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「ひーっかかった。引っかかった。菜耶子には、そんなのないよーん。」
「麻奈美!だましたわね!」
私は、自分の口元にあった手を、慌てて元に戻した。
「騙したって…。菜耶子、素直じゃないから、仕方がない。」
菜耶子の方に、真奈美は指を突きつけた。
「何よ!」
菜耶子は、座りながら、後ろに下がっていく。
それを、麻奈美が指を突きつけたまま、追いかけていく。
「正直に言いなさい。」
「すごく好きよ。猫。」
壁際まできた菜耶子は、真奈美にだけ聞こえる程度の声で、言った。
「よーくいえました。偉いね。」
真奈美は、小さな子供に言うような感じで、菜耶子にいった。
「で?」
「なに、ちょっと怖い声出してるの?菜耶子ちゃん。」
麻奈美は、そう言いながら、菜耶子の体を軽くつついた。
麻奈美は、元の真面目な声に戻り、
「で、だから、大人しかった[ろく]が、昨日も昨日も、1人でお外行ったから、菜耶子、元気なかったのね。」
「うーん。そうなのかな?」
「絶対そうよ。菜耶子。菜耶子は、猫好きで、[ろく]が、お外で、怪我しないかとか、迷子になったらどうしようとか思ってるのよ。」