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GRSI-04 星を蝕むレガシー  作者: やた


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17/17

17.再生の光

 エリオンでの任務を終え、GRSI本部へと帰還したチームYの報告は、銀河社会に大きな衝撃を与えた。


 ノアがコピーした決定的な証拠データ、そしてカケルの予測が示した惑星崩壊の真実が、GMCの長年にわたる不正と隠蔽を白日の下に晒したのだ。その衝撃は、瞬く間に銀河ニュースネットワークのトップニュースを飾り、市民たちの間ではGMCに対する激しい非難の声が渦巻いた。


 ギャラクシー・マイニング・コーポレーション(GMC)は、エリオンにおける一連の事件、特に危険な「地質構造操作装置」を莫大な費用を惜しんで放置したこと、そしてその事実を隠蔽するために公式報告書を改ざんしたことについて、銀河社会から徹底的な糾弾を受けることとなった。


 長年にわたり、GMCは採掘現場での安全基準の軽視、環境規制の無視、そして利益を最大化するためのずさんな工事を繰り返してきたが、その不正は巧妙に隠蔽されてきた。しかし、今回のエリオンでの事件をきっかけに、GRSIの徹底的な調査と、ノアが発見した過去の不正会計データ、さらに機密情報の解析によって、これまでの杜撰な工事や環境破壊、そしてそれに伴う隠蔽工作の数々が次々と明るみに出た。


 企業としての信頼は地に落ち、株価は市場史上稀に見る暴落を記録。環境保護団体やエリオンの住民たちからは、巨額の賠償金と惑星復興費用を求める訴訟が次々と起こされ、GMCは創業以来最大の危機に瀕した。かつては銀河経済を牽引する巨大企業の一つとして君臨していたGMCの未来は、暗雲に覆われた。


 特に、GMCの元最高技術責任者であるバルド・クレイグは、今回の事件で傭兵を雇い、チームYの抹殺と証拠隠滅を図っただけでなく、過去にはGRSIの調査妨害のため殺し屋を雇っていたことも、ノアのハッキングで得られた隠蔽データから明るみに出た。彼の犯罪行為は重く見られ、司法機関によって即座に刑事訴訟されることが決定した。


 バルド・クレイグは、自らの利益と保身のために惑星の命と多くの人々の人生を弄んだ罪を償うことになるだろう。彼の逮捕は、腐敗した企業倫理に対する、銀河社会の強い警告となった。


 銀河鉄道株式会社もまた、GMCとの長年にわたる密接な協力関係、特にエリオンでの採掘事業においてGMCを監督する立場にありながら、危険な装置の放置を黙認していた点、そして今回の危機における初期対応の遅れから、その一部の責任を追求される事になった。


 幹部会議で避難命令の発令を渋った投資計画部や資材調達部などの幹部は厳しい批判に晒され、一部が更迭されることになった。これにより、銀河鉄道は組織の透明性と、安全に対する意識改革の必要性を痛感することとなった。


 一方で、アラン局長は、この一連の騒動で危機管理能力と指揮官としての手腕を高く評価され、GRSIの存在意義と重要性を改めて銀河社会に知らしめる結果となった。彼の迅速な情報収集とチームYへの信頼が、最悪の事態を回避する決定打となったのだ。


 惑星エリオンは、地質構造操作装置の停止により崩壊こそ免れたものの、長年の過度な採掘と装置の影響で地質が不安定な状態が続いていた。


 そのため、GMCと銀河鉄道は、その全面的で莫大な負担によって、惑星の保護と環境回復に努めることになった。これは、銀河鉄道が企業としての社会的責任を果たす上での、大きな一歩となった。


 エリオンの住民たちは、一時的に他の惑星への避難を余儀なくされたが、銀河鉄道ロイド支社が総動員で編成した避難列車により、安全に新天地へと出発できた。専門家チームによる長期的な環境回復計画が立案され、適切な保護と回復措置が施されれば、数十年後にはかつてのような豊かな自然が息づく故郷の惑星に戻ることができるだろう。彼らの顔には、悲しみよりも、未来への確かな希望の光が宿っていた。


 セントラル・オービタル。銀河鉄道株式会社本社ビルの最上階にある総帥室。


 アリア・テレス総帥は、静かにデスクに座り、エリオンに関する一連の報告書に目を通していた。彼女の指が、ノアがコピーしたGMCの不正会計データ、カケルの詳細な連鎖反応予測シミュレーション、そしてチームYの作戦行動記録をなぞっていく。


 宇宙の全てを知る魔女と称される彼女の表情は、いつにも増して神秘的で、その思考を読み取ることは誰にもできない。彼女の目は、単なる文字や数字の羅列ではなく、その背後にある人々の感情、企業の欲望、そして星の運命を読み取っているかのようだった。


 すべての報告書を読み終えると、アリアはデスクの引き出しから、古びた一枚の写真を取り出した。それは、幼い頃のカケルと、彼の傍らで優しく微笑む一人の女性が写っている写真だった。その女性は、カケルの失われた記憶に登場した、あの「顔を思い出せない保母」の顔と寸分違わなかった。彼女の顔には、この宇宙のどこか、遠い過去に失われたであろう、ある惑星の風景が背景に写っていた。


 アリアの指が、写真の中の女性の顔をそっとなぞる。彼女の瞳の奥に、遠い記憶の光が揺れる。それは、まるで懐かしいメロディを口ずさむかのような、穏やかな仕草だった。


「……よかったわね、カケル」


 アリアの声が、総帥室の静寂の中に、そっと溶けていく。その声には、安堵、慈しみ、そして微かな悲しみが混じっていた。彼女の視線は、写真の中の幼いカケルと、その保母の姿から離れることなく、そこに何らかの、深い繋がりがあることを示唆していた。アリアとこの保母の間に、カケルの知る由もない、しかし確実に存在する絆。


 エリオンの危機は去った。だが、カケルとアリア、そしてあの保母の間に隠された、もう一つの物語が、今、静かに動き出そうとしていた。それは、カケルの過去と、銀河鉄道総帥の秘められた過去が交錯する、新たな旅の始まりを予感させた。

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