表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/200

オオトカゲ

ユウが剣を抜いたのは、ほとんど自身の身を守る為の行為でしかなかった。


だが、フィノのそれは違っていた。

フィノは背中の剣を引き抜くと、目の前に現れた全身が赤茶けた鎧のようなオオトカゲに向かって走り出したのだ。

その様子を見たアーダとルティナも其々動く。

アーダはフィノの後ろに続き、ルティナはその場で援護の矢を引いている。


しかし、ルティナの放った矢がオオトカゲに届く事はなかった。

オオトカゲが炎を吐いたからだ。

フィノとアーダは攻撃を中断し、回避行動に移っている。


炎はユウの居る場所までは届かなかったが、それによる熱波はユウも避けきれなかった。

思わず後ろに飛びずさる。

「あ、熱っ」


炎の熱は広範囲に至っているようで、少し先で、誰も触っていないのにも関わらず、そこに有った岩の一つが崩れ落ちた。

こんな状態ではとてもオオトカゲに近づく事など出来そうもない。

少なくとも、正面から向かって行くのは無理そうだ。


「逃げるぞ」

ユウはルティナを促して、オオトカゲから逃れる方向へと引き下がった。


フィノとアーダはオオトカゲから距離を取りつつ左右に散るべく動いている。

が、オオトカゲはその大きな体を左右に動かし、その一帯に炎を吐く事でそれに対応した。

二人が素早く動いた為、さすがに直接炎が二人を捉えるには至っていないが、熱波はふたりに届いているはずだ。


周りでは幾つかの岩が崩れ落ち、その欠片が砂となって飛んで行く。

只でさえ少ない水分が、更に蒸発していくのがわかる。


周囲の岩の色が他の場所と違っていたのは、恐らくはこれが原因だったのだろう。

オオトカゲの吐いた炎がこの辺りの乾燥した大地を作っていたのだ。


オオトカゲがフィノとアーダの動きに対応しているその隙に、ルティナは再び弓を引いている。

しかし、ルティナの放った矢はオオトカゲに到達する前に気付かれ、再び炎に焼かれて塵となった。

が、ルティナのこの行動は決して無駄ではなかった。

このわずかな時間を利用して、フィノとアーダはオオトカゲを両側から挟み込む位置にまで移動している。

そして二人はそのままほぼ同時にオオトカゲに斬り掛った。


オオトカゲもこの二人に対応し火を吹こうとした様なのだが、しかし、さすがに正反対の方向に同時に炎を吐く事は出来はしない。

必然的に片方にしか対応できない事になる。

二人の連携が功を奏した格好だ。


オオトカゲは僅かに迷ったその後で、フィノの方へと狙いを定めた。

フィノの方が危険だという判断らしい。

間髪入れずに炎が吐かれる。

フィノは間一髪、オオトカゲから離れる方向へと跳ぶ事で、その炎から逃れた。


一方、アーダはこの間にもオオトカゲに向かって走っていた。

しかも、フィノの搖動に乗せられオオトカゲが身体全体でフィノのいる方向を向いた事により、その背中はだいぶアーダに近づいている。

斬り掛るには絶好のタイミングだ。


アーダは一気にオオトカゲのすぐ横まで走り寄ると、その尾の部分にラビアローナの槍を突き刺した…、

はずが、気が付いたら槍は弾かれていた。

「こ、こいつ、硬いぞ」


更に槍を振ろうとするが、それに気づいたオオトカゲは、尾を左右に大きく振るい、アーダに二撃目を許さない。

「アーダ、逃げろ!」


アーダは、フィノの忠告に素直に反応、オオトカゲから距離を取った。

直後、オオトカゲの振った尾が、たった今までアーダのいた場所を通り過ぎる。

アーダはギリギリのところでオオトカゲの尾を避けきった。


オオトカゲの意識がアーダに向いたその間に、今度はフィノが斬りかかる。

しかし、剣を振りかぶったフィノは、その状態のままたたらを踏んだ。

先程の炎に伴う熱風の所為なのだろうか、剣を煽られ、進めなかったのだ。


その間にオオトカゲが再びフィノに狙いをつける。

そして、間髪入れずに炎を吐く。

フィノは、振りかぶった剣を盾代わりにして、炎の直撃を回避するより仕方がなかった。


「もうっ、熱っついわねー」

フィノは、更にその状態のまま後方に跳び、何とか炎の範囲から抜け出すと、受けた熱を冷ます為、大きな剣をひらひらと振ろうとした。

大剣をうちわのように扱うなど、フィノでなければできない芸当だ。


しかし、普段なら問題なく出来るはずのその行為が、この時はなぜかうまく出来なかった。

フィノにしては珍しく、ふらついてしまったのだ。

岩に反射した熱風が気流を作っている所為なのかもしれないが、それにしても珍しい。

傍から見ると、剣の方がフィノを振り回しているかのようにさえ見える。


なので、剣の動きの方に注目して見てみると、剣はふらふらと動きながら、ある一点を目指して動いている様にも感じられる。

だとすれば、フィノがふらついてしまっているのは、フィノが剣の動きに逆らっている所為なのかもしれない。

さすがに剣が意志を持っているとは思えないが、しかし、ここは何が起こってもおかしくない場所ともいえる。


気が付くとユウは叫んでいた。

「フィノ。剣の動きに逆らわないようにしてみて!」


ユウのかけたその声に、フィノがすぐに反応する。

といっても、オオトカゲに斬り掛かる動作を止めただけなのだが…。


直後、強風に煽られたかのように、フィノの身体は大きく後ろに反り返った。

そしてその次の瞬間、フィノは手にした剣毎大きく後ろへ飛ばされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ