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GRSI-04 星を蝕むレガシー  作者: やた


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10.迫りくる二重の危機

「あと、3日で、惑星核が崩壊する」


 カケルのその言葉は、まるで冷たい真実を突きつけるかのように、チームYのメンバーの心に重く響いた。カケルはもう頭痛に苛まれることはなかった。ミリアムとの共鳴により、彼の予測能力は完璧に覚醒し、未来の連鎖反応をクリアに捉えていた。しかし、そのクリアな視界が示す現実は、あまりにも過酷だった。


「エリオンが……本当に崩壊するってことか?」


 イヴァンが、信じられないといった表情で装置を見上げた。その肉体派の彼でさえ、惑星規模の崩壊という事態には、言葉を失っていた。


「ああ。この装置が起こす不規則な地殻変動が、惑星内部のプレート活動を加速させ、最終的に核の臨界点に達する。一度始まれば、止める術はない」


 カケルは、冷静な声で答えた。彼の視界には、崩壊のプロセスが秒単位で、まるで設計図のように鮮明に描かれていた。


 ノアは、即座に自身のタブレット端末を操作し、GMCの旧データベースとGRSIのアーカイブを再検索した。


「エリオンの最終報告書を、もう一度深掘りしたんだ。GMCは、採掘終了後、この装置を『完全に解体した』と公式に報告している。しかし、その際に発生するはずの莫大な解体費用に関する記録が、不自然な形で改ざんされている痕跡を見つけた」


 ノアは、ディスプレイに表示された不審な会計データをカケルたちに見せた。そこには、本来かかるはずの解体費用が大幅に削減され、その差額がGMCの経営陣の私的口座に流れていることを示唆する痕跡があった。


「つまり、彼らは撤去費用を惜しんで、ろくに解体もせず放置した、と」


 エミリーが冷静に分析した。彼女の瞳には、企業の醜い利益追求主義に対する明確な嫌悪感が宿っていた。


「それだけじゃない」


 ノアは言葉を続けた。


「このデータは、GMCの元役員が複数関与していることを示唆している。そして、その中の一人が……」


 ノアは、ホログラムで一人の人物の顔写真を拡大表示した。それは、GMCの元最高技術責任者、バルド・クレイグだった。彼の顔には、どこか執念深い、歪んだ野心が浮かんでいる。


「バルド・クレイグは、GMCがエリオンでの採掘事業を撤退した後、GRSIによる一連の環境調査で責任を追及されそうになり、激しくGRSIを非難していた。彼は、自分たちの利益追求を阻むGRSIに対し、強い恨みを抱いている、という情報も残っている」


 カケルは、バルド・クレイグの顔写真を見つめた。彼の予測が示す未来の連鎖反応の中で、クレイグの存在が、単なる隠蔽者ではないことを示唆していた。


「そして、今しがた、銀河鉄道がエリオンの異常振動について公式に対外発表をした直後、エリオンに関するアクセスが異常に増えていることが判明した。特に、GMCの元関係者や、関連企業からのアクセスが目立つ」


 ノアの声には、焦りの色が滲んでいた。


 エミリーが冷静に状況を整理した。


「つまり、銀河鉄道が公に発表したことで、彼らGMCの元関係者たちが、隠蔽してきた事実が明るみに出ることを恐れている、ということね。エリオンの異常を把握し、証拠隠滅のために、この装置の完全破壊を狙う可能性があるわ」


「ああ、その通りだ。彼らにとって、エリオンの崩壊は、自分たちの汚職と過失が露見するよりも、はるかに都合が良い。我々がここを発見した以上、彼らは確実に動く」


 ノアの声には、焦りの色が滲んでいた。


「くそっ、金のためならどこまで腐りやがるんだ!」


 イヴァンが怒りを露わにする。彼は、人々の暮らしを脅かす巨大企業の利益追求主義に、強い憤りを感じていた。


 カケルは、覚醒した予測能力を使い、様々な可能性をシミュレートした。未来のビジョンは、複数の枝分かれを見せるが、そのどれもが、彼らが放置され、暴走する装置を止められなければ、エリオンが崩壊するという結論に達する。そして、そこに、GMCの元役員たちの介入が加わることで、状況はさらに複雑化し、困難を極める。


「急がなければならない。ノア、GRSI本部に惑星エリオンの緊急避難命令を発令するよう、アラン局長に打電してくれ。証拠は、君が発見したGMCの改ざんデータと、俺の予測が示す惑星崩壊の明確な連鎖反応。そして、この装置が今も稼働している証拠を添えて」


 カケルの声は、確信に満ちていた。彼の予測能力は、もはや迷いなく未来を示している。


「だが、カケル……この報告だけで、果たして上層部が未曾有の惑星規模の避難命令を出すか……」


 ノアの懸念はもっともだった。しかし、カケルは揺るがなかった。


「彼らは、エリオンの住民を守る義務がある。そして、我々は、その義務を果たすための真実と、それを証明する力を手に入れた」


 カケルは、ミリアムを振り返った。ミリアムの空間認識能力が、彼の予測に安定と深みを与えている。彼の頭痛は完全に消え、まるで世界がクリアに見えるようだった。


「エミリー、イヴァン、俺たちは、GMCの元役員たちが到着する前に、この装置を停止させる。このエリオンを、彼らの利益追求の犠牲になんてさせない」


 カケルの瞳に、強い光が宿った。彼は、未来の連鎖反応を完璧に読み解き、最善の行動を予測する。目の前には、惑星崩壊の危機と、証拠隠滅を目論む敵という二重の脅威が迫っていた。タイムリミットは、あと3日。

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