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方針変更

ユウは次々と休みなく盾にぶつかる激しい衝撃に耐えながら、周囲の状況を窺い見た。


視界の左端ではフィノが、右端ではアーダが、それぞれ三匹の狼を相手に戦っている。

しかし、彼女達を狙って定期的に発せられる狼達の雷撃は彼女達の所へは向かわずに全てユウの所へ集まってきている。

二人を狙った雷撃は途中で大きくカーブして、必ずユウの盾にぶつかっているのだ。

唯一ボス狼だけは直接ユウを狙って攻撃してきている様なのだが、その雷撃だけは曲がらずにやはりユウの盾を直撃している。

ボス狼にはルティナが矢の雨を降らせているが、その合間を縫うようにして撃ってきているらしい。


正面のボスのものはともかくとして、左右の六匹の狙いは明らかにユウではないにもかかわらず、彼らの雷撃はまるで強力な磁石に引き寄せられる鉄球のように、ユウの盾に向かって来ている。

やはり彼等の放つ雷撃は、何故か全てこの盾に向かってくるようになっているらしい。


雷撃の衝撃は時にかなり大きいものがあるものの、それでも盾はビクともしていないので、雷撃を受け続ける事については問題はなさそうだ。

しかし、だからと言って下手に盾を動かすと、雷撃の軌道が変わるかもしれないので、考えなしには動かせない。


雷撃は、ひっきりなしに盾に当たり、その衝撃が持ち手を伝ってユウの身体を振動させている。

しかし、ユウにダメージらしいダメージは無い。

この盾は、このくらいの攻撃では壊れる事はなさそうだ。


とはいえ、何となくではあるものの、盾は重く感じるようになってきている。

目の前の地面に半ば突き刺す様な格好で持っている、というか倒れないよう支えている訳なので、直接的には重みを感じる訳はないのだが、それでも、盾が重くなってきている事はわかる。

雷撃を受ける時、初めはその衝撃で盾が動かないよう必死に押さえていなければならなかったのに、次第に楽に押さえる事が出来るようになって来ているのがその証拠だ。


ふと見ると、フィノが動きを止めている。

ついさっきまで狼達を追いかけていたはずなのだが、深追いするのはやめたようだ。

アーダも少し前から派手に動く事を止めている。


と、何処か近くに雷が落ちたのか、一瞬、まばゆい光がユウの視界を奪い、間髪入れずに爆音が鳴り響いた。

これは本物の雷だ。

かなり近くに落ちたらしい。


この間を利用して、これまで左右に移動しながら雷撃を放っていたボス狼が、一転、ユウ達から距離を取る方向に動き出している。

そして、ルティナの矢の射程のギリギリ外に退避した。

他の狼達もこれに追従、そこでボスの周りに集まって、こちらを向いて横一列に整列する。

別に逃げた訳ではないらしい。


フィノもアーダも後退していく狼達を追いかけるような真似はしなかった。

一列に並んだ彼等の姿を横目に、ユウの方へ戻って来る。

少しして、ルティナも矢を射かけるのを止めた。


「ユウ様、気を付けてください。何か仕掛けてくるつもりかもしれません」

「そうだね。けど、このままでは埒が明かない所だったから助かったよ」

「彼等の動きは予想以上にすばやかったですからね。何にしろ、あのまま続けているよりは一息つけて良かったかもしれません」


狼達は一列に並んでこちらを見つめたまま動く気配がはない。

こちらをじっと見つめている。


「でも油断はできないぞ、ヤツらは群れで連携した動きをするようだからな。当たらない雷撃をいつまでも続けている所を見ると、頭がいいのかどうかは微妙だが、ヤツらなりに考えて動いている事も確かみたいだし」

「きっと、彼等はこの盾が厄介だという事に気が付いたんだ思います。なので、今度はこの盾を破る策を練っているのではないでしょうか?」

「奴らがすばしっこいのは認めるけど、そんな頭がある様な気はしないんだけどな…」


ユウはボス狼を真っ直ぐ見つめた。

何か動きがあるとしたら、彼が最初に動くだろうと予想していたからだ。


と、そのボスが短く声を上げた。

 ウォン


そして、軽く身を縮めてから、そのばねを使ってこちらに向かって走り出す。

他の狼達も、一歩遅れて追従する。

彼等はどうやら特攻を選んだようだ。


アーダが吐き出すように言ってくる。

「あたしが言うのもなんだけど、ヤツら、あまり頭は良くなかったみたいだな」


ユウは、急速に近づいて来る狼達を盾越しにしっかり目で追った。

彼等の雷撃に備える為だ。

しかし、しばらく待っても彼等に雷を撃ってくる様子は見られない。

明らかに先程までとは動き方が違っている。


「気を付けてください、近づくまで雷を撃たないでおいて、大きくジャンプしてユウの盾を飛び越えてから撃ってくるつもりかもしれません」

ルティナの忠告に、フィノもアーダも軽い調子で言い返す。

「接近戦なら望む所よ。返り討ちにしてやるからね」

「この槍が届く距離なら負けはしねえ」


実際、彼女達の得物が届く範囲まで来れば、二人がやられる可能性は低いと言える。

だが、何頭もの狼に同時に飛び掛かって来られれば、どうなるかはわからない。


加えて、盾の死角に入る事で雷撃の軌道が曲がらなくなるとしたら、彼等の攻撃範囲は一気に広がる事になる。

フィノやアーダの間合いに入らなくても攻撃ができるようになるからだ。

多少のリスクを冒してでも、正面から盾を跳び越える事で盾の力を相殺する、彼らはそんな風に考えたのかもしれない。


狼達は一列になって近づいて来る。

それを迎え撃つべくルティナが矢を番えた。

彼等の事を仕留める為の矢ではなく、陣形を崩す為の矢だ。


しかし、ルティナはその矢を撃てなかった。

矢を射かける直前に、上空から雷が、遂にユウ達の目の前に落ちたからだ。


これまでも、時折雷は落ちていたのだが、これほど近い位置に落ちたのは初めてだ。

今までで最大級の衝撃に、身体が爆風に持って行かれそうになる。

ユウはその衝撃を、何とか耐え凌ぐべく、必死で盾を押さえつけた。

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