれが嫌いじゃない。むしろ面白いから好きである。っていうか、前に一度面と向かって「たまに出るそれ、面白いな」って澪に言ったら調子に乗ってそのまま野放しにされている。女の子としてはもうちょっとおしとやかで居てほしいわけだが、時々出てくるトゲっていうのは人を刺激するにはちょうどいいと思うんだ。―――俺はそんなちょっと気に入った妹の一部分を見て少し微笑ましい気分になった。
おっと、失礼。私情が過ぎたな。俺は予備にもらった部屋の鍵を澪の前に見せる。
「ほら。鍵やるよ。絶対無くすなよ?」
「恋人みたいだね///」
「兄妹ってのは恋人未満である規定はないだろ」
一度顔を固めてから、サッと顔を横に動かして苦笑い。
「ふぅ……でも恋人以上になったら危ない関係だよね」
うん。そうだね。
「……。お前の選択肢は2つだ」
「分かってるよー……。受け取るよ当たり前じゃん」
「当たり前なのかどうかは既に俺の想定範囲外での話なんだけどな」
そして鍵を澪に渡す。
「それじゃ行ってきます!」
早いな。鍵渡したら行動早いな。澪はそのまま部屋を出て行った。
「改めて一人になると、やっぱり少し怖いな……。何も起こらなきゃいいけど」
―――そこで携帯の着信音。ダメだな、この程度で俺は少しビックリしてしまった。相手は親父だった。
「もしもし」
『電話くれたろ? どうしたんだよ! もう父さんの声が恋しくなったか!!』
「うっせぇよ! んなわけあるか!」
『で、なんの用だってんだ。今パーキング寄ってるから時間あるぞ』
パーキングエリアか。仕事中なのにちゃんと電話はしてくれるんだな。結構親父ってマメだよなぁ。
「親父がここに住んでた時、部屋で……、いや、近所で亡くなった人とかいる?」
かなり緊迫した空気で発した声だったが、電話の向こうでは爆笑の渦が巻き起こっていた。
『ハッハッハッハハハハハハ!!!!!! なんだお前どうしたんだよ!!!』
これは正直に言うしかないな……。
俺はとりあえずベランダで見た女の子について親父に相談することにした。話を全て聞き終わるまで、いや、聞き終わった今でさえずっと爆笑している親父にはある意味頭が上がらない気持ちだ。よくもまぁ今まで笑ってられたもんだな。こっちは大真面目に話しているというのに!!
『澪にも話したのか?』
「ああ。アイツは軽くスルーしてたけどな。ってか、アンタ澪が来ること知ってたのかよ!!」 先に言ってくれれば叫ばなくても済んだのに!!!」
『ガッハッハ悪かった悪かった!! まぁアイツはそういうの信じないタチだからな』
親父はちょっとしたサプライズが好きな笑顔の暑苦しい男性だ。今も電話から聞こえる笑い声で暑苦しい笑顔が俺の頭に浮かぶ。
『―――黒髪に多少の童顔で紫の瞳……。刀使い。これで間違いないか?』
笑い声が一瞬止んだと思ったら、急に真面目に聞き返して来やがった!?
「ん? あ、ああうん。そうだけど」
『それはお前、亡霊じゃねぇよ』
「は!? なんで親父がそんなこと知ってんだよ!! 証拠は!?」
『その子、美珠さん家の紅葉ちゃんだぞ多分』
……はい? 美珠さん家の紅葉ちゃん?
「って、誰だよッ!!!」
さっきとは打って変わって暑苦しいバカ笑いから、優しげな口調になって親父が言う。
『……フッ。大樹。「御魂神樹神社」って知ってるか?』
「なんだよ藪から棒に。神社? ここに神社なんてあるのか?」
『ああ。紅葉ちゃんのことが気になるなら行ってみるといいぞ。どうせまだ春休みなんだろ?』
「おい親父……。さっきから自信満々でその紅葉ちゃんとやらのこと話してるけど本当に幽霊じゃないんだろうな? 証拠もなく俺はそれを信じていいんだろうな?」
『「多分」って言っただろうが馬鹿息子がッ!!』
「なんでツッコミ!!?」
『それにしても……さすがに長話しすぎたなぁ。目的地まで時間ギリギリになっちまったよ』
そうだった。仕事中だったなこのクソ親父。
「御魂神社だな? わかったよ。行ってみることにする。こっちは気になっちまって夜も怖くて寝れ……いや、寝れるだろうけど。」
今日中に親父に電話が繋がらなかったら寝れなかったかもしれないということは、今は言わないでおこう。言ったらきっとまた笑われる。
『おう! 気を付けていけよ! もし神主が居たら俺がよろしく言っておいてくれって言ってたって言っとけ』
「知り合いなのか?」
『知り合いじゃなかったら紅葉ちゃんのこと知るわけないだろ』
『……それに、もしかしたらこれからお前は世話になるかもしれないからな』
……? 少し疑問の多い発言だけど。なんのことだ?
『じゃあな! 澪のこともよろしく頼むぞ! くれぐれもかわいいからって変な気は起こさないようにしろよ!!』
「―――は!? このクソ親父ッ!! かわいくたって血の繋がった実の妹に変な気なんか起こさねぇよバーカッ!!」
―――もう電話は切れていた。
「……」
ありがとうございました! 奏風でした! どうでしょう? 「御魂の神樹!!」は? あ、ちなみに読みは「御魂の神樹!!」ですよ。
うーん。まあ、あれですよね。「1話短すぎて全然世界観わかんねぇよゴミかよ!」って反応ですよねあははは。
1話は甲賀家のお話でしたね。甲賀君が甲賀さんと電話しているところから始まってその後甲賀君の家に甲賀さんが上がり込んで堂々と居候宣言! その後甲賀君は甲賀さんと再度通話。というもはや甲賀甲賀言ってれば終わるような内容でしたね!
次回はメインヒロインの登場です! それと同時に、SF臭が色濃くなりますよ……! 乞うご期待です!
最後まで読んで頂き本当にありがとうございます! これからも連載頑張ってまいりますので、どうかお付き合いの程を宜しくお願い致します!