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狩りの誘い

翌日、ユウはレダスに狩りに誘われた。

といっても、一緒に獲物を獲ろうと言うのではなく、少し離れた場所で見ていればいいと言われただけだ。


何でも、レダスがピリッとしなかった所為で、巨人たちは好物の肉をしばらく口にする事が出来ないでいたらしく、レダスが元に戻ったのなら、早速その肉を皆で久しぶりに食べようという話になったらしい。その様子を見ていてくれと言うのだ。


獲物は肉食の大きなトカゲらしいのだが、これを十人程のグループで罠に追い込み、槍で止めを刺して仕留めるのだそうだ。

そのグループのメンバーを仕切るのがレダスの役目だ。


「おいレダス。お前本当に大丈夫なんだろうな」

巨人の森のその先の、岩と樹が疎らに入り組んでいる荒地に差し掛かったところで、カージュがレダスに声を掛けた。


「心配するな。お前は俺の指示通りに動いてくれればいい」

「へっ、そいつは楽でいいや。楽しみにしているぜ」

レダスの言葉にカージュはそれだけ言い残し、軽く手を振り離れて行く。

その背中はたくさんの槍を背負っていて、剣とは別におおきな鍬の様なものまで持っている。

少なくとも機敏には動けそうもない重装備だ。


カージュを見送ったレダスは、チュラとべティールを伴って、ちょっとした丘の上にあるこの辺りでは最も大きな樹に向かい、その樹の一番太い枝に登って、そこでユウを降ろし座らせた。

すぐ近くに、チュラとベティールから受け取って、フィノとルティナも座らせる。


「ここなら俺たちの狩りの様子がよく見えるはず。見ててくれ、必ずしとめて見せるから」

そしてレダスはチュラとべティールに手振りで合図し、散って行った。


「何だかわくわくしてきますね」

少し先の岩の向こうにレダスが見えなくなると、ルティナは座ったままぴょこんぴょこんと近づいてきて、ユウの隣に収まった。


「ほんと、どんな狩りをするのかしら」

フィノはチュラに降ろされた場所から立ち上がり枝の上を軽く歩いてルティナとは反対側のユウの隣に腰かける。


「何だか大がかりな狩りみたいだな。彼等がこれだけ準備するなんて、一体どんな獲物なんだろう」

ユウの言葉に、フィノもルティナも頷いた。


獲物はオオトカゲだとは聞いているのだが、それが一体どれほどの大きさなのかと、若干不安になってくる。

何処へ身を隠したのか、チュラやべティールを含め、すべての巨人がユウの視界から消えている。


少しして、


ピィーーー


遠くから長い口笛の音が聞こえてきた。

獲物を見つけたという合図だ。


「カージュ、キの八」

直後、レダスの声が聞こえ、と同時にユウ達から一番近い岩の向こう側から、ザッ、ザッ、という音が聞こえてきた。

そして、その音以外の音が綺麗に聞こえなくなる。


しばらくして、


ギャヴォォン


遠くで何かが声をあげた。


それを合図に様々な音が聞こえてくるようになった。

枝を揺らし、岩を穿ち、地を蹴るような激しい音に、レダスの声が混じって聞こえてくる。


「チュラ、一」

「カロ、三」

「ビッラ、七」

「ベティはキの二だ」

意味は解らないがメンバーに指示をしているのはわかる。

その指示に従っての事なのか、ユウにも獲物が近づいて来るのがはっきりわかった。


そちらの方向を注意して見ると、巨人たちの姿も見え隠れし始めている。

フィノがユウの隣で立ち上がった。

それに時を合わせたように、ユウから見て右手に当たる小さな林の中から、大きな黒い塊が飛び出して来る。つまりあれがオオトカゲなのだろう。


「ジュナ、八」

レダスの厳しい声が響く。

と、ほぼ時を同じくして、女の巨人も飛び出して来て、獲物の行く手を槍で突く。

それを避ける為、オオトカゲがユウ達が座る樹の方へと向きを変えた。

ユウの目にもオオトカゲの姿がはっきり捕えられるようになる。

それは、オオトカゲなどではなかった。


鋭い歯がびっしり生えた大きな頭を持ち上げて、前傾させた立派な身体とそれに続く太くしなやかな尾をたくましい二本の後ろ足で支えて立つその姿は、まさにティラノサウルスそのものだ。


しかも、その大きさは巨人の二倍ほどもある。ユウ達ならその大きな口で一飲みされてしまう事は間違いない。

そのティラノサウルスがユウ達の座っている樹の方向を目指して走り始めている。


ユウは思わず後ずさりしようとして、フィノに背中を支えられ押し戻された。

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