神と幼女とオッサンが鍋を食うだけの話。
幼女: ちわーって、神まだきてないじゃん。めずらしー。
オッサン: ああ。いっつも一番に来てスタンバってんのにな。
神: すまぬ。ちと遅れた。
幼女: なんかあったの?
神: 少々問題が起きてな。ここは"存在しない場所"だから崩れやすいのだ。
オッサン: そんなフィールドで大丈夫か?
神: 大丈夫だ、問題ない。
幼女: とりあえずさー、はじめよーぜ。
オッサン: だな。鍋はどうすんだ?遅れてきて準備してないだろ。
神: なに。その辺は抜かりない。見よ、鍋だ。
幼女: おい、何で当たり前のように炬燵と鍋が鎮座してるんだよ。おかしいだろ。
神: ゴッドパワーだ。
幼女: こんなどうでもいいことに使うなよ……。
オッサン: さすが神。そこに痺れない、憧れない。
神: まだ少々時間もかかるし、恒例の近状報告と行こうじゃないか。まずは主だ。
幼女: アタシから? 特には何もなかったよ。
神: 何もなかった、のう。
幼女:なんだよ?
神:ふっふっふ。これを見てもそういえるかな。そぉい!
オッサン: お遊戯会、だな。
幼女: 神!なんでこれを持ってるんだよ! しかもわざわざビデオテープだと!?
神: 神に不可能はない。具体的に言えば、部下をよこしたのだが。
幼女: ジャロに訴えられろ。つーか、止めろ。
神: さて、ここからが面白いのだが。
幼女: 無視してんじゃねぇ! って、おい、リモコンどこだ! あー! 見るな!
神: うわぁ。
オッサン: うわぁ。
神: ポニーテルかつ、ようせいなエセ幼女。
オッサン: しかも超死んだ目。
幼女: うっせぇ!中身20歳こえてんのに真面目にあんな恰好で踊れるか!
オッサン: 体は子供、頭脳は大人な探偵みならえよ。
幼女: んなこと言うなら代われ。今すぐ交代しろ。
オッサン: 無理。
神: こんなのもあるぞ。耳の垂れた茶色の犬の人形を抱いて眠るエセ幼女の図。
オッサン: これで中身20歳こえてるとかないわー。
幼女: うっさい! 一人で寝るのなんか落ち着かないんだよ!
オッサン: 部屋がオレンジ色ってことは、小さい電球つけて寝てるのか。
神: 精神は肉体に引っ張られるからの。ちなみにこれも部下が頑張ってくれた。
幼女: いっぺん殴らせろ!
神: そのロリボディで殴られてもまったく痛くないからよいぞ。
幼女: うがぁー!
オッサン: おい。そろそろ鍋いいんじゃね?いい匂いするけど。
神: ふむ。そうだの。オープン・ザ・鍋!
幼女: なんでちくわオンリーなんだよ!
神: 何を言っておる。ちくわこそ最高の鍋の具であろう。
幼女: 確かにちくわは美味いけど、限度ってもんがあるだろうが!
オッサン: 神、お前は間違ってるぞ。
幼女: だよなぁ。オッサンも言ってやってくれ!
オッサン: 最高の鍋の具はがんもだろう。
神: 何を言う! ちくわの素晴らしさが主にはわからぬのか!?
オッサン: その言葉、そっくりそちらに返すぞ!
神: ならば貴様のがんもへの愛を見せてみよ!
オッサン: おもしろい。勝ったほうが正義というやつだな!
幼女: なに、鍋の具で全身全霊をかけた戦いを繰り広げんな! いい大人が!
オッサン: だったらお前はどっちが最高の具だと思う?
神: 仕方ないの。ここは民主主義にのっとり平和的に話をつけようではないか。
幼女: いや、アタシは大根派なんだけど。
神: ……。
幼女: ……。
オッサン: ……。
幼女: とりあえず、鍋の具はチェンジな。
神: 仕方ないの。オーダーは?
オッサン: がん
幼女: オンリーは禁止な。
オッサン: チッ
幼女: チゲ鍋希望。
神: ふむ。了解した。パチンッ。
幼女: うわ、こいつ口で言いやがった! 指パッチン口で言いやがった!
神: 100年練習したができなかったのでの。
オッサン: 俺もできなーね。つーか、辛いの大丈夫なのかよ、エセ幼女。
幼女: もーまんたい。苦いのは無理だけど、辛いのは大丈夫っぽい。
神: たんと食べるがよい。そして大きくなるがよい。縦にも横にも。
幼女: 最後のが余計だ!
オッサン: ここでの食事って太るのか?
神: いや、太らないが。夢みたいなものだからの。
幼女: へー。世のOL達が聞いた歓喜するじゃん。
幼女: んで、近状報告の続きしようぜ。次オッサンな。
オッサン: 俺か? 特になんもないぞ。若い奴みたいなイベントもねーし。
幼女: えー、言ってみろよ。
オッサン: とりあえず、最近あったことといえばダチが増えたことくらいか。
神: ほう。どんな奴だ?
オッサン: 結構かわいいやつだよ。
幼女: へぇ。女の子?
オッサン: いや、スキンヘッドの40代。公園で風船アートしてたら、意気投合した。
神: 風船アートというとアレか?細長い風船で犬やら猿やらをつくるアレか?
オッサン: そうそれ。んで、そのあと焼肉いったんだよ。鹿肉、案外美味かったな。
幼女: 鹿!?焼肉屋さんで!?
オッサン: あ、そういやそいつが"胎児の夢"がどうとか言ってたんだが、何か知らね?
神: "胎児の夢"?
オッサン: いや、"幼児の夢"っだっけか?まー、なんかそんな感じの。
幼女: んな曖昧な。
神: "胎児の夢"のう。生憎だが心当たりはないな。まぁ、覚えてたら調べとくかの。
オッサン: おー、期待しないで待ってるさ。
幼女: 神、具なくなった。
神: 追加するか?それともうどんでもいれるか?
オッサン: うどん。
幼女: もううどん?うどんっつったら締めだろ?
オッサン: 問題ないだろ。後は神の話を聞いたら時間的に解散だろうし。
幼女: それもそっか。じゃ、うどんで。讃岐?稲庭?きしめん?
神: きしめんでよかろう。スープが絡んでうまいぞ。
幼女: 神よろしくー。
神: まったく、神使いの荒い幼女だの。そぉい!
オッサン: お、じゃ、いい感じに煮えるのを待ちながら神の近状報告に進むか。
幼女: らじゃー。
神: 私は最近同僚とバンドを組んだぞ。
オッサン: ほー。どんなバンドだ?
神: 私を含め5人での、バンド名は"戦国サイバーパンク"。ジャズバンドだ。
幼女: ジャズ!? "戦国サイバーパンク"の"パンク"はどこいったんだよ!
オッサン: つーか、楽器できたんだな。
神: ふ。一人オーケストラと呼ばれた私を舐めるでないぞ。
オッサン: なんかすごいな。
神: 腕前を披露してやろう。よし、あれにするか。そぉい!
幼女: なんでグランドピアノなんだよ! ぜってー、バンド関係ないだろ!
神: ちなみに私はボーカルだ。
幼女: 楽器使わないだろ、それ! 一人オーケストラ無駄じゃねぇか!
オッサン: 落ちつけ幼女。せっかく出したんだからなんか弾いてもらおうぜ。
幼女: そーだな。つーわけでなんか弾け。
神: まったく。もう少し神を敬う態度をせんか。まぁよい。ではやるかの。
幼女: ショパンの雨だれか。ショパンとか、お洒落なの選ぶな。神のくせに。
神: 神のくせにとはなんだ。神のくせにとは。
オッサン: いや、見直したぜ。まさか神にこんな才能があったとは。
幼女: 確かに無駄にうまかったな。ネタだと思ってたわ。
神: 主らがいったい私をどう思っているのか一度聞きたいぞ。
幼女: 変態。
オッサン: 悪戯好きのアホ。
神: 神に向かって容赦ないな主ら!? まったく、それは私でなくジョーカーの奴だ。
幼女: ジョーカー?
神: うむ。バンドのメンバーの一人での、まさに主の言う悪戯好きのアホだ。
オッサン: メンバーってことは、そいつも神だよな?悪戯って、いったいどんなだ?
神: たとえば先日、コリオリの力をコルオルの力に変えおった。すぐに戻したがの。
幼女: なんじゃそりゃ。
神: あやつは、全ての者の認識を書き換えたのだ。己が間違えたという理由での。
幼女: なんというはた迷惑な。能力の無使い過ぎるだろ、それ。
神: 私もあやつの悪戯にあってパンチパーマにされたことがある。しかも1ヵ月だ。
オッサン: うわぁ。
幼女: こうなるとほかのバンドメンバーも気になってくるな。
神: 紹介してやりたいとこだが、そろそろ時間だ。
オッサン: うどんも粗方片付いたしな。
幼女: 今回はこれで解散か。んじゃ、次でいいや。覚えてるかわかんないけどさ。
オッサン: 次はいつごろだ?
神: さて、いつにするかの。ふむ。では次の満月の日にでも開催するか。
幼女: 満月っていつだよ。
神: 月齢表でもみて確認するがよい。ではそろそろ解散するかの。
幼女: ういー。じゃ、また今度ー。
オッサン: おう。また今度な。
神: では暫しさらばだ。
サークルの企画をもとに作った作品です。
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