星空の子供β
どうも山石悠です。
今回はいつぞやに書いた「星空の子供」の『β』を出してみました。
……ということは、前回は『α』ですね。後で、編集してくっつけることにします。
前回が少年(十五歳)視点だったので、今回は少女(十五歳)視点で書いてみました。
最後に、ぜひとも「星空の子供α」「星空の子供β」を一緒に読んでもらいたいと思っています。
なぜだろうか? 一度しか会ったことの無い君のことが、忘れられない。
私は目を閉じて、思い出の星を観測する。
遥か数光年先で、一等星のように輝く君と過ごした一夜を。
私が出逢ってしまった、私の上で綺麗に輝く星のような目をした君のことを。
私は父の影響で、星に詳しかった。週末にはよく星を眺めに行った。いつしか、星が好きになっていた。
天に輝く星は、とてもきれいで、私は時々、夜中に家を抜け出しては星を見に行った。
私が、君に出会った夜も同じだった。
いつものように家を抜け出した私。久々にきたおばあちゃんの家だったけど、河原なら星が見やすいと聞いていた。
十分くらい歩いた私は、河原に着く。そして、感嘆する! 驚嘆する! 詠嘆する!
黒に染まる空を彩る耀。私は、思わず声をあげる。
草の上に寝転がって、星を見る。さあ、今日は何を見ることができるだろう。
大熊座の尻尾、北斗七星の先から描かれるカーブ、春の大曲線
おとめ座のスピカ・うしかい座のアルクトゥルス・しし座のデネボラ。この三つの星が作る春の大三角
しし座の頭を指す、獅子の大鎌
ああ、綺麗……!! いつもの、父と行く場所と比べ物にならない、プラネタリウムなんて以ての外!!
私が、生まれてからずっと眺めてきた星空よりも、ずっと綺麗だった。
そうして、どれだけの時間が過ぎたのだろう。
確か、西に輝いていた冬の大三角が沈んだころだ。
ザッ、と砂を踏む音がする。私は、そちらを見てハッとした。
そこにいたのは、私の上で輝く星のように、綺麗な瞳をした男の子だった。
私は、無意識に訊いてしまった。
ねえ、君もここに星を見に来たの?
無意識に訊いたこの質問に、君はゆっくりと首肯した。
私の周りには、同年代で星の魅力を知っている子はいなかった。だからか、その答えに心の中が熱くなった。
私は、君を傍に座らせる。
君は星について、何にも知らなかった。でも、そんなこと関係ない。
本当に必要なのは、星の魅力を知ること、星を好きでいる気持ちだけだ。
私は、上に輝く星を指しながら、私が知っていることを教える。
君は、それを嬉しそうな顔をしながら聞いてくれる。それを見ていると、私まで嬉しくなってしまう。
そんな気持ちを隠したかったからか、同い年の君をいもしない弟のように扱っていた。
そんな楽しい時間はもう、朝を迎えそうになる。私は、今日、家に帰るのだった。
君と別れる時、そのことを伝え、互いに自己紹介。今でも、君の名前は覚えている。そして、あの約束も……
私と君を廻り合せる道を照らす星になる
この、約束だって、忘れはしない。必ず、君が嫌でも気がつくくらいの星になる。
その約束をして、一ヶ月後。父が死んだ。いつものように車で星を見に行く途中、崖から落ちたそうだ。
私は、この気持ちをどうすればいいのか、と考えた。そして、その怒りを星に向けた。
好きな星を嫌いになろうとした。
愛している星を憎もうとした。
星がきっかけだった、君との思い出を…………否定した。
私は、あの約束とは反対に、輝きを失っていった。
そうして、十年がたった。私を一人で育ててくれた母も病気でなくなった。
一人になった私は、祖母の実家にやってきた。そう、君と出逢ったあの町だ。
転入先の学校。そこで、私が、星を嫌いといった瞬間に起ちあがった少年がいた。
その瞬間、十年前と同じ感覚を味わった。
忘れもしない、その少年は、あの約束を守って精一杯に輝く君だった。
後ろめたさだけが心を支配する。
約束を守れない自分が嫌になる。
約束を守っている君がまぶしい。
でも、こんな私に、君は言ってくれた。
安心しろ! 俺がお前に星の魅力を教えてやる!
十年ぶりに出会った君との日々は、忘れられない一生の思い出になる。
過去、輝く私が、輝いていない君に輝きを与えた。
現在、輝く君が、輝いていない私に輝きを与える。
きっと、君にならできるだろう。
なぜなら、君は星空のもとに生きる子供なのだから。
どうでしたでしょうか?これで、前回、よく分からなかった部分が、分かるようになった気がします。
それで、まだ「星空の子供α」を読んでいない方は、このページの上にある『短編集』をクリック!!そこから、「星空の子供α」をお探しください。
ついでに、他のも見て言ってくださいな。
以上、山石悠のお話でした。
ここまでしっかり読んでくれた、律儀なあなたに感謝します。
それでは。
Good bye!