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GRSI-04 星を蝕むレガシー  作者: やた


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13/17

13.完璧な戦略

「この装置を止める方法が、一つだけある」


 その言葉に、チームYのメンバーの顔に希望の光が灯った。彼の瞳には、もはや迷いはない。ミリアムとの共鳴によって得られた、明確な「道筋」がそこにはあった。


「カケル、その方法とは?」


 ノアが、真剣な眼差しでカケルを見つめた。彼の論理的な頭脳は、カケルの直感がもたらす情報に、常に確かな裏付けを求めていた。


「この装置の停止は、単純なシャットダウンでは不可能だ。惑星核に直接作用する仕組み上、急停止させれば、かえって反動で地殻変動を加速させる可能性がある。だが、俺の予測とミリアムの空間認識が示す、唯一の突破口がある」


 カケルは、ホログラムディスプレイに、装置の複雑な内部構造を映し出した。そこには、ノアもこれまで認識していなかった、微細なエネルギー循環経路と、特定のタイミングでのみ現れる「歪み」のポイントが示されていた。


「この『歪み』が発生する瞬間に、特定の周波数のエネルギーを流し込み、装置内部の共振を逆方向に誘導する。そうすれば、惑星核への影響を最小限に抑えつつ、装置の機能を停止させることができる。ただし、そのタイミングは誤差ゼロ、周波数も一点の狂いも許されない。さらに、そのエネルギーを生成・供給するには、この施設のメインリアクターを一時的に再起動させる必要がある」


 カケルの説明は、あまりにも精密で、常人では理解し難いほどの複雑さだった。しかし、ノアの目には、その途方もない難易度の中に、確かな成功の論理が見えていた。


「なるほど……既存の設計図データにはない、まさに盲点だ。理論上は可能だが、極めて危険な賭けになる」


 ノアが呟いた。彼の頭脳が、カケルの予測に基づいて、即座にシミュレーションを開始する。


「そして、その精密な操作を行うためには、装置の制御システムに直接ハッキングし、メインリアクターの再起動とエネルギー誘導プログラムを同時に制御する必要がある。これは、ノアしかできない」


 カケルの言葉に、ノアは静かに頷いた。彼の完璧なハッキング能力が、この絶望的な状況を打開する鍵となる。


「メインリアクターへの経路は、老朽化で不安定な箇所が複数ある。特に危険な箇所は、イヴァンに道を拓いてもらう」


 カケルはイヴァンを見た。


「おう、任せとけ!どんな瓦礫だろうが、ぶっ飛ばしてやるぜ!」


 イヴァンは、頼もしく胸を叩いた。


「そして、GMCが送り込んだ傭兵たちだが……彼らは、我々の動きを予測して、装置へのアクセスルートを封鎖しに来るだろう。エミリー、彼らの排除と、ノアが制御システムへアクセスするまでの間、安全な経路の確保を頼む。彼らの行動パターンは、俺の予測である程度絞れる」


 カケルは、エミリーに目を向けた。彼女の百発百中の狙撃能力が、敵の動きを封じ、チームの進路を確保する上で不可欠となる。


「了解したわ。あなたの予測と、ミリアムの空間感知があれば、確実に道を拓ける」


 エミリーは、冷静に答えた。彼女の瞳には、既にターゲットを捉える鋭さが宿っていた。



 その頃、セントラル・オービタル。アラン局長のオフィスでは、幹部会議が依然として続いていた。会議は膠着状態にあり、避難命令の発令には至っていなかった。しかし、そこに、エリオンからの新たな通信が届いた。それは、カケルが送った、惑星崩壊の明確な連鎖反応予測のシミュレーションデータと、ノアが解析したGMCの不正会計に関する決定的な証拠、そして地質構造操作装置が稼働している現在のデータの全てだった。


 会議室のホログラムに映し出された、惑星エリオンが砕け散る恐ろしい映像と、GMCの不正の証拠。それらは、どんな言葉よりも雄弁に真実を語っていた。


「な、なんだこれは……エリオンが、本当に……」


 投資計画部の幹部が、顔面蒼白でディスプレイを見つめた。彼らの私腹を肥やすための行動が、惑星一つを滅ぼそうとしている現実を、ようやく直視せざるを得なくなったのだ。


「これでも、貴方方はまだ動かないと?この映像は、GMCの不正によって引き起こされる、確定した未来だ。そして、GRSIのチームYは、住民の命を守るために、今この瞬間も戦っている!」


 アラン局長が、渾身の力を込めて叫んだ。安全保障本部の幹部が、力強く頷いた。


「もはや躊躇している場合ではない。緊急避難命令を発令すべきだ!全銀河鉄道の運行経路を調整し、避難列車を手配せよ!」


 幹部会議の空気は一変した。圧倒的な証拠と、カケルの予測が示す破滅的な未来を前に、GMCとの関係を優先していた幹部たちも、ついに避難命令の発令を承認せざるを得なくなった。


 アラン局長の指示が、銀河鉄道の各部署へと響き渡る。惑星エリオンの住民の命を救うための、大規模なオペレーションが、ようやく始動したのだ。



 エリオンの地下深く、カケルはチームメンバーを見回した。彼の表情は、覚悟に満ちていた。彼の予測は、もはや最悪の未来だけではない。ミリアムの共鳴によって、その中に隠された「可能性」を見出し、具体的な「道筋」を描き出していた。


「ノア、GRSI本部からの避難命令発令を確認した。これで、住民は助かる」


 ノアが、安堵したように報告した。カケルは静かに頷く。住民の命が救われることが、彼にとって何よりの救いだった。


「よし。時間が無い。これより、地質構造操作装置停止作戦を開始する!各自、持ち場へ!」


 カケルの声が、地下空間に響き渡った。彼の頭の中には、未来の連鎖反応と、それを阻止するための完璧な戦略が、鮮明に描かれていた。彼の指揮の下、チームYは、エリオンを救う最後の戦いへと足を踏み出す。

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