彼の肯定
「お前は、もっと自分に自信持てよ」
彼は真摯な眼差しで、そう告げた。それは私が生まれて初めて受けた純粋な肯定の言葉だった。私はこれまで、否定されてばかりの人生を送ってきた。誰かの拒絶に晒され、いつしか自らも自分を否定する術を覚えた。それが、かろうじて私という存在を繋ぎとめる唯一の術だったのだ。苦しみが胸を締めつけるたび、「これが生きるということだ」と呪文のように繰り返し、自分を納得させてきた。
「お前はあまりに優しすぎる。もう少し、自分の意志を押し通せよ」
彼の瞳は、なおも真剣さを湛えていた。普段は軽薄で、遊び人の気質を漂わせる彼が、こんなにも真摯に言葉を紡ぐ。そのことに、私は一瞬、身構えた。だが、心の奥底に沈んだかすのように溜まっていた靄が、かすかに晴れるのを感じた。まるで、長い雨の後に差し込む一筋の光のように。