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ONLINE  作者: niziya
LOG.04 " BUCCANEER "(未改訂版)
44/57

#04-09

EVENTS INFORMATION


~百諸島キャンペーンイベント「海賊王の遺産」~


#01「呪われた海賊船を倒せ!」



恐れ知らずの魔杖師どもめ! 財宝は我らのものだ!!



※INFORMATION

勝利条件海賊団「クロスボーン」の全滅

敗北条件パーティ全滅

勝利報酬なし




イベントスタートまで 10 秒





「サクっと終わらせるぞ」

「魔法でいかない? 久しぶりに、いい練習になるでしょ?」

「OK、相棒」

 俺は《トライデント》を床に突き立てると、深呼吸をしてみた。地下(アンダーグラウンド)では接近戦か銃撃戦に頼ることが多く、魔法はそれほど使っていなかったからだ。要領的には波動拳(エナジーショット)と一緒なのだから、使っていたとも言えなくもないが……まぁ、それはそれだ。

 俺とリンは、同時に呪文の詠唱を始めた。

「光霊3(ライトスピリッツ・スリィ)、我が敵を射抜け(シューティング・マイ・エネミー)」

 これは経験則からくるものだが、その日の最初のアビリティ使用は、できるだけ音声操作からしっかりと始めたほうが、あとあとも上手く行く場合が多い。もしかすると(げん)を担いでいるだけかもしれないが、少なくとも俺たちはそう考えている。

 さて。

 目の前に出現したままのウィンドウが、カウントダウンを続けていく。

 残り6秒……4……3……2……1……!!

「「光の(ライトアロー)!」」

 ウィンドウが消えると同時に、俺たちは中腰に構えた《トライデント》の先端から3発ずるの光弾を撃ち出した。ドンッと撃ち出された光の弾丸は、真っ直ぐ3つの照準へと突き進んでいく。

 一斉に骸骨海賊たちが武器や盾を持つ両手をあげ、(とき)の声を上げた。

 だが、そのうち6体に《ライトアロー》が着弾。

 ぼふっ――という鈍い音と共に光が爆発し、当たった連中はよろめきながら、一瞬で緑一色に変わった頭上のHPバーを減らしていった。

「うわっ……かったぁ」

 リンが呆れ気味につぶやいた。

 HPの減りが、想像以上に少ない。さすがは上級者向けフィールドのモンスターだ。

「リン、これでも魔法だけか?」

「殴るの禁止っ!」

「マジかよ――うぉっと!」

 チリッという攻撃焦点を感じ、あわてて横に飛び退くと、赤い射撃補助線が脇腹をしっかり捕らえていた。当然ながら逃げ切れず、銃弾を浴びてしまう。それでも、咄嗟に竜鱗で覆われる左腕でガードしたおかげで、ダメージはそれほどでもなかった。

「ったく、けっこうきついぞ!」

 骸骨海賊の中には、骨董品っぽい短銃や長銃を持っている者もいるのだ。

 しかも数が多い。

 全部で20……いや、30ぐらい、いるだろう。

「ライッ!」

 俺は《トライデント》を振り上げながら叫んだ。

 それだけで照準が出現し、ピピピッとイメージした通りの場所に固定化される。

 瞬間、《トライデント》を振り抜く。

 先端から3つの光弾が飛びだした。

 思考操作で、諸々の手順を一気に省略したのだ。

 コツはイメージと“引き(トリガー)”――うまく説明できないが、こうしよう、というイメージを即座に固め、イメージを具現化させる引き金となりうる何かを自分なりに決めておくと……かな?

 この時、呪文名を組み合わせると成功度が高まりやすい。

 そのあたりはマンガやアニメの影響なのだろう。

 必殺技は名前を叫びながら放つ――そんな常識が、すり込まれているのかもしれない。

 それはともかく。

「ライトッ、アローっ!」

 リンも叫びながら魔法を放ってく。

 1体に3発を集中。それでも骸骨海賊は崩れない。まだHPは半分しか減っていない。

「あああっ、もう! 固すぎよっ!!」

「制限解除していいだろ!?」

「ア(・)レ(・)は無しだからね!」

「わかってるっ!」

 俺は《トライデント》を骸骨海賊の1体に投げつけ、即座に《ハルバード》を具現化させた。

「たぁ!」

 渾身の力で惜しい掛かってくる骸骨海賊を横に薙ぐ。

 《パワースィング=スピア》だ。

 さらに銃を構える奴に向けて、

「ライッ!」

 と叫びながら突進をかける。

 先端を突き刺しながら、超至近距離で《ライトアロー》を放つ。《パワートラスト=スピア》と《ライトアロー》による同時攻撃だ。

 一方、リンは《バーストガン》で応戦。相手は被弾面積が極めて少ない骸骨だというのに、面白いように銃弾を背骨や腰骨、頭蓋骨などに当てていく……

 相変わらず常識の通用しない奴だ、俺の相棒は。

「ガンガン行くわよ!」

「OK、相棒!」

 俺は《ハルバード》を振りかざしながら、骸骨海賊の群れに突進していった。



━━━━━━━━◆━━━━━━━━



 約15分後――これが実在現実(リアル)ならヘロヘロどころではないだろうが、どうにか骸骨海賊たちを全滅させた俺たちは、艦橋上で待ちかまえていた骸骨船長に()()を叩き込んで……

「終わったぁ!」

「もぉ、へとへとぉ」

 背中をあわせながらヘナヘナと座り込んだ。

 傍らでは、倒れた骸骨船長が全身を灰色へと変色させていっている。“試練場(チャレンジ・ラビリンス)”のドラゴン(ラスボス)と同じ消え方だ。つまりこれで、最初のイベントは終わってくれたらしい。

 しばらく無言のまま休んでいると、ファンファーレが耳元で聞こえ、ウィンドウが強制展開した。


EVENTS INFORMATION


~百諸島キャンペーンイベント「海賊王の遺産」~


#01「呪われた海賊船を倒せ!」



― CLEAR ―


諸君は呪われた海賊団「クロスボーン」を全滅させた!


だが冒険はまだ始まったばかりだ


諸君が乗る幽霊船は静かに次なる戦いの場へと動き出したのだ……


※INFORMATION

クリアボーナスなし




#02「海賊島への道」をスタートさせますか?



YES  NO





 俺がちょうど読み終わったところで、リンがYESを選択した。

 ウィンドウが消える。

 船体が軽く揺れ、ギギギッとイヤな音を随所から響かせた。

「今度はなんだ……」

「ねぇ、動いてない?」

 言われてみれば、確かにそうだ。ボロボロの帆船は、風も動力もないのにゆっくりと方向を変えていく。立ち上がってみると、さらに音もなく、スーッと滑るように進み出した。しかも、いつしか濃密な霧が立ちこめ始めている。

「演出にしては随分凝ってんなぁ……」

 もっともここは仮想現実の中だ。限定期な空間の視覚情報を細工するなど、それほど大した苦労も必要としないだろう。気になるのは、外側から俺たちのいるこの船がどう見えているかだが……いや、もしかすると見えていないのかもしれない。先ほどまでいた空間単位(ブロック)から、イベント用の特別な空間単位(ブロック)に移動させられた可能性もあるし。

 なんにせよ、次の準備だ。

「あっ――ねぇ、シン。ちょっとまずいんじゃない?」

「なにが?」

「リミットタイム。もう少しで半分すぎちゃうし」

「あっ……」

 ウィンドウを展開させ、時刻を確かめてみる。

 時刻は10時26分。ログイン時刻が9時ちょうどであることを考えれば、ちょうど1時間半、つまり3時間しかないログインタイムの半分が過ぎようとしていることになる。これはけっこう重大な問題だ。

 この幽霊船を見付けるまでかかった時間が約1時間。方向感覚には自信があるので、迷わず神殿島(パンテオンアイランド)まで戻ることはできるだろうが、それはあくまで、あの岩島まで戻れた場合の話だ。

「マズったな……」

「いざとなったらア(・)レ(・)でなんとかできない?」

「まぁ、とりあえず次のイベントを終わらせてからでも――おっ、来たぞ」

 再び俺たちの前にウィンドウが強制展開した。


EVENTS INFORMATION


~百諸島キャンペーンイベント「海賊王の遺産」~


#02「海賊島への道」



濃霧が立ちこめ 邪悪な海の魔物たちが蠢き出す


果たして生きて海賊島までたどり着けるのか……?



※INFORMATION

勝利条件ユーザーの生存

敗北条件パーティ全滅

勝利報酬なし




イベントスタートまで 10 秒





「なにこれ?」とリン。

「あれだろ」

 俺は腰の《バーストガン》を抜いた。

「ゲームで勝手に移動する何かに乗り込んだ場合といえば……」

――ザバーッ!

 不意に船の左右から水柱があがった。そこから次々と何かが乗り込んでくる。

 半魚人だ。

 体は成人男性のそれだが、頭部は魚、表皮はヌメヌメとした鱗状、水かきがついている両手には鋭い爪が伸びており、甲板に降り立つなり、まるでゾンビのように両手を伸ばしながら、のた、のた、と艦橋に向けて歩き出していた。

「このパターンだろ?」

「納得」

 リンは《トライデント》を収納、両腰の《バーストガン》をそれぞれ抜きはなった。

「気分はガンシューティング?」

「ゲームの文法なんて、そんな急に変わらないってこった」

 俺たちは近づいてくる半魚人(ディープワン)を撃ちまくった。HPは高いようだが、銃に弱いらしく、3発から5発で次々と倒れていってくれる。

弾倉(カートリッジ)の残りは?」

 俺は念のためにリンに尋ねてみた。

「そこそこ。武装商人(アーチャン)に頼んで仕入れないと危険かも」

「じゃあ、使い切るつもりでいくか」

 念のため魔法を撃ち込んでみたが、ダメージは今ひとつだった。

 というわけで、しばらくガンシューティングゲームのノリで、俺たちは半魚人狩りを続けた。俺はたまに外すこともあったが、リンは全弾命中、1発も無駄にすることなく、次々と半魚人を討ち取っていく。

 ほんと、こいつこそ本物のエルフかもしれない。

 こいつの銃の腕前を見ると、才能ってやつのことを考えずにいられないのだ。

「もう終わり?」

 約10分後――甲板から敵が消え、立ち上り続けていた水柱も消え去った。

 ファンファーレが聞こえる。


EVENTS INFORMATION


~百諸島キャンペーンイベント「海賊王の遺産」~


#02「海賊島への道」



― CLEAR ―


諸君は濃霧の海域を無事に通り抜けた!


その先に待つものは……?


※INFORMATION

クリアボーナスなし




#03「呪われた海賊島:十字骨編」がスタートします





 今度は強制スタートらしい。

「霧……」

 リンがあたりを見回しながらつぶやいた。

「だな」

 濃霧が晴れていく。霧の粒子が消えていく、というのが正しいのかもしれない。ただ、空は星空のままであり、薄い霧は残っているため、2、30メートルほど離れたところからは先が見えない。

「次はあれか」

 霧の先に見えてきたものを見つめながら、俺は《バーストガン》を腰に戻した。

 古城がそびえ立つ岩島だった。

 もっとも、城の部分は遠目にも朽ち果てていていることがわかる。これみよがしに、ロープで首を吊った骸骨が窓枠らしいところからぶら下がっているあたり、かない不気味な印象を漂わせている。

 船はゆっくりと岩島の周囲を回りだした。

 どうやら岩島は曲玉のような形をしているらしく、円のとこに廃城がそびえ立つ岩山、尻尾のところに椰子の木が生い茂る砂浜があるという構造をしているらしい。砂浜にはログハウスのような建物が建っており、その傍らには、今の俺たちが求めてやまないものがポツンと建っていた。

「シン! あれ、見て。あれ! ボックスじゃないの!?」

「よしっ」

 間違いなく、そこにポツンと立っているのは、見慣れたログインボックスだった。

 数は1つだけだが、ログアウトするだけなら、順番に使えばいいだけのことだ。

「じゃ、さっさと次のイベントもクリアするか」

「帰り道の確保が先ってこと?」

「当然だろ?」

「だね」

 リンは楽しげに微笑むと、弾倉を具現化させ、《バーストガン》に装填した。


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