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00 プロローグ

 「やーい、化け物!」


 「村から出てけよ! 気持ち悪い」



 村の子供たちが、罵声を浴びせてくる。

 

 私は咄嗟に、顔を伏せた。

 飛んでくる石から身を守るように、頭を抱えてうずくまる。



 ――いつものことだ。



 体中にゴツゴツと石が当たっても、泣いてはいけない。

 


 「あれに関わるなって言ったでしょう!」


 

 子供たちを迎えに来た親が、口々に我が子を叱りつけ、引きずるようにして連れていく。

 

 辺りが静かになってから、ようやく頭を上げた。


 離れた場所でこちらを見ていた村人は、目が合う前にサッと顔をそらす。

 

 反射のように俯くと、視界に白い髪が掛かった。

 それをちぎれるほど強く握りしめ、走って森へと逃げ込んだ。



 川に映るのは、生気を失ったような真っ白な髪に、不気味な赤い目を持った、自分の姿。


 村の人たちは、私を、魔物の子供だと言った。

 私は間違いなく、人間の両親から生まれたのに。


 ……でも、その両親は、この色を見て私を捨てた。

 

 心の中に、モヤが広がる。

 断ち切るように水面に手を叩きつけ、映り込んだ自分の姿を消した。




 次の日。

 叱られたことも忘れた子供たちが、また、目の前に立ちふさがる。


 目が合わないように下を向いて、飛んでくる言葉を聞き流す。

 

 彼らよりきっと、私の方が、良い子になれるのに。

 


 「おい、聞いてんのかよ、化け物」



 その言葉に少しだけ顔を上げると、彼らは意地悪そうに笑った。

 

 そのとき彼らは、少し大きな、先のとがった石を持っていた。

 自慢するような声が聞こえる。

 でも私は、どうしてもその石から目が離せなかった。


 あんなものを、投げられたら……。

 

 身体が勝手に震え出す。

 頭から血の気が引いて、思わず一歩、後ずさりした。


 ザリッという音に反応して、彼らがこちらに顔を向ける。

 

 段々とつり上がる彼らの目が、よく見えた。


 

 「今逃げようとしただろ! 化け物のくせに。俺が退治してやる!」


 

 一番、体格の良い子だった。

 

 彼に髪を引っ張られると、ブチブチという音が響いて、嫌だった。

 

 そんな彼が、持っていた石を振りかぶる。

 

 先のとがった、大きな石を。



 「……ぁ」



 掠れた声が漏れる。

 宙に放られたそれが、やけにゆっくりと見えた。

 

 “死んじゃうのかな”って思って。

 でも同時に、“やっと終わる”って、ほっとした。

 

 強張っていた身体から、力が抜ける。

 

 迫り来る石を、ただ眺めていた。

 


 ……ああ、でも。

 

 ぼんやりとした頭によぎるのは、孤児院で一度盗み聞いた、聖女さまの話。

 


 私も聖女さまみたいに、いろんな人を助けて。

 感謝されて。

 

 勇者さまみたいな、運命の人に出会って。

 愛されて。


 そうしたらきっと、村の大人が言っていた、“かわいい笑顔”ができる。

 

 “幸せ”になれる。


 私も、聖女さまみたいに――。



 石はもう、目の前だった。



 ――ゴツッ。

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